Sid.27 応募してきた冒険者たち
メンバーに応募してきたと言う三人だけど、僕とアイナを見て呆れ気味だった。
キスする姿を見て呆れるってことは日本人なのだろうか。欧米であれば愛する者同士なら堂々とキスを交わすだろうから。今の日本も堂々といちゃつく人居るけどね。
女性二人は欧米人風で金髪碧眼。男性一人は凛々しい日本人風。
アイナが咳払いをすると「とりあえず自己紹介を済ませた方が」と言うから、ギルド内のラウンジで話をすることに。
テーブルを囲み全員が椅子に腰掛けると、まずは僕から名乗ることに。
「メンバーを募集していたヒロトです」
次いで全身ごつい装備に身を固め大盾を持つ男性が名乗ってくる。
「俺はマサ。重騎士で見ての通り日本人。レベルは知らされてるよな」
女性二人も名乗ってくるけど少し引かれ気味だ。二人とも後衛のようだ。装備が白装束と軽装だから。
白装束の女性がまず名乗って来た。僕から少し目を逸らしながら。ちょっと印象悪かったかな。
「フラウ。治療士で見た目と違って一応日本人」
何か言いたそうだけど飲み込んだようだ。
最後に生成りのシャツと緑のベストを着る女性が名乗って来た。少しにやけ気味だ。
「ヴィーラ。精霊召喚士。同じく中身は日本人」
前屈みになり笑みを浮かべ「受付の娘と付き合ってるの?」と聞いてくる。付き合ってはいない。僕にその気はないけど好かれてるんだよね。付き合うならマリッカがいいな。癒される。
とは言わず。
「なんか好かれてるだけです」
「へえ。強いから?」
「強くはないです」
「でも噂になってるよ」
レベルが爆速で上がる魔法剣士が居ると。僅か数回来ただけでレベルが二十になり、ソロなのに森に入ってモンスターを狩り捲り、挙句大怪我して担ぎ込まれた人が居る。
平均的な冒険者はレベル二十に到達するまで、一回二時間行動し三十回程度は来ないとならないそうだ。ただ、それも仲間と行動するからで、ソロならモンスターの生命力を独り占めできる。だから早いんだろうね、と言ってる。
重騎士のマサが興味を抱いてるのか「今のレベルは?」と聞いてきた。
「今日確認したら三十でした」
揃って驚いてる。募集用紙には二十五と記載したまま。レベル二十を超えると上がりにくくなるそうで。
「月にどのくらい来てる?」
「三回か四回」
「一回四時間?」
「二時間」
やっぱり驚くんだね。三人が顔を見合わせ「レベル差が」とか言ってる。
確かレベルが低いうちは上下に二くらいが適切とか。でも無理をさせなければ問題はないだろうけど。三人のレベルで神殿に行くと何もできず倒されるんだろう。
アイナも三十になったらと言っていたし。
「えっとですね、僕が安全を確保するのでレベリングしましょう」
「え」
「レベリング?」
「あの、どこで?」
森に出現するモンスター程度はすでに問題無い。楽勝と言える状態だからヤバそうな状況になったら手を貸す。それ以外では三人でモンスターを狩ってもらう。
一度に十や二十は相手にできるし。ジーベンスがあるお陰で森林火災も発生しづらいだろうからね。
と言うと。
「ジーベンスってなんですか?」
「えっと雷の魔法を発動させるアイテム」
なんか呆れてる。
「それってモンスターを倒して手に入れた?」
「いえ。魔族と遭遇した時にもらえました」
全員顎が外れそうだ。仰け反って目を丸くして口ぽかん。涎垂れそうだよ。
「ま、魔族って」
「物凄く強いんでしょ」
「殺されなかったの?」
話すと長い。でもある程度は知ってた方がいいかもしれないし。あの魔族は僕に対しては敵意を持たないけど、三人に対しては殺しかねないし。神の加護を持っていることで魔族が一目置くわけで。
