Sid.24 新たに向かった先は神殿
夫婦らしき男女が一組。身形の良い男性が三人と女性一人。馬車内の座席はベンチシートで向き合うように設置。片側五人掛けで一方は四人が座り、もう一方は夫婦らしき男女が座ってる。
そして僕が入った瞬間、冷ややかな視線を向けられたわけで。
嫌われてるなあ。冒険者なんてクズしか居ない、そう思われてるんだろう。マリッカが連れ去られそうになった、とすでに噂になってるんだろうし。それをしたのが冒険者だってことも。助けたのも冒険者だけどね。それは伝わらないんだろう。
やれやれだ。
空きスペースのある夫婦側のシート。座りたいけど明らかに拒絶されてる。
冒険者って、どれだけ悪事を働いたのさ。
乗車を諦め歩くことにした。
徒歩で向かうと一時間。四時間枠で来てるけど、正味二時間もないなあ。
とりあえず神殿に向かうことに。
それなりに整備された街道を歩く。整備されたとは言っても凹凸はあるから、時々躓きそうになる。
草原や林を抜けひたすら歩くけど、一度だけ商人の馬車とすれ違うだけ。ほとんど往来がないようで。商人の馬車には護衛で冒険者が同行してた。護衛ってのもあるんだな。でも時間制限があると無理そうだけど、ああいう人たちはどうやってるんだろう。
商人は冒険者を嫌わないのか、それとも已む無くだろうか。後者のような気がする。
道中モンスターが出現することもあるから。
凡そ五十分も歩くと神殿らしき建物が視界に入る。
やっとだ。馬車なら三十分程度だったんだろうけど。
更に五分も歩くと神殿の正面に到着。巨大な石柱が多数並ぶ姿は、古代エジプトのルクソール神殿の如しだ。遺跡と違うのは屋根があって壁もあること。正面から見ると入り口は一か所だけ。外側を囲むように配置された石柱の後方に壁がある。窓もあるようだけどガラス窓じゃない。ただの四角い開口部。
まずは中へ入らないと何が出てくるか分からない。
意を決して内部に足を踏み入れると、両側に外と同じく巨大な石柱が並び、奥へと続いているようだ。壁の開口部から光が差し込み、思ったほど内部は暗くなかった。
モンスターの気配はないけど、慎重に歩みを進めるべきだろう。
ゆっくりと奥へ進む。
やっぱり居るよね。足を踏み入れ早々にモンスターと遭遇したけど、獅子の頭に六本足のカマドウマみたいな奴。大きさは体高二メートルはあるみたい。でも合成された生物の組み合わせが変。
で、跳ぶんだ。高さ八メートルくらいまで跳ね上がったか。
「ジーベンス!」
動きの速い奴や予測不能な動きをする奴は雷で倒すに限る。必ず当たるから。
直撃すると落下して床に叩き付けられてるし。死んだかと思ったら足が動いてるから、痺れてるだけと判断しエルドクロットで仕留めた。
爆発炎上し鎮火と同時に床に染み込むように消える。床には緑色の魔結晶が残されてるから拾っておく。
やっぱりレベルが上の相手だと雷だけじゃ倒しきれない。
先へ進むと人型の石像が三体。身長百八十センチくらいかな。手には槍を装備して突進してくるから、これもジーベンスで痺れさせエルドクロットで止めを。
今の時点で労せず倒せてるけど、この先も同じとは限らないわけで。
まっすぐ進むと突き当たりとなり、そこに扉があった。
開けて中へ入るか引き返すか。ソロだと不測の事態に対処不能。でもせっかく来たからと扉を引くけど開かない。押せば開くと気付いて押し開けた。
扉の先は右手の壁に開口部があり、光が差し込むことで中の様子が分かる。
五十畳くらいの部屋。中央奥に人型の石像が居て、手には杖を持っているようで、魔法が発動された。
巨大な炎の塊が高速で向かって来る。避けてもダメージを食らいそうだから、イースピラレを試してみると。
「でっか」
使えないと思っていた氷の柱が氷の壁となり炎の塊を防ぐ。
衝撃音が響き氷の壁が破壊されると、今度はこっちの番だ。ジーベンスで麻痺を狙う。発動すれば確実に命中するから、麻痺さえしてしまえば楽に倒せるわけで。
当然だけど直撃し腕だの足が痙攣しているようだ。
「エルドクロット」
爆発炎上。そして粉々になった石像は床に消えゆく。残るのは魔結晶で今回は青色だった。
石像を倒すと後方に扉が出現。押し開け中へ入ると、今度は長い廊下になっていて、右の壁側には小さな明かり取りの窓がある。窓を通って外に出るのは無理だな。
左の壁側には等間隔に扉が配置されてる。
手前の扉を押し開け中を確認するけど何も無し。暗い室内はがらんどう。少し緊張してたけど気が抜けた。
順に扉を開け内部を確認しながら進んでみることに。
三つ目の扉までは何も無かったけど、四つ目の扉を開けると中に何か居る。一歩、また一歩、足を踏み入れるけど部屋の奥に鎮座する物体。動かないみたいだ。
完全に室内に入り少し進むと扉が勢い閉じた。思わず振り向いてしまい扉に向かい、開けようとするも開かないし。これってボス部屋にある仕掛けみたいな。
振り返って部屋の奥に居る物体を見ると、高さ六メートルはある石像だ。右手に巨大な剣。左手に巨大な盾。あれが攻撃してきたら死ぬ。
まあ予想通りと言えばいいのか。ゆっくり右足が動き出すと、こっちに向かって来るし。
洒落にならない相手だ。
「エルドクロット!」
連射で牽制を試みるけど盾で防がれて効果なし。
次の瞬間、剣が飛んできて避けるも右腕を掠った。痛い。巨大で勢いがあったせいで捥げそうになったし。体勢は崩れ気味になるし。
「ジーベンス!」
雷を食らわせるも、盾に吸い込まれるように閃光が向かってしまい、完全に防がれてる。
あの盾が邪魔だ。でも手の打ちようがない。
後退りすると投げ飛ばされた剣にぶつかる。巨体を揺すりながら近付いてきて、盾で押し潰そうとしてきた。
床に叩き付けられる盾の衝撃。紙一重で躱すことはできたけど、叩き付けた盾を持ち上げると再び叩き付けてくる。あれで押し潰されたらミンチだ。
腰に提げてる剣なんて役に立ちそうにない。魔法で対処するしかないけど、盾で防がれると意味がないし。
何度も盾で潰そうとしてくる石像だけど、盾を床に叩き付けた瞬間に少し隙ができる。
その隙を見逃さずエルドクロットを連発。秒間六発の火炎弾が巨大な石像に直撃すると、さすがに少し仰け反り盾を構えたようだ。
暫し膠着状態。
で、次に何をするのかと思ったら、盾までぶん投げて来た。避けるも一辺が四メートルもある盾だ。車一台に等しい物体が掠めるだけで、体が風圧で持って行かれそうになった。
その隙に今度は手で押し潰そうとしてくる。避けるも体勢は崩れ倒れそうになると、そのまま水平に移動してきて体を薙ぎ払われた。
一瞬で十五メートルくらいは飛ばされ意識が飛びそうになる。ついでに衝撃により吐血だ。体内が損傷したんだろう、内側からの痛みが凄まじい。それでもじっとしていたら潰される。
苦しいけど向かって来る石像から距離を取るべく移動。
でも意味がないけどね。敵の一歩は僕の十歩だし。
使ってない魔法がある。
「スタートヴォーグ!」
ああ、これもレベル上昇で威力マシマシなんだ。ドカンと室内に響く派手な大音響と共に、向かって来ていた石像が仰向けに倒れてる。衝撃で室内も破壊されてるし。
この魔法を理解したよ。衝撃波だ。しかもレベルが上がると凶悪な程の衝撃を発する。
倒れたならば雷と爆炎で畳み掛けるべく、何度も魔法を食らわせると崩れ去った。
倒しきれた。咳き込むと血を吐く。意識を保つのも厳しいけど、それでも魔結晶を回収し部屋を出る。
めちゃきつい苦しい。痛い。
でも戻らないと。




