Sid.28 仲間が増えて暫し鍛える
待望の冒険者仲間ができた。どこまで一緒に行動できるかは分からないけど。
当面は森で鍛えてレベル差を減らす。僕が森で暴れたところでレベルは上がり難い。でも三人は上がる余地があると思う。二十五くらいになったら神殿に出向いてみよう。
あ、でも、他にもう少し難易度の低い場所って無いのかな。
それとレベル三十になってるから、魔法を一つ習得できる。カウンターを見るとアイナと目が合うんだけど、にっこり微笑んでるし。
「あの、魔法を習得するんで少し」
「今日レベル三十になったんだっけ」
「そうです」
「新しい魔法かあ」
重騎士は魔法を使えない。代替としてスキルがあり、パッシブスキルとアクティブスキルを習得可能だそうで。パッシブスキルは攻撃を受けてから発動するもの。アクティブスキルは自ら発動させられるもの。各々一つずつ習得してるそうだ。
「まあ守りは硬いから役立つ場面もあると思うよ」
とりあえずカウンターに向かうと「デートしてくれるんですか?」とか言ってるし。そうじゃなくて魔法の習得、と言うと「マリッカとはデートするんですよね」なんて言い出すし。
デートじゃなく話を聞くだけなんだけどなあ。
まあいいや。
「魔法」
「ガチャですね」
嬉しくないなあ。運の要素が大きすぎる。
カウンターの上にガチャが置かれると、メンバーたちも興味津々で集まって来た。
「何が出るかな」
「使える魔法だといいよね」
「でも所詮は時の運」
ただ、僕は運がいいと思うらしく、使える魔法を得ると思っているようだ。逆だけど。ガチャ運はからっきし。ハズレを引く可能性の方が極めて高い。とは言っても衝撃波は意外と使えた。あれが無ければ死んでたし。レベル向上の末、だけどね。
「じゃあ回してください」
レバーを掴み回すと玉が出てくる。白い玉だ。
アイナを見て分かった。残念賞。ハズレだ。
「それ何?」
「白い玉って属性無しの奴」
「まさかハズレ?」
引き攣った笑顔で僕を見て「えっと、ですね、役立つ場面もあるので」とか言うアイナだ。
「これ、何です?」
「言えません。飲めば分かります」
じっと白い玉を見る。レベルが十毎にしか魔法を得られないのに、ハズレ魔法を引く運の悪さもここに極まってる。神の加護は、こういう面では機能しないんだろう。
已む無く手にして飲み込むと理解できた。
「結局何の魔法なんだ?」
モルケシーエンデ。つまりは暗視。暗闇でも視界が利く魔法。赤外線で見るのだろうか、それとも紫外線にも反応するのだろうか。
普段は全く不要な魔法だよね。暗闇での戦闘なんて早々無いだろうし。
ため息が出る。
「ねえ、落ち込んでるみたいだけど」
「何の魔法だったの?」
「モルケシーエンデ」
「なんだそれ?」
説明すると肩を叩くマサが居て慰めるフラウとヴィーラだ。使いどころはあるはずだから、その時は頼らせてもらう、だそうだ。
アイナも「迷宮とか洞窟探索には都合がいいですよ」と言う。
ああ、そうだ。アイナに聞いておきたいことがあったんだ。
「あの、神殿以外に難易度がもう少し低い場所って」
少し考え込んでるけど「でしたら洞窟の探索もあります」だそうで。
聞けば高難易度の洞窟で通常八人以上で挑むそうだ。じゃあ今のメンバーだと無理でしょ。
「浅い階層でしたら神殿より難易度は低いですよ」
「でも八人以上って」
「階層構造になっていて二階層までなら四人でも大丈夫です」
現在知られている最下層は八階層らしい。そこまで行くにはレベル四十は必要だとか。三階層以降は急激に難易度が上がってくる。頭数をきちんと揃えた方が良いそうで。
じゃあ浅い階層なら問題無いのか。とは言え不測の事態が発生しやすいそうで、その時は死を覚悟せざるを得ないと。ゆえに不測の事態に対処できるよう、大人数で挑むのがセオリーとなっているそうだ。