あるんだろうな、神の加護。三人も教会で祈れば授かるのかなあ。でもただ祈っても駄目だろうね。何か、そう。この世界の人を大切に想うとか。何かしら条件があって授かるものだと思う。
とりあえず話が長くなるけどと切り出し経緯を説明した。
「そうか。教会が関係するかもしれないのか」
「クリスチャンになるとか」
「ちょっと違うと思いますけど」
「寄進と祈りで授かるの?」
欲があると駄目だと思う。僕の場合は教会なら治療費が安いってことで。でも神に感謝しておこうと思ったわけで。何かを得るとか期待してたわけじゃない。
そして門衛のセヴェリさんやトゥオモさんとも打ち解けてるし、アイナやマリッカにも好かれてる。武器屋のおじさんも気にしてくれるようになった。
この世界の人に好かれるとかすれば、神の加護を授かる可能性はあるのか。
好き勝手して横暴な人は高レベルな魔族によって倒されてる。神の意思が異物を排除させてる、とも言えそうだ。
「この世界の住人を愛すること。この世界の住人に愛されること」
これが最低条件じゃないかと言ってみた。まずは身近な存在。徐々に広げて行けば加護も強力になるかもしれないし。寵愛を授かる条件はもっと難しいかもだけど。
「加護があるとギリギリだけど生き残る可能性はあると思う」
だからソロで行動できた。神殿の中ボス相手に生き残り町に辿り着けた。それも神による加護があってこそだと思えるし。単に運が良かっただけなら、そう何度もあるはずもない。
結果。三人が鍛えてください、となった。
僕と行動を供にすれば神の加護を授かる、なんて甘い考えも少しはあるようだけど。
それがあるうちは無理だと思うよ。住人への愛情と愛されること、それが最低条件だろうから。
正式にメンバーとなるにはギルドで手続きが必要らしい。
受付カウンターに行くと「タグを渡してください」とアイナに言われ、全員がタグを渡すと受け取り、カウンター後方の扉を開け中に入って行った。
「ヒロトって歳は?」
「え」
「いや、無理に聞こうとは思わないけど、若そうだなって」
先に言えば抵抗も少なかろうってことで、マサが「俺は二十歳で大学生」と言うと続いてヴィーラが「二十一歳で大学生」と言う。フラウは、と思って見ると「秘密」とか言ってるし。もしかして結構な年齢だったりして。
「言わないのかよ」
「言えばいいでしょ。隠す必要ないし」
二人に突っ込まれ「二十五」とか小声で言ってる。日本での職業は会社員だそうで。
そうなると僕に対して明かせとなった。
「十八歳で大学生です」
若いなあ、とか言われるけど二十歳だったら、そんなに差は無いでしょ。二十五歳から見れば若いかもしれないけど。
まあでも唯一の十代ってことで。
「あの、年齢って関係するんですか?」
「しないけどな」
「ここだと時間が限られるでしょ。オフ会で顔合わせすればね」
どうせオフ会で顔を合わせ世間話や攻略に関しても話すのだと。
そうか。オフ会なんてのもしてるんだ。
「今度、ヒロトの歓迎会もやりたいから」
「そうだね、一度参加しようよ」
「いろいろ聞きたいこともあるし」
「えっと、善処します」
何だそれ、と全員に突っ込まれてしまった。
少ししてアイナが扉を開け出てくると「お待たせしました。正式なメンバー手続きが終わりましたので」と言って、タグをカウンターの上に並べてる。
簡単に説明があるそうだ。僕以外の三人は分かっていても、僕は知らないだろうってことで。
「タグには各人のネームが刻まれています」
そしてグループ名も刻まれている。グループ名?
「りくりょくきょうしん、と言う名称がありますよ」
「りく?」
「戮力協心って四字熟語」
「ああ、力を合わせ心を一つに協力することですね」
なかなか優秀な学生だ、なんて感心されてるけど。言っても即座に分かる人が居なかったそうだ。
一応、有名私立大学だし苦労したけどね。




