Sid.17 武器と防具を買うことに
秒間六発だと相当な速射性を見せる感じだ。同時に弾速も上昇し次々火炎弾が命中する。そして爆ぜる。レベルが上がったエルドクロットって、火の玉でも火炎弾でもないな。小型のミサイルみたいだ。推進装置付きの爆弾。
ここにきて極めて実用性の高い魔法になった。良く育ったものだ。
「分かってたら泉の上で倒さなかったのに」
使ってから理解する状態。
まあいいや。どうせまた出てくるだろうし。
少し待っていると泉から現れる空飛ぶクラゲだ。陸側に上がったらエルドクロットで倒す。
数なんて最早関係ないな。敵が電気を放つ前に次々爆ぜるし。そして魔結晶を落として行く。
大漁だ。
ある程度倒すとクラゲの出現が収まり静けさを取り戻す。
落ちた魔結晶を拾い集めポーチに収納。全部で十三個も集まった。懐が潤うだろうから装備を整えよう。それと教会に寄進するのも忘れないように。
マリッカの笑顔を見ると癒されるし。喜んでもらえると僕も嬉しい。
泉を越えた先で光る何かがある。
なんだろう。
こっちに来てから一時間と二十分くらいかな。ここからさらに探索するとなると、戻るのに時間が足りなくなりそうだ。
ギルドで時間食ったから探索に時間を割けない。アイナが勿体付けるし絡むし。
好かれてるってことで悪い気はしないんだけど、時間に余裕がある時にして欲しい。
仕方ない。戻ろう。
次に来た際は先へ進むことに。
来た道を戻ると同じ化け物と遭遇し片っ端から倒して森を出る。ここまでの道中で出現する化け物は敵じゃなくなってるから。
ここの森がどの程度の広さなのか。場合によっては四時間枠を取って、訪れる必要がありそうだ。
町に戻るとセヴェリさんが「今回は無傷じゃないか」とか言ってる。
「同じ場所をうろうろしてるので」
「慣れたか?」
「そうですね。次はもう少し深い場所に行きたいです」
「怪我するなよ」
善処します、と言ってギルドに向かう。
セヴェリさんやトゥオモさんと打ち解けた感じになった気がする。互いに毎回あいさつして軽く会話も交わすし。笑顔も出るくらいだからね。
他の冒険者も蔑まず話しをしてみればいいのに。いい人たちだと思うんだけどな。
ギルドに入ると「あ、戻って来たんですね」と愛想を振りまくアイナが居る。
カウンターに向かい魔結晶を出すと、唖然とした表情を見せ「ヒロトさん。ベテラン並ですよ」だって。
「近くの森ですよね」
「そうだと思います」
「中堅でも四人くらいで攻略するんですが」
「現時点でソロです」
あ、そうだ。
「メンバーの応募って」
「まだ無いですよ」
魔結晶の検品とでも言えばいいのか、チェックが済むと「金額が凄いので嵩張りますけど」と言われる。
実際に目の前に積まれると確かに。ポーチに収まる量じゃないな。これが紙幣ならまだしも硬貨だから重いし嵩張る。装備品を買えば無くなるんだろうけど、そこに持っていくのも面倒な量になってる。そもそも大量のお金を持ち歩くのはリスクが高い。
「手形を振り出しますか?」
「手形?」
「ヒロトさんの世界にあると思うんですが」
「ああ、ですね」
二者間取引として約束手形の振り出しを依頼すればいいのか。
この世界にも手形取引なんてあるんだ。もしかして地球から決済システムを持ち込んだのかな。とは言え中世イタリアではすでにあったシステムだけどね。メディチ家だっけか。それで凡そ三百年の栄華を誇った。日本でも江戸時代からあったし。二〇二六年以降に紙の手形は廃止になったけどね。代わりとして「でんさい」に置き換わってる。電子記録債権が正式名称だけど。
「じゃあお金は預かっていてください。手形の振り出しをしたいんで」
「承りますね。額面はどうしますか?」
「えっと、相場が分からないんですけど」
「何を買うんです?」
