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Sid.32 森林で仲間のレベリング

 森へ向かう道中もアイナとマリッカのことで揶揄われる。娯楽の少ない世界だから、いや、この世界に来ること自体が娯楽だった。地球の人にとっては。

 でも、僕にとっては娯楽じゃなくなるかもしれない。この奇妙な世界で生きて行くとなればね。いずれ二人のどちらかと結婚とか。生活基盤をこっちに置くとなると、何をして生きて行くかも考えなければならない。

 今は考えても答えは得られそうにないな。


「ヒロト」

「どうした?」

「考えごと?」


 呼ばれてた。


「あ、ちょっと」

「どっちにするか迷ってた?」

「そうじゃないです」


 マサが「でもなあ、できないんだよなあ」なんてぼそっと言ってる。それを聞いたフラウとヴィーラに「結局エロかよ」なんて突っ込まれて、慌てて違うとか言ってるけど。

 女性が居るんだから気を付けないと。まあでもプラトニックなだけの関係は難しいよね。種族保存の本能だってあるんだから。


 森に着くと気合を入れる。


「よし、行くぞ」

「ヒロト、守ってね」

「頼りにしてるから」

「俺も居るぞ」


 女子二人から弱いじゃん、なんて言われて凹み気味のマサだし。僕も強いわけじゃないんだよ。レベルが上なだけで。そこを勘違いされてもね。

 森の入り口から暫くはコバロルムしか出てこない。サクサク倒して進み八本足のオクタプレブロを倒すけど、一匹だけじゃなく四匹纏めて出てきた。


「これ、数が!」

「すまんヒロト、頼む」


 攻撃を受け止めるマサだけど代わる代わるの攻撃で、押し込まれ守り切れなくなってるようだ。

 精霊召喚をするヴィーラだけど、コバロルムが二十匹同時に出てきて邪魔をする。

 後頭部を狙ってくるから面倒なんだよ。四方八方からの攻撃で陣形が崩れ、危険な状況に陥ってるのは確かだ。


「全員伏せて!」


 マサが頭の上に盾を掲げ、その下に三人で最低限頭だけでも隠す。頭隠して尻隠さずを地で行ってるけど、致命傷は避けられるだろうし。


「ジーベンス!」


 三人が伏せると魔法を使う。コバロルム程度なら一発食らわせれば、瞬殺できる威力になってるし、オクタプレブロも今の僕には大差ない。

 閃光と轟音が発生し一瞬で全滅した。

 僕にとって森のモンスター相手だと虐殺にしかならない。死にそうになるけど神殿じゃないと釣り合いが取れないし。とりあえず三人のレベルを上げるしかないけど。


「助かった」

「やっぱり頼りになるよね」

「でもなんで数が多いの?」


 数が多く出るのは、たぶん僕のレベルのせいだと思う。

 一匹ずつだと弱くても数で押せばの理屈だろう。これが百とか二百とかになれば、手に余る状態になって追い込まれるだろうから。戦争だって同じ。どれだけ質で勝負しようとしても数の前には無力だ。まあ現代には核なんて物騒なものもあるけど。たった一発で形勢逆転どころか壊滅させられる。だからこそ使っちゃ駄目なんだよ。

