表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/61

Sid.13 空飛ぶクラゲに苦戦する

 アイナの嫉妬かもしれない、なんて都合よく解釈する僕が居る。

 確かに教会の人だから誰彼憚らず愛想よく振舞うんだろうけど、でも、それだけじゃない気もするんだよね。

 だって、気の無い相手に抱き着くのかって。

 ぼっちを歩んできたせいで免疫がない、その可能性もあるけど。堕とそうとしてるってのも無くは無いだろうしなあ。


 ギルドを出て門に向かうと、セヴェリさんとトゥオモさんが居て「治ったのか。良かったな」と言ってくれる。

 心配してくれていたようだけど、この体が壊れても死なないし。所詮は借り物だから。でも心配してくれること自体は嬉しい。


「ギルドまで運んでくれたんですよね」

「動けなかっただろ。当然だな」

「ありがとうございます」

「やっぱりヒロトだな。礼儀がしっかりしてる」


 今日も森に行くのか聞かれ、少し探索してみると言って町を出る。

 前みたいなことにならないよう、充分気を付けるんだぞ、と言われ送り出された。

 いい人たちだ。ちょっと強面なんだけど。


 街道を歩くとスライムが出てくるけど、もう敵じゃないんだよね。軽く捻って先へ進み森へ入ると早々に襲い掛かる奴が居る。コバロルムもすでに敵じゃない。軽くいなして処理すると赤い魔結晶を落とす。

 拾ってポーチに収め前回倒された場所へ向かう。


「居るなあ」


 前は気付けなかった。木に擬態するモンスター。トレントとