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Sid.18 誘拐未遂犯相手に対人戦

 金属製の胸当てと籠手だ。素材は鉄かな。


「プレートアーマーだが調整が必要だ。少し時間をもらう」


 籠手の方も必要であれば調整するそうだけど。

 金属製ってなんか邪魔そうだな。


「あの、ガントレットなんですが革製の物は」

「革製? 充分な防御は期待できないぞ」


 とは言え金属製でも大差はないらしい。装甲を厚くすると重くて動かしづらく、薄くすると皮と変わりがなくなってしまう。モンスターの中には噛み付く奴も居て、噛まれた際に金属では食い込んでしまい、治療をする際、外すのに難儀することになる。

 じゃあ、革製の方がいいよね。


「革製で」

「じゃあ、こっちだな」


 そう言って用意したのは革手袋の如し。まあいいや。防具なんて所詮は気休めだろうから。

 サイズだけ合わせてみて問題の無いものを買う。


「胸当てが十六ベリキ、調整費用で二ベリキ。ガントレットは二ベリキ二スレブロ」


 十二万八千円に一万六千円と一万六千八百円。

 剣と合わせて四十一万六千八百円。凄い額になる。この額を手形に記載して振り出しておけばいい。

 単位を円にしないようにしておかないと。五十二ベリキ二スレブロだな。

 稼げていなかったら安い剣と防具で冒険してたのか。


「あとな」

「なんです?」

「予備の武器もあった方がいいぞ」

「魔法ありますけど」


 魔法が通じない相手も居る。決して万能じゃないし、メインウェポンを破損した場合に備え、サブウェポンもあった方が良いのだそうだ。

 言ってることは分かるんだけど。まあ予備にあってもいいのか。


「邪魔にならないものがあれば」

「そこでだ、ダガーだな」


 だよね。拳銃とかあれば、そっちが良かったけど。


「じゃあそれも買います」


 幾つかカウンターの上に置かれる形状の異なる短剣。

 自分が使いやすいものが良いのは確かだけど、どれが使いやすいかなんて分からない。

 手に取って説明はしてくれるようだ。


「これがミゼリコリド、こっちがスティレット、チンクエデア、プニャルだ」


 それぞれの特徴も説明してくれたけど、装飾やデザイン性でスティレットを選ぶ。

 ダガーとひと口に言っても種類は豊富なんだな。でも基本は刺すだけみたいだけど。ナイフなら切るも刺すもあると思う。まあなんでもいいや。


「いいんだな?」

「はい」

「六ベリキだが全額払えるのか?」

「大丈夫です」


 あとで手形を持って来ると言って店をあとにする。

 総額五十八ベリキ二スレブロ。豪快に使うことになるけど、地球に持って行けないから貯めてても意味がない。

 安全に冒険ができるなら、その方がいいよね。

 ギルドに戻り手形を用意し金額を記載。それを持って武器屋に向かい渡しておく。


「不渡りとか無いだろうな?」

「ギルドに入金済みなのでギルドが踏み倒さない限りは」

「じゃあ一週間後に取りに来い」


 一週間後か。丁度いいかも。

 武器屋を出て今度は教会へ向かう。寄進するためだけどマリッカにも会いたいし。


 白い尖塔の教会。礼拝堂に入ろうとしたら中から声が聞こえて来た。なんか揉めていそうな。

 少し覗き込むと冒険者風の男が三人と、マリッカが何やら言い争っている感じだ。

 聞き耳立てるまでもない男たちの声。大声で威嚇してるから響くんだよ。対してマリッカは声が小さく聴き取りにくい。萎縮してるんだろうと思う。

 少し様子を窺う。状況把握をしたいから。

 で、聞いていると。


「回復できるんだろ。俺らの仲間になれよ」

「まあ死んでも責任は取れないけどな」

「一緒に行こうぜ。俺らだけだと華やかさがなくてさあ」


 無理やり連れ出そうとしてるのか。ふざけてる。僕らと違って彼女は下手すれば死ぬ。それを理解しててなのだろうか。

 本当に冒険者ってのは住人に対して、ろくでもないことをしてるんだ。これじゃあ評判も悪くなるし嫌われもする。