「じゃあ新たに集めるのもあれなんで」
「そうですね。鍛えるなら森くらいがいいですよ」
僕以外は手頃だろうと。僕が居ることで安全も確保できると言う。
マサを見ると「当面は森でレベリングしよう」となった。
まずは各々の力量を見るため軽く森で戦闘を熟し、次回から本格的に鍛えることに。
アイナに行ってくる、と伝えギルドをあとにし森へ向かう。
道中、リーダーを決めようとなったけど、マサでいいと思う。たぶんマサがリーダーとして二人を引っ張って来たんだろうし。
そう言うと。
「じゃあ暫定でそうするけど」
「本当なら実力主義でいいんだけどね」
「実力で見ればヒロトでしょ」
僕にいきなりリーダーが務まるわけがない。ぼっちだったんだから指示を出すのも無理。ぼっちは自分だけのことを考え行動してれば良かった。でも仲間ができると個々もそうだし全体も見なければならない。経験が無いから無理だと言っておいた。
「ぼっち?」
「友だちは?」
「居ません」
「なんかリアルが気になるね」
家の教育方針が勉強勉強。時間があるなら勉強しろ、悪友と遊び惚けるくらいなら勉強しろ、部活なんてやっても成績は向上しない、だもんなあ。
まずは良い大学に行くこと。それが叶ってやっと遊ぶことが許された。これからいろいろ経験して行くことになると思う。
これもそれも日本が学歴最優先社会だからだ。最低大卒。しかも有名大学を出たか否かで就職すらも左右される。じゃあ大卒の上、院卒なら万全かと言えばそうでもない。院卒はあまり歓迎されないし。博士号とか修士号なんて立派な肩書きも、一部を除けば企業にとってどうでもいいわけだ。
高卒以下は就職先が限定される。サービス業ですら大卒を欲しがるからなあ。出世できるのも大卒。あまりに大卒に囚われすぎてる。所詮は学士でしかないんだけどなあ。世間で言う高学歴の一番下じゃん。
BF大学を出ても学士だもん。そんなピンキリでいいのかって思うけどね。
「どうした?」
「あ、何でもないです」
「なんか考えごと?」
「いえ、ちょっとぼうっと」
話題としてつまらなさすぎる。口にしないに限るな。
森に着くと早々に分け入って行くけど、コバロルム程度なら三人で充分相手できる。
電気クラゲはどうだろう。あれでレベルが上がってるからなあ。レベル次第では相当苦戦する相手だとは思う。ただ、治療士が居るからソロよりはいいんだろうな。
凡そ問題無く奥へと進めるけど「この先は行ったことがないな」と言うマサたちだ。
「ここより深く立ち入ると泉があるんです」
「泉?」
「空飛ぶ電気クラゲが出てきます」
見てみたい、となったけど好奇心だけで向かうと痺れ捲るけどね。
まあ経験ってことで。
「あ、本当に泉があるんだ」
「へえ。なんか白っぽいんだね」
「濁ってるけど深いのか?」
深さは不明。浅い部分は透明度もあるけど、白い部分は相当深いかもしれない。ライフジャケットなしには入る気にはなれないな。それにクラゲに攻撃されたら溺れる。
少し見ていると、まるで斥候の如く一匹が浮上して来る。
「出たよ」
「まじでクラゲだ」
「どうするの?」
勢いマサに向かって来るクラゲだけど、盾を構え受け止める気のようだ。でも躱されて後方に回られると、盾の重さゆえか向きを即座に変えられないんだ。で、やっぱりそうなるよね。
「あ、ががががが」
閃光が放たれると痺れて藻掻くマサが居て、精霊を召喚して対処するヴィーラが居る。
「サラマンドラ!」
炎の精霊だ。見た目は炎を纏ったトカゲ。火を吹くけど射程距離が長めで勢いも相当あるんだ。
僕の場合は避けられてたけど、きちんと命中し火達磨になってる。
痺れて動きづらいマサはフラウに治療された。
電気耐性は僕の方が上かも。




