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Sid.22 各所でやたらと驚かれる

 轟音と閃光の直撃を受けたモンスターが倒れる。使った自分も音に驚いた。騒々しい魔法だなあ。


 身動きしない十本足の牛の化け物。

 死んだ?

 傍に行き様子を窺うと事切れてるし。即死って高レベルでの効果じゃなかったっけ?

 暫くすると体が地面に溶け込むように消失し、あとには五百円玉くらいの青い魔結晶。拾い上げポーチに仕舞っておく。

 周囲を見回すと、あ、そうだ。光る何かを探していたんだ。


 さっきは魔族に攻撃されて、でも結果的には良かったけど、当初の目的を忘れるところだった。

 今一度、地面も含め注意深く探してみるけど、光る何かは発見できず。

 見間違いか、ただの陽光の反射だったのか。

 泉を見ると飛び上がってくるクラゲ。今度は集団で向かって来るようで、ジーベンスを発動させ片っ端から落とす。ジーベンスって単射じゃないんだね。持続して発射できるし広範囲に広げることもできる。凄く便利だ。いろいろ試して分かった。

 そして。


「やっぱり死ぬ」


 一撃で葬れるなら極めて有効な魔法だ。相手のレベルが低いからかも、だけど。

 全部で三十九匹。大漁だなあ。拾い上げポーチに仕舞うけど、もう少しで容量オーバーだな。大き目のバッグか何か用意した方がいいのかも。

 この森も苦労せずに済むようになった。そろそろ他の場所へ移動した方がいいんだろう。

 そうなると四時間枠を取らないと。


「でも、現実世界で先立つものがない」


 現時点で月に二回しか来れない。バイト代が入れば回数は増えるけど。

 まあいいや。今はそれで仕方ない。現状で多くを望むべからずだ。


 森を出る際に、まあ次から次へと数で勝負して来る化け物だった。少数だと瞬殺されるから数で押してくるんだろう。でも敵じゃない。お陰でポーチがパンパンだ。

 魔族だったら、こっちが瞬殺されたと思うけど。

 さっきの彼はレベル換算で五十を軽く上回るんだろうな。敵対する気は一切無いけどね。話せば分かり合える相手って分かったし。


 街道に出るとモンスターとは遭遇せず、町に辿り着き門を開けてもらい街中へ。

 セヴェリさんが居て「怪我は、してないようだな」と言って「収穫はあったか?」なんて言われた。


「数が物凄くて」

「珍しいな。そんなに数は出ないって聞いてるんだが」

「全部で百は倒してますよ」


 開いた口が塞がらないって感じだ。


「全部倒したのか?」

「はい」

「相変わらず凄まじいな」


 なんか指先を見てる。


「それは? 行く時は無かったよな」


 細かいところまで見てるんだ。


「えっと」


 正直に話すべきか、それとも誤魔化すのが良いのか。でも何も悪いことはしてないし、魔族と人族は互いに不干渉と言っていた。アイテムをもらったとしても、だからと言って大騒ぎにはならないか。


