Sid.29 チート持ちと認識された
さて、単独で斥候が出てくると次は団体さんになるんだよね。
治療が済むか済まないかで泉から次々、浮き上がってくるクラゲだ。さすがにそれを見たフラウやヴィーラの腰が引けてる。
「な、なんであんなに」
「ちょっと出過ぎでしょ」
「ヤバいな」
普通はそう思うよね。僕もあれにはやられたけど、全滅させたからレベルが上がった。やられっ放しだと体を失うことになるし。ソロだとやるしかないんだよ。
狼狽える面々を他所に僕だけ冷静。治療士さえ守れれば回復できるし。
そこで指示を出すことに。リーダーじゃないけど経験者として。
「マサさんはフラウさんを守ってください。ヴィーラさんの精霊って一度に全属性呼べるんですか?」
ちょっと驚いてるようだけど、落ち着いた感じに見える僕を見て「分かった、俺はフラウを守る」とマサが動きヴィーラは「四属性全部出せるけど」と言う。
ただし全属性の精霊を呼び出すと、三十分間、一切呼び出せなくなるらしい。
充分でしょ。
「じゃあ全属性で攻撃してください」
「えっと、分かった」
マサがフラウを包むように盾を使い守り、ヴィーラが全属性の精霊を出す。
精霊は勝手にクラゲに攻撃をして次々葬ってるようだ。他のクラゲはフラウに攻撃をするようだけど、マサが盾になっているから攻撃を食らうのはマサ。
痺れると治療をするフラウが居て、余裕ができると攻撃を食らうヴィーラの回復もする。
当然だけどヴィーラへの攻撃も激しくなる。
その攻撃は僕が体を張って守れば問題無い。すでに電気クラゲの電撃は静電気程度だし。痛みはあっても痺れはしない。僕のことは回復しなくていい、とも言っておく。
続々泉から湧いてくるクラゲだけど、ヴィーラの精霊が倒せるのは、一度の召喚で各々十匹までだった。
残りは僕のエルドクロットで倒すと、総数六十匹で打ち止めとなったようだ。
「終わった、のか?」
「なんか凄まじかった」
「ヒロトって」
クラゲの攻撃を食らい続けて平気なのかと。
それと魔法の威力が凄まじすぎると驚かれる。エルドクロットは連射速度や弾速もそうだけど、ついに思念で追尾させることもできるようになった。
曲がれと念じれば曲がる。目標を定め追尾しろと念じると、しっかり追尾し逃げるクラゲを落としてたし。
「レベル上昇で使い勝手が良くなっただけです」
「それでも凄すぎる」
「魔法使い並みに凄いじゃないの」
剣士の腕は相変わらず半端だけど。こればかりは鍛錬するしかないんだろうな。
イレクトリコスを倒しきったら町に戻る。
帰りの道中、ネブマデンドロは接近戦だと殴られる。ヴィーラは召喚できないってことで、ジーベンスで十本ほどを倒すと、ここでもやっぱり驚かれるし。ジーベンスの威力まで上がってるから僕も驚いた。
「威力が凄すぎる」
「僕も驚きました」
「レベル上昇で威力が上がるのは分かるけど」
驚愕の表情をされるやら感心されるやら。
「リーダーはヒロトがいいだろ」
「僕には人を纏める経験がないです」
「さっき上手く行ったぞ」
「たまたまなのと敵を知ってたからです」
謙遜しないでリーダーをやればいいのに、だそうだ。もっと経験してからでも遅くないでしょ。間違った判断を下せばみんなに迷惑が掛かるし。
まずはみんなと上手に連携が取れるようになってから。その上でリーダーに必要な経験を積めばね。僕には荷が重いと思うけど。
森を抜けて街道に出ると頭が二つ、足が六本の犬?
