Sid.42 魔法は様々に調整が利く
洞窟内を進むと小さいモンスターの群れと遭遇した。小さいとは言っても大型犬くらいのサイズはある。他が大きいから小さく感じるだけで。
サイズ感が手頃と言うことで戦闘はマサと僕が主体になる。盾で防御し剣で薙ぐ。
「相変わらず数が」
八本足のモグラみたいな奴。頭は二つあるんだけどね。動きが特別速いわけじゃないけど前足にある爪が巨大な鍬の如し。穴掘りに適してるんだろうけど、あれで抉られたら洒落にならないんだろう。
マサが盾で受け止めるけど、その度に少し後ろに下がってしまう。衝撃の強さかも。
それでも時々パッシブスキルが発動し、吹き飛ばされるモグラの化け物だ。
「ヴィーラ!」
「何?」
「精霊」
「使いにくいんだけど」
僕が魔法を放てば手っ取り早いけど、それだとメンバー全員が暫し行動不能になる。だったら精霊の方がまし、と言うことでヴィーラに頼んでるようだ。
「サラマンドラ!」
炎の精霊を呼び出すと僕とマサの脇を駆け抜け、モグラの集団に突っ込み爆炎を放つ。
十匹ほど焼き払うと消えてしまうけど、少しの時間手を休めることはできる。
態勢を立て直すと再びモグラに突っ込むマサだ。僕も続き剣を振るうけど爪に阻まれ攻撃が逸らされる。
最近の戦闘では魔法に頼りきりだったから、剣の腕はレベルで言えば十五くらいかもしれない。ちょっと手強い相手だと途端に苦戦する。
「ヒロト。大丈夫か?」
「なんとか」
「魔法使うか?」
使った方が早いよね。数が多い時は。
「みんな下がってください」
「俺が下がるとヒロトが」
「構わないんで下がってもらえれば」
みんなと距離を取れれば魔法を放ちやすい。
マサが下がりフラウとヴィーラも下がる。それと同時にモグラの集団が僕に襲い掛かってくるけど、氷の壁を張り一時的に阻止しておく。本当に一時的にしか足止めできないけどね。鍬の如き爪が氷の壁を砕くから。
氷が砕けた瞬間、爆炎弾を連射すると次々爆発炎上するモグラだ。
坑内の温度が急上昇し火傷しそうな状況になるも、すかさず氷の壁を出して冷却を試みる。でも坑内が蒸し風呂状態だ。蒸発する氷の水蒸気と爆炎による灼熱だもん。
これを三回ほど繰り返すと静かになった。
マサたちが合流してくると「ヒロト、顔が煤けてるし前髪チリチリ」とか言ってる。革製のガントレットも焦げて穴が開いた。服の袖やズボンも焦げて穴開き。
これも仕方ない。狭い洞窟内だから自分にも何かしら影響は出るわけで。
「なんか、ヒロトだけぼろぼろ」
「どうする? 戻る?」
フラウとヴィーラが心配してくれてるようだ。
「まだ入って少ししか進めてないですし」
「マッピングに手間取ってたからなあ」
「急にできないってば」
「分かってるよ。だから時間掛けても慣れてくれれば」
ちょっと揉めそうになってる。これはあれだ、魔法の使い方を考えないと。狭い場所での有効な使い方を。
そもそもは無駄に高威力になってるのが原因。周囲に拡散しやすいのも問題。
曲げる追尾させるとかはできる。ならば威力を抑え必要最低限にもできると思う。
「あの、僕がもう少し工夫してみます」
「工夫って?」
「魔法の威力とか広がり方を」
衝撃波にしても前方に絞って発生させれば、前から来る奴らだけを吹き飛ばせると思う。奥に壁があったりすると跳ね返る可能性はあるけど。
爆炎弾も小型化高密度にすれば、と思う。雷も同様に細く高密度化して放てば。
「できるの?」
「試してみます」
とりあえず僕の考えを実践してみることに。
狭い洞窟内で効率よく戦闘を行うには、上手に魔法をコントロールしないとならないから。今のままだと進むに進めずダメージばかりが蓄積するし。
魔結晶を拾い集めながら先へと進む。
「ヒロトって頼りになるけど」
「巻き添えもあるからね」
