Sid.37 モンスターを相手に無双
マサは好青年に見えたけど、この世界の人を少し下に見てるのかも。文明レベルで見れば確かに原始的ではあっても、それは地球も通ってきたことだ。いきなりハイレベルな文明をに手にしたわけじゃない。下に見る要素なんて無いはずなんだけどな。
フラウとヴィーラを見るけど二人はいつも通りだ。きっと現地人に関心がない。
街道を進み森へ入ると普段通りにモンスターを倒し、奥深くへと進み泉で大量のクラゲを倒し、荒稼ぎしたら先へと進む。
「ここまでは問題無くなってきたな」
「ヒロトが居るからでしょ」
「そうなんだけど、俺も対処できるようになってきたし」
「油断すると大怪我するよ」
そう言えばマサは武器屋と上手く付き合えてるのかな。
聞いてみると。
「愛想は良くないし会話もほとんどないな」
ぶっきらぼうだけど最低限の仕事はしてるそうだ。僕とは違うのかな。
「手入れもしっかりしてくれてるけどな」
「そうですか」
「ヒロトは違うのか?」
むしろ気に掛けてくれてる。愛想が良いわけじゃないけど。武器とか防具の説明も細かくしてくれるしエールも送ってくれるくらいだ。
最低限の仕事じゃないと思うし。待遇に差があるみたいだな。
それを言うと。
「愛されるか」
少し考え込む感じだけど集中しないと、モンスターに襲われるからね。なんか向かって来てるんだよ。大きな奴含めモンスターが。それも数えきれないくらい。
「モンスターが近付いてるみたいです」
「え」
「また数で来てる?」
「数えきれないです」
また大乱戦になるのかと全員身構える。先陣切って突進してきたのは十本足の牛だ。アイエラデカポダ、とか言ってた気がする。
しかも一頭じゃなく十頭くらいの集団で。
「なんだあれは」
「アイエラデカポダです」
「え、アイエ?」
「とにかく迎え撃ちましょう」
盾を構え突進を防ぐべく最前線に立つマサ。その後方にフラウが立ち回復に徹するのだろう。同じ位置にヴィーラが立ち精霊を呼び出す。
僕はと言えば魔法で薙ぎ払うことに。剣で対処してたら撃ち漏らすだろうし。
「ジーベンス!」
まずは先制の一発。
轟音と共に閃光が多数走り先頭の牛に命中。あっという間に倒れるけど、後続が次々押し寄せてくる。
牛の後方に居る存在も分かった。コバロルムの大群。一匹なら今の僕らには弱い相手。だけど数が纏まると面倒臭そうだ。さらに続いてオクタプレブロも。
ネブマデンドロが両側からゆっくり近付いてきてる。
「両側からも来てます」
「まじかよ」
「ねえ、倒せるの?」
「僕が何とかします」
森林火災が発生しそうだけどネブマデンドロは炎に滅法弱い。エルドクロットを連射して先に排除しておく。森が燃えるからイスノーラルで鎮火も試みる。
近付き過ぎるモンスターはスタートヴォーグで弾く。それでも撃ち漏らしが出るから、それらはマサたちに任せることに。
次々魔法を繰り出し片っ端から排除して行くと、ほぼ倒しきれたと思ったんだけどなあ。
「何あれ」
「で、でかすぎだろ」
「逃げた方が」
三人とも腰が引けてる。僕も何であんなのが出てくるのかと思う。でも神殿の石像よりは小型。身長五メートルくらいだと思う。
巨人だ。手には巨大な剣を持ち向かって来てる。しかも一体じゃなく六体同時に。
「に、逃げようよ」
「俺もあんなの受けきれない」
「ヒロト、逃げよ?」
迎え撃つ。
逃げ切れないでしょ。巨大な奴の一歩はこっちの五歩から十歩だよ。しかも周囲の木々を薙ぎ払って一直線に向かって来るんだから。
最大威力のエルドクロット二十連発とジーベンス十連発。それで倒せなければスタートヴォーグで態勢を崩して、同じだけの魔法を叩き込めばいい。
「みんな下がってください」
「え、まさか相手するの?」
「無茶だろ」
「いいから下がってください」
剣を向け爆炎弾と化したエルドクロットを放つ。一発二発じゃない。二十連発だ。
凄まじい勢いで発射される爆炎弾。着弾すると激しく爆発炎上し、炎で巨人の姿が見えなくなってる。
続けてジーベンスを最大威力で放つ。轟音が周囲の音をかき消し閃光が視界を塞ぐ。
どうなったのか分からないけど、一旦攻撃をやめてみると。
巨人の居た場所が大火災状態だ。立ってる奴は居ない。つまり全部排除できたと思うけど。
「イスノーラル!」
火災を何とかしないと確認すらできない。
氷の壁を火災が発生している場所に出して、炎を取り囲むと徐々に収まり暫くすると鎮火したようだ。
巨人の居た場所に向かうと地面に転がる六つの魔結晶。
どうやら倒しきれたようだ。
拾い集めポーチに仕舞いマサたちと合流することに。ただ、さすがに少し疲れた感じはある。
下がっていたマサたちだけど僕を見て、開いた口が塞がらない状態のようだ。
「ヒロト、無茶苦茶だ」
「一人で全部って」
「レベル高いのは分かってたけど」
前回見た魔法の威力がさらに上がっていて無双し捲っていたと。
「魔法の威力が」
「あれでレベル三十二?」
一般のレベル三十二だと僕ほどの威力は無い。たぶん。神の加護持ちってことで威力マシマシなんだろう。
だから他の人とは比較ができない。一般のレベルで言えば四十前後かもしれないし。
「なんかヒロトって」
「神の加護なのかな」
「あればあたしたちも?」
加護を得られればの話しだけどね。
でも三人とも加護を得られる感じじゃないな。欲が勝ってれば神も相手にしないだろうし。
でも僕も大差ないと思うんだけどなあ。なんで加護を授かったんだろう。
差別意識が無かったからかなあ。そうは言っても三人も差別まではしてない。ただ、僕ほど頻繁に会話をすることもないけど。だとすれば差はそこかも。
「期待はしない方がいいです」
「そ、そうだよね」
「まあ、そう簡単に都合よくは行かないよな」
「あれかなあ、誰かしら好きになれれば」
この世界の住人を好きになれば、もしかして、などと言うフラウだ。実物と接した時と本当に印象が違う。この世界だと妙に子供っぽくなる。
「ヒロトを参考に考えると」
「ギルドの受付とシスター」
「二人から愛されてってこと?」
愛されるのはハードルが高いと思うらしい。普通はそうだよね。僕らは、この世界の人にとって厄介者。好き放題して荒らしてたんだから。
「まずは自分から町の人を愛せれば、と思います」
「自分からかあ」
「愛するって言ってもねえ」
「愛想よく振舞うとか?」
それは明らかに違うと思う。これ、説明が難しいなあ。
「大切な仲間、と思えれば、じゃないですか」
「そうか。仲間か」
「確かに仲間としてなら」
「大切と思うよねえ」
町の人たちは生きているし生活している。決してNPCじゃないのだから、人として向き合う必要があるんだろう。それが自然にできれば神も認めるかもしれない。
でも加護持ちなんて早々現れなかったみたいだし。誰にでも機会があるわけじゃないんだろうな。
少なくとも欲があるうちは。
「あの、そろそろ戻りませんか?」
深く入ったことで想定外の集団を相手にすることになった。
大量にモンスターを排除したことで、レベルも上がっているだろうし。戻って確かめてみればいいと思う。
「まだ時間はあるけど」
「俺たち、ほぼ何もしてないぞ」
「でも数が出てきたら」
結局、僕に頼る羽目になる。だったらレベルが上がっていることを期待し、次は自分たちで対処できるようになればいい、と結論を得た。
「じゃあ戻るぞ」
魔結晶は拾えるものは拾っておいた。
街道に出ると町の周囲が騒々しくなってるような。
「なんだ?」
「騒いでるみたいだけど」
「城壁とか門のところ」
門衛やギルド職員まで居て冒険者と揉めてる?




