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Sid.34 森でのレベリングは終了

 試しに川にエルドクロットをぶち込むと、水が爆散し周囲に散らばった。

 でも流れは変わらず。何回か試しても魔結晶を落とさない。つまり水の中に視認できない存在が居たのだろう。完全に水と同化してた可能性も。


「近寄らないに限るな」

「もうごめんだから」

「本当に死ぬかと思った」


 溺死なんて嫌だと言う二人だ。

 川から離れ移動すると今度は直立する身長二メートルくらいの大トカゲ。足は四本。腕が二本。合計六本。四本の足で直立し手には斧を持ってる。

 前に出て剣を抜き盾を構えるマサが居て、斧を上段に構え突進してくる六本足のトカゲ。

 盾で受けるとパッシブスキルが発動したようだ。腕が捥げて後方に倒れ込む六本足のトカゲが居る。

 そのまま前に出て剣を胸元に突き立てると、暫し藻掻くも消滅し魔結晶を残した。


「トカゲだよな。なんで足の数が多いんだ?」

「八本足も居たでしょ」


 マサは武器での近接戦闘なら活躍できる。遠距離攻撃ができないから、なかなか活躍できなかったけど、パッシブスキルが発動すれば強いね。

 そしてやっぱり出てくる。ぞろぞろと六本足のトカゲが。


「数が多過ぎるんだよ」


 言いながらも盾を構え向かって来るトカゲに突っ込んでいくマサだ。

 ヴィーラは同時に二属性の精霊を呼び出す。


「サラマンドラ、シルフィ!」


 そうなるとフラウとヴィーラを守るのは僕の役目に。二人の傍に居て近付くトカゲを魔法で排除。

 僕の傍でフラウが「全然近寄らせないよね」とか言って、なんか気を抜いた感じになってるし。でもマサの状態を見ておかないと。怪我でもしたら攻撃や防御に支障が出るだろうし。

 見てるとパッシブスキルは常に発動するわけじゃないのか。三回に一回程度発動してる感じだ。少々苦戦気味だけど耐えてる。


 精霊は一回の召喚で十体まで倒せる。十体倒すと勝手に消えてしまうし、すぐには同じ精霊を呼び出せない。暫しのインターバルが必要で五分程度らしい。

 無制限に魔法を放てる僕が一番頼りになる、と言う二人だ。


 マサが怪我をすると即座に回復させるフラウだ。

 近距離なら届くようで、どの程度なら効果があるのか聞くと「十メートル以内かな」だそうで。

 それより離れてしまうと届かない。結果、自分から近寄る必要があるらしい。リスクが高くなるから、もう少し距離が取れればと言ってる。


「ヒロトって余裕あるよね」

「そんなことないです」

「でもこうして話してるし」


 森だから。これが神殿だったら、こんなのんびりしていられないし。中ボスは洒落にならない強さだった。でもレベルが上がれば余裕で倒せるんだろう。

 一人奮戦する雰囲気のマサだけど、やっと全部倒しきったようだ。あちこち治療しきれなかったのか傷がある。こっちに来るとフラウが治療するけど、血の跡は消えないんだよね。それと破れた服とかも元には戻らない。