 でも人は歴史に学ばない。いずれ使う国も出てくるんだろう。


「僕のレベルが高いから」

「ああ、そういうことか」

「その分、あたしたちのレベルも上がりやすいのかな」


 安堵する面々だけど気は抜けない。この先へ進むとネブマデンドロのエリアに入るし。心配はしてないけどね。あれらは移動できないから近付かなければ、ただの的でしかない。

 と思ってたんだけど。


「こいつら、移動しやがる」

「動かないんじゃなかったの?」

「なんか前と違うし」


 離れた場所から精霊による攻撃をするも、ずるずると移動するネブマデンドロ。

 長い枝をしならせ振り回し薙ぎ払おうとする。距離を取ると攻撃手段がないマサだ。

 結果、精霊と僕の魔法による攻撃で凌ぐ。


「ねえ、マサ」

「なんだよ」

「魔法使えないの?」

「使えねえよ。代わりにスキルはあるけど」


 マサのスキルは基本はパッシブ。攻撃を受けることで発動し返り討ち。アクティブは至近距離でしか発動させられない。距離のある相手には現状無力。

 ただし枝による攻撃をパッシブで弾くと枝は折れて散るけど。近接戦闘に特化してるようだ。


「遠距離攻撃は?」

「無い」

「なんか惜しい」

「半端」


 哀れな。でもさ、二人を守れるのはマサだよ。僕は攻撃特化だし。距離はあまり関係無いけどさ。

 攻撃は最大の防御とも言うけど。


 奥へ進むと泉に出る。


「ここも数が出るんだよな」

「全属性を出しちゃうと三十分」


 僕に視線が集まるわけで。だよね。纏めて倒せるのは僕しか居ないし。

 あ、そうだ。イースピラレって盾代わりに使えないかな。サイズも大きくなってきてるし脆いけど電気なら防げそうだし。純水なら絶縁体になるけど。魔法でできた氷って純度はどうなんだろう。

 試す価値はあるのか。今後のことも考えて特性を知っておくべきだろう。


「あの、僕に考えが」

「何?」

「なんかアイデアでもあるのか?」


 魔法で氷の盾を作り電撃を防ぐ。ただし、どの程度防げるかは現時点で不明。いろいろ試したいから痺れるのは我慢して欲しい、と言うと。


「実験でもするの?」

「今のうちに試しておきたいんです」

「じゃあ、フラウを守り切れば」

「回復はできますよね」


 ということで全員の了承を得て実験することに。一人だと窮地に追い込まれかねないけど、仲間が居れば試すことも可能だし。幾ら電撃に慣れてきたとは言え、集団で使われたら麻痺するだろうし。


 泉の淵まで歩みを進め三人には後方に待機してもらう。三人の前方はマサの盾で防御態勢。左右と後方は僕が張る氷で防御。万が一、僕が麻痺して動けなくなった際にはフラウに回復してもらう。


「イースピラレ」


 三人を囲むように左右と後方に展開すると、いい感じで防御ができそうな。どこまで持つのか分からないけど。


「じゃあ、誘き寄せるから」


 固唾を飲んで見守る三人が居て、一人泉の淵に立ち煽ってみると、続々出てくるイレクトリコスだ。

 今回は数を数えるのも面倒なくらい出てくる。

 水面上に浮かぶ瞬間、エルドクロット連発で片っ端から排除。魔結晶は諦めるしかない。

 次々爆発炎上し飛び散るイレクトリコスだ。それでも攻撃から漏れる奴が三人に向かう。


「来た」

「守ってよ」

「あたしは近付き過ぎる奴を」


 ヴィーラは精霊召喚で近付き過ぎるイレクトリコスを倒す。

 電撃を放つも正面はマサの盾で防御。とは言えマサは痺れてるわけだけど。動けなくなる前に痺れを回復させるフラウだ。

 左右や後方からの電撃は氷の壁が防いでる。使えるかも。しっかり絶縁してるようだ。


「これなら行けるか」

「ヒロトの魔法って使えるよね」

「なんか凄く優秀」


 三人の感想が聞こえてくるけど、氷の壁が壊れると掛け直す必要がある。タイミングを見計らって声を掛けて、と。

 何度か攻撃を食らっていると壊れる氷の壁。


「ヒロト、頼む!」

「イースピラレ」


 三人の側に魔法を使う間は僕が無防備になる。ちくちく痛みが生じるけど耐えられるな。以前とは雲泥の差がある。

 氷の壁が展開されると再び水面上に溢れ返るイレクトリコスを倒す。

 暫くすると出て来なくなり静けさを取り戻した。


「終わったのか?」

「やっと?」

「なんか凄かった」


 魔結晶の凡そ半数は泉に落下。残り半数の魔結晶を拾い集めると。


「八十六個」

「すごっ」

「これ、相当な金額になるよね」


 僕を見たフラウだけど「なんか不細工になってる」って何それ。


「麻痺してるな」

「さすがに数が多かったから」

「回復するから」


 どうやら耐性は得ても完全じゃないから、顔面麻痺の状態になっていたらしい。喋ろうとして呂律が回らなかったし。それに足も腕も痺れはあった。

 回復が済むと休憩を取ることに。


「場所を移して休憩しよう」

「安全な場所って」

「泉から距離を取れば」

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