犬にしては体が昆虫みたいな。
「ディオケファイアだ」
「なんです、それ」
「見た通り頭が二つある犬のモンスターだ」
危険なのかと聞けば炎を吐き強固な装甲を持ち、動きの素早さがあり中堅冒険者でも、相当手古摺る相手だそうだ。
「こんなところに出るなんて」
「あたし召喚できないんだけど」
「俺が炎を防ぐからヒロトが攻撃を」
マサが盾を構えるや否や、火炎放射器の如く二つある頭が、交互に炎を噴射して来る。それを盾で受け止めるけど、相当な熱量なのか盾が持ちそうにない。
ヤバそうだ。
僕の魔法が通じるかどうかは分からないけど、ジーベンスで麻痺してくれれば手の打ちようはある。
「ジーベンス!」
轟音と閃光が走り直撃すると、跳ね上がるような形で六肢を広げ、そのまま倒れる犬が居た。
感電したんだろうけど、これで麻痺した?
剣を抜き駆け寄り上段から振り下ろそうとしたけど。
「死んでる」
そのまま地面に吸い込まれるように消えた。
一撃?
弱すぎない?
「ヒロト」
呼ばれて振り返ると呆れた表情の面々が居る。
その理由は分かるけど。中堅冒険者が手古摺る相手を一撃だもんね。ジーベンスの威力も相当上がってるし、エルドクロットも使い勝手が良くなったし。
一般的なレベル三十の魔法使いより、僕の魔法の威力は極めて高いんだろう。
これも神の加護のお陰だだろうけど。あとで教会に行って感謝の祈りを捧げておこう。マリッカにも会いたいし。
みんなに合流すると「レベルの違いより威力が」とか言われた。
「チートだな」
「だよね」
「まさにチート持ち」
神の加護がチートなのは理解してる。さらに寵愛を受ければ無双できるんじゃ?
まあ期待しないでおくけど。変に期待すると要求してるのと同じ、って言ってたし。ここは謙虚に感謝すればいい。
町に戻るとセヴェリさんとトゥオモさんが、こっそり耳打ちして来る。
「仲間とはどうだ?」
「こいつらはヒロトと同じ人種か?」
頷いておく。僕の話を聞いているから蔑むことはない、と思う。
「じゃあれか、神の加護を得られるのか?」
「それは分かりません」
「まあでも悪さをしないならな」
「見下さないならいいけどな」
僕が仲間に選んだ冒険者なら心配は要らないのだろうと。
セヴェリさんが恐る恐るマサに話し掛けるみたいだ。
「なあ、町の住人をどう思ってるんだ?」
聞かれた意味を理解しないのか「どうって?」となってる。すかさず僕が割入ってマサに町の住人を蔑まないのか、ってことだと思うと言うと。
「そんな意味がないことはしないけどな」
「本当に?」
「同じ人間だろ。何で蔑む必要があるんだ?」
セヴェリさんとトゥオモさんが僕を見て笑顔になった。親指を立て「いい仲間だな」だって。
まだわからないけど他の冒険者とは違うと思う。
ギルドに向かうと僕だけ呼び止められて「戻りが早かったが問題があったのか?」と聞かれ順調でしたよ、と言うと安堵したようだ。二人は僕のことを心配してくれるんだよね。
だから僕も二人を信頼してる。いい人たちだし。
一旦ギルドで魔結晶の換金を済ませるけど。
「ヒロトさん。まだ時間あるんですよね」
「えっと教会に行きたいんで」
「またマリッカですか?」
「祈りは捧げておきたいから」
顔を天井に向け「すっかり信者だ、しかもマリッカの」じゃないっての。
マサに向き直り教会へ行くので解散しますか、と言うと。
「俺らもいいかな」
「そうだよね。祈りは捧げておきたいし」
「感謝しないとね」
まあいいか。今はまだ欲が透けて見えるけど、本当に感謝できるようになれば希望はある。
四人で教会に行くとマリッカが驚いてるなあ。
「あの、そちらの方は?」
「僕の新しい仲間です」
「女性も居ますね」
「問題無いです。冒険者仲間なので」
祈りを捧げたいと言うと。
「ではこちらへ」
先導され全員が祭壇の前に立つ。祈りの形も三人に教えるマリッカだ。
そして簡易形式の祈りをする三人。僕とマリッカは正式な祈りを捧げる。
祈りが済むと寄進だけど僕からは遠慮するんだよね。他の三人からは一スレブロずつ受け取っていた。
寄進が済むと僕の手を取り見つめるマリッカが居るんだよ。