 どうしよう。僕のレベルで排除できるのかどうか。あの手の手合いって確実に暴力に訴えてくるよね。戦闘になった場合に周囲も巻き込みかねないし。


 でもマリッカを放置できない。

 足を踏み入れ「お祈りに来たんですけど」と大声で叫ぶと、三人とマリッカが入り口に立つ僕を見る。


「なんだお前」

「冒険者かよ」

「今取り込み中なんだわ、あとにしてくれる?」


 腹立ってきた。

 マリッカを見ると怖がってるのが分かる。脅されて連れ出されそうだし、力で敵うはずもないし。


「寄進したいのとお祈りしたいんで、席を外してくれませんか?」

「あとにしろって言ったぞ」

「あとにしたらシスターが居なくなるでしょ」

「なんだお前、シスターに惚れてんのか?」


 そうかもね。言わないけど。

 素直に引いてくれそうにない。相手の実力は不明。もしレベルが三十とかだと僕が死ぬ。死なないけど、でも破壊されて作り直しになる。

 見た感じだと強そうなんだよね。僕より遥かに。

 でも引く気はない。マリッカを冒険に連れ出されたら死ぬ可能性があるんだよ。こいつらだって分かってるだろうに。


「そうかそうか、こんな原始人に惚れてんのか」

「ならば、あとで死体で良ければくれてやるよ」


 駄目だ。

 プレイヤーキルはご法度だけど。逆に自分がキルされるかも。でもその時はその時だ。現地スタッフに何とかしてもらおう。

 剣を抜くと三人が警戒し剣を抜く奴が二人、杖をかざす奴が一人居る。剣士系が二人と魔法使いか。

 三人ともマリッカを背に僕の方を向いてる。魔法を使うとマリッカが巻き添えになるから剣で対処するしかないな。


「やる気か?」

「死んでも文句言うなよ」

「ステンスピュート!」


 魔法を放ってきた。でも石の槍みたいで速度は時速百五十キロ程度。同時に二人が斬り掛かって来た。

 バックステップで教会の外に出て、飛んでくる石の槍を叩き落とし、迎え撃つべく剣を腰の辺りに構え切っ先を敵に向ける。

 教会から真っ先に出て来た剣士だけど、動きは決して良いとは思えない。もしかしてレベルが低いのかも。

 僕を見て上段から斬り掛かるけど、サイドステップで躱し腹目掛けて剣を突き立てる。


「ぐえっ!」


 まず一匹。

 次いで出て来た剣士にはしゃがんで足払い。体勢を崩したところで足に剣を突き立てた。


「いっでえぇ!」


 最後に魔法使いだけど出てきた瞬間、パンチを食らわせると後方に倒れ込んだ。

 こいつら弱いな。

 僕を見る剣士二人だけど「おおお前、なんなんだよ」と狼狽えてるようだ。魔法使いはと思って見ると顔面が少々拉げてる。打撃にはめっぽう弱そうだ。


「痛いか?」

「い、いてえに決まってんだろ」

「じゃあ楽にしてあげようか」


 首を刎ねればそれで終わる、と言うと「勘弁してくれ」と泣きが入った。


「レベルは幾つ?」


 問い掛けても答えないようだから、腕に剣先を刺すと悲鳴を上げ「十五」とか言ってる。

 十五で、こんなに弱いの?


「僕はレベル二十一でスカラーBだけど」


 実力差を理解したようでギルドに一緒に行き、今回の報告をするとなると観念したようだ。

 とりあえずギルドに行くとアイナが驚いてる。


「あの、どうしたんです?」

「こいつらが誘拐しようとしたんで」

「え、誰をです?」

「シスター」


 スタッフを呼んで、と言うとカウンター後方の扉を開け、中に入り先に出て来たのはスタッフのようだ。


「えっと、ヒロトさんでしたね」

「はい。この三人ですけど」


 引き渡すんだけど手枷を嵌められたようだ。スタッフから「この手枷は能力を封じます。幼児レベルまで力が減少しますから」だそうだ。

 なるほど、拘束する道具も魔法の効果があるんだ。

 待機室で事情聴取され僕が解放されたのは三十分後になってしまった。


「三十分延長しますか?」

「できるんですか?」

「特例です。通常はできません」

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