「くっそ、纏めて出てきやがって」

「ヒロトは楽勝だったよ」

「だよなあ。呑気に話ができてるんだもんな」


 レベルが高いと優位なのが良く理解できるそうだ。

 結局、六本足のトカゲは総数三十五体だった。魔結晶を拾い集め町に戻ることに。


「結構時間経っただろうしレベルも確認したい」

「そうね。二時間くらい居たから」

「レベル、幾つくらい上がってるかなあ」


 期待しているようだ。三人で行動していた時は、ここまで集団相手の戦闘にはならなかったそうで。僕が居るだけで尋常ではない数が出てくる。レベル上昇に期待する面々だ。

 僕はたぶん上がっても一上がるかどうかだろう。苦労せずに倒せる相手しか居ないし。全部魔法で一撃必殺。やっぱり虐殺にしかならない。


 帰路でもモンスターが押し寄せて来たけど、臨機応変に僕が受け持ったり、マサやヴィーラに任せたりしながら森を抜け出た。

 街道を歩く頃にはヴィーラが頻繁に「疲れたぁ」と口にしてたけど。


「ねえヒロト」

「なんです?」

「おんぶして」

「あの、ごめんなさい」


 ケチ、とか言ってるけど自分で歩こうよ。これがマリッカだったら、おんぶしちゃいそうだ。頼られたら断れないと思うし。

 町に辿り着くとセヴェリさんとトゥオモさんが「お疲れ」と言ってくる。


「三人の面倒見てたんだろ?」

「一応そうなります」

「成果はあったか?」

「それなりだと思います」


 セヴェリさんが耳打ちしてきた。


「どうなんだ。上手くやって行けそうか?」


 頷くと「気の合う仲間なら良かった」と言ってくれる。何かと心配してくれるんだよね。いい人たちだ。

 まずはギルドに行き換金するけど、数が多過ぎて次回に持ち越しになった。


「多過ぎて一度に扱いきれません」

「でも僕が行くとそうなるんです」

「ヒロトさんってモンスターにも好かれるんですね」

「違うと思いますけど」


 アイナが「あたしにも好かれてるんですよ。マリッカにもですけど」なんて言ってるし。

 僕の手を取り「女性も虜にする強者だ」とか言って「必ず振り向かせるんです」だって。そんなことを言ってると「二股」とか言うメンバーだし。

 なんかやっぱり揶揄われる。

 あ、そうだ。アイナなら分かるかも。


「水のモンスターみたいなのが居たんですけど」

「水の? あ、そう言えば」


 水と見分けの付かないモンスターが居るそうだ。


「この魔結晶がそれですね」


 手にして「テラスネロって言うんですよ」と言う。


「フラウとヴィーラが引き摺り込まれそうになって」

「良く助けられましたね」


 人の力では救助は難しいと言ってる。まあ引き上げようとしたけど無理だったし。

 魔法も人を傷つけてしまうから、場合によっては諦めることもあるそうだ。諦めないけどね。手段があれば。


「こっちはスクリニアラクニですね」

「それって」

「蜘蛛のモンスターです。こっちがエクサポディサブラですよ」


 六脚トカゲだそうだ。


「かなり奥まで向かったんですね」

「まあ時間もあったんで」

「一人でじゃないので、まだいいんですけど」


 以前は一人で向かって大怪我して戻って来た。今は仲間もできて怪我をせず戻って来れている。安心しているそうだ。

 怪我で担ぎ込まれて泣いてたしなあ。心配してたのは分かる。


「じゃあレベルの確認して来るんで」

「また爆上がりですか?」

「僕は無理だと思いますよ。レベルが高いんで」

「ですよね。でも無理はしないでくださいね」


 名残惜しそうな表情はいつもだな。もっと一緒に居たいんだろうけど、こっちは時間制限付きだし。僕もマリッカとのんびり過ごしたいと思う。でも現状は無理。

 受付を離れ待機室に向かいスタッフに申し出る。

 僕を除く三人はレベルが二十四になった。


「すげえ。いきなりこれかよ」

「一気に上がった」

「今までちょっとしか上がらなかったのに」


 僕はと言えばレベル三十二になってる。上がり過ぎてる気がする。数は居たけど楽勝な相手だったのに。


「おそらくですが優先的に生命力が割り振られたのかと」

「え、そんなことあるんですか?」

「倒した数が多ければ、ある程度優先されますからね」


 そうなのか。これも神の加護があってのことかなあ。


「じゃあ僕が倒さなければ」

「全員レベル二十五になっていたかもしれませんね」


 三人を見ると「ヒロトが居なかったら無理だった」とか「助けられてるし」とか「働きに応じてって普通だと思うけど」だそうだ。

 誰もずるい、とは言わない。


「ずるい、なんて思わないぞ」

「そうだよね」

「あたしたちだけだったら無理だったからね」


 口を揃えて「これからも頼むよ」だって。頼りにしてるそうだ。


「あの、教会に行きたいんですが」

「シスターに会いたいんだ」

「俺は武器屋に行くから」


 マサ以外は一緒に教会へ行くことに。

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