「まあ本人が工夫するって言ってるし」
亀の歩みの如く進むと遭遇する。今度は飛行タイプのモンスターだ。コウモリみたいだけど羽は四枚で足は六本。体は鎧に覆われたような。飛び方は直進する感じじゃなく左右上下にふらふら。大きさはコウモリより巨大で翼長五十センチはあるかも。
急にキーンって音がしたと思ったら耳が痛いし、頭も痛くなってくるし不快感が増す。
「もしかして」
「音波攻撃とか?」
きっと高齢者なら聞こえないんだろうなあ。若い人にしか聞こえない音があるし、それだとしたら不快感の理由も納得。痛みは音圧の問題だと思う。
集中したいけど音波が気になって、なかなか集中できない。
マサが盾を構え剣を向け突進するけど、コウモリの奴がまた上手く避けるし。
「くっそ、こいつら」
「あの、少し踏ん張っててもらえますか」
「任せろ」
マサの攻撃で四方に分散するコウモリだ。剣を振るうことでコウモリの攻撃が緩み、幾らか不快感が治まることで集中できる。
とは言っても狭い洞窟内だし、反響音が襲ってくるけどね。
「魔法使うんで下がってください」
「了解!」
マサが引くと剣先をコウモリの集団に向け魔法を放つ。
「ジーベンス!」
できるだけ細く針の如く。その分、纏めて倒せるように前方で広がるように意識する。腹に響く音から甲高い音になったようだ。閃光も幾らか和らいだようで。
細い雷が蜘蛛の巣のように広がり、瞬時にコウモリに命中するとバタバタと落ちた。
「倒せたかな」
後ろを見ると影響は少ないようで「さすがヒロト」とか「なんか器用だよね」なんて感想を言ってる。
「できるじゃん」
「さっきより影響がない」
「魔法って便利そうだね」
決まったパラメーターしか与えられていないゲームの魔法とは違う。工夫すればどうにでもなるもので。
これで攻略できる可能性が一気に高まったかも。
地面に転がる魔結晶を拾い集め、もう少し先へ進んでみることに。
「あの爆炎も何とかなりそう?」
「相手によりますが弾丸くらいのサイズにできれば」
極端な温度上昇は抑えられると思う。そのためには高密度化が必須条件かも。
洞窟内を移動する際、支洞も覗き込んでみるけど、この支洞を進んだ先には何があるのか。今回は本洞のみを進んでるけど、マッピングに慣れてもらえたら支洞も進んでみたい。
ゆっくり確実にマッピングしながら進むと、先にも遭遇した腕の長い虫が出てきた。あれかな、洞窟内の虫と言えばウデムシ。見た感じそれっぽい。ウデムシと呼ぼう。正式名称はギルドに戻れば分ると思うけど。
「エルドクロットを使ってみます」
「じゃあ下がるぞ」
弾丸サイズ。と言ってもサイズはいろいろ。あまり小さくても倒せなければ意味がない。適切なサイズは探るしかないけど、とりあえず五〇口径を意識してみよう。
小さく高密度化して着弾と同時に爆発させる。
「エルドクロット!」
銃弾の如き爆炎弾が剣先から発射された。小さな光の軌跡が短い残像となり目標に向かう。しかも秒間八発に至っていそうだ。速射される光る弾は高速で向かい、ウデムシに命中すると同時に爆ぜる状態に。
威力は幾らか弱くなるけど、熱風やら爆発の余波が少ないのもいい。これなら周囲を巻き込まずに済む。
倒すとメンバーから「まるで機関銃だな」と言われる。
「上手く行きました。何か影響はありましたか?」
「いや、特にないな」
「洞窟の温度もそれほど上がってないし」
「これならどんどん使う方がいいよね」
レベル上昇と共に巨大化して周囲を巻き込んで来たけど、上手くコントロールできれば様々な状況下で使えると分かった。
これなら洞窟攻略も味方に被害を出さずに済む。
引き続き洞窟内をマッピングしながら進むと、どうやら一階層はクリアしたようだ。目の前には下り階段がある。