武器や防具と説明すると「あたしもよく分からないので、店頭で確認した方が」と言われた。
先に店頭で確認し金額が決まれば、額面をそれに合わせれば済む。
因みに手数料が発生すると言うけど、額面に対して三パーセントだそうだ。ギルドもきちんと商売してるなあ。まあ右から左ってわけにもいかないよね。
それと当座預金口座も開設する必要があるとか。その辺は元の世界と同じだ。つまり地球から決済システムを持ち込んだ。ギルドが銀行の役割も果たしてるようで。
システムが理解できれば、あとは買い物をしたいけど。
「武器とか防具を売ってるお店って」
「ギルドを出て左に進むとありますよ」
剣と盾が描かれた看板が出てるから見れば分かるそうだ。
と言うことでギルドを出て見てみることに。
少し歩くと確かに剣と盾の看板が目に入る。
木造の建物で小さな窓が扉を挟んで一つずつ。二階建てかな。二階部分は住居になってるのかも。
扉を開けると右側の壁に飾られる多数の剣。左側には盾や防具が並んでる。
正面にカウンターがあって男性が居て目が合った。
「冒険者だな?」
「あ、はい」
「初心者か?」
「いえ。一応スカラーBです」
異世界の連中は異常な成長速度を持ってやがる、なんて言ってカウンターに肘をついてるし。
冒険者の態度が悪いからだろうけど、ここでも歓迎される感じはないなあ。
「あの、剣とか防具が欲しいんですけど、どのくらいするのか分からないんで」
「見りゃ分かるだろ。値札があるんだから」
確かに。
木製の小さな値札。そこに金額の記載がある。カウンターの奥の壁にも剣や防具はあるけど、店内の壁に掛かる剣は極端に高額じゃないのか。
安価なロングソードで六ベリキ、つまり四万八千円くらい。脆そうだ。
少し上質なロングソードだと十ベリキ。八万円。うーん。あまり上質な感じがしない。手持ちのお金から考えれば、カウンターの奥にある剣、そっちの方が気になるかも。
「あの、そこの剣を見せてもらえますか?」
「は?」
「お金ならあるので」
「お前、腕は確かなんだろうな?」
そうじゃなくて、壊れにくい剣が欲しいだけなんだけどな。安価な剣なんてすぐ折れるでしょ。一人で化け物の相手をしてるから、剣が壊れると致命的なんだし。
それを説明すると。
「ソロでやってんのか?」
「そうです」
「仲間は?」
「まだ集まりません」
一人で森に入って無数のモンスターを相手に、生きて戻って来てると理解したようで。
腕組みして「うーん」とか唸ってるし。
冒険者の質が悪くて売りたくないのかなあ。相当嫌われてるんだろうとは思うけど。異世界の冒険者相手に商売したくないのかもしれない。
「あの、すみません。無理なら仕方ないんで出直します」
駄目かも。嫌われ過ぎてる。
店を出ようとしたら「ちょっと待て」と言われた。
「お前に見る目があるとは思えんが、腕は確かなようだしな」
これを使え、と言って壁に飾ってある一振りの剣をカウンターに置いてる。
ロングソードではあるけど見た目は上質な感じだ。
「持って構えてみろ」
「あ、はい」
剣を手にしてオックスの構えを取る。剣を頭の横に持ち剣先を相手に向ける構えだ。もちろん足さばきも注意してる。
「悪くはないな。実戦経験は豊富そうだ」
持って行けと。
「あの、相談なんですが」
「なんだ?」
「防具も欲しいんで手形でもいいですか?」
暫し考えてるようだけど「ギルドにあるんだな?」と言われ、預けてあるから手形を持ち込めば換金できると言っておいた。
気になる値段だけどロングソードは三十二ベリキ。二十五万六千円也。金貨は扱いに困るから不要だそうで。
最高品質ではないけど、中堅冒険者が使うには良いものらしい。
「防具はこれを使え」
ハーフプレートアーマーとガントレットを出してきた。