「魔族と遭遇して、その時にもらいました」


 仰け反って驚いてる。口は開きっ放しだし目を剥いてるし。

 驚き過ぎだと思う。


「ほ、本当に魔族と接触したのか?」

「そうみたいです。角生えてましたし羽も」


 魔族からものをもらえた冒険者は居ないそうだ。多くは倒されて元の世界に送られている。

 倒されずともぼろぼろにされて、町に戻ってくるくらい。


「一体、何があった?」

「一度は殺されるかと思ったんですけど」


 経緯を話すと「神の加護か」と考え込む風だ。そう言えばアイナも言ってたっけ。でも噂レベルでしかなかったとも。

 でも魔族が言っていたなら真実だと思う。だから僕は解放されアイテムまでもらえた。


「全く……驚かないと決めたんだが、次々驚かせてくれる」


 なんか知らないが凄い奴だな、と言われギルドには報告しておけよ、だって。

 今後のケーススタディになり得るだろうからと。

 セヴェリさんと別れ先に教会へ向かうことに。


 教会に着くと開放された扉を抜け礼拝堂に入る。

 あれ? 今日は居ないのかな。静けさ漂う礼拝堂にはステンドグラスから、柔らかな日が差し込み中を優しく照らしている。

 まあ居ないなら居ないで祈りくらいは捧げておこう。祭壇まで歩みを進め跪き先日教えてもらった祈りを捧げる。

 祈りを捧げ終えると声が掛かった。


「ヒロトさん、いらしていたのですね」


 一時的に席を外していただけのようだ。離れた場所から笑顔を見せるマリッカが居て、傍に来ると「今日はもう森に行かれたのですか?」と聞かれる。


「魔族に襲撃されました」

「え」

「でも加護がどうので解放されました」

「あ、あの」


 驚愕の表情を見せるマリッカだ。


「何もされなかったのですか?」

「最初に麻痺させられたんですけど」


 経緯を話すと「ヒロトさんには、やはり神のご加護があるのですね」と言って、僕の手を握り胸元に引き寄せ「敬虔な方だと分かっていました」と。毎回胸元に引き寄せられる僕の手だけど、なんかヤバい部分に触れそうで触れない。絶妙な位置取りだ。

 じゃなくて、だからこそ加護を得られたのだと言う。他の冒険者とは明らかに違い、町の住人を蔑むことなく、むしろ遜る程だからこそ神も認めた。


「私も助けていただきました」


 この世界の住人を大切にしてくれる、そんな存在は稀なのだそうで。稀とか言われてもなあ。そこまで酷い人たちばっかりなのか。確かにマリッカを強引に連れ出そうとした、とんでもない奴らも居たけど。みんながみんな、そうだとは思えない。

 たまたま目に付くだけの可能性もあるし。悪さをする奴らってのは目立つものだ。真っ当な人ってのは意外と目立たない。だって、目立つような行動をしないから。

 まあいいや。でも、マリッカが崇拝するような目で見てくるとね、そんな御大層な存在じゃないんだよと思う。


「ヒロトさん。お時間は取れますか?」

「えっと、次回なら」


 少し残念そうな表情を見せるけど、あ、そうだ。


「えっと寄進を」

「あの、充分いただいてます」

「気持ちなんで」


 遠慮するけど無理に渡すと「神のご加護が永遠(とわ)に続きますように」って、そこまで行くと大袈裟になり過ぎるよね。

 一時的な加護はあってありがたいものだけど。


「次回、楽しみにお待ちしてます」


 そう言うと笑顔で手を振り送り出された。

 マリッカとの仲は進展しているのだろうか。次回分かるかな。


 教会を出てギルドに行きカウンターに向かうと、アイナが「なんか早いですね。森に行ってきたんですか?」と聞かれた。


「行ってきましたよ」


 言いながらポーチから魔結晶を取り出し、片っ端からカウンター上に並べると「ひええええ」とか言って仰け反ってるし。


「どどど、どうしたんです? この数」

「大量に襲って来たんで返り討ちです」

「あ、あの」

「近くの森だと虐殺になるんで、次回からは別の場所に行くことにします」


 労なく稼げるのは悪くはないけど、幾らモンスターだからと言って、無慈悲に狩るのは違うよね。

 それにレベルも上げにくくなってきてる。分相応な場所ってのもあると思うし。


「百を超えてますし、一つはアイエラデカポダのものじゃないですか?」

「アイ? なんです?」

「十本足の牛ですよ。倒したんですよね」

「楽に倒せました」


 またも「ひええええ」とか言ってるし。まあ分からなくもないけど。たぶん低レベルな冒険者にとって、極めて危険なモンスターなんだと思うから。

 魔族からもらったアイテムのお陰で楽に倒せたけどね。


「ヒロトさん」

「なんです?」

「その指に嵌まってる」

「ああ、これですか」


 ここでも経緯を話すと倒れそうになるアイナだった。

 僕に向き直ると「ヒロトさん。二号でいいのでもらってください」とか言い出すし。二号も三号も無いんだってば。

 この世界って。


「重婚できるんですか?」

「できません。だから愛人でも」

「じゃあ無しです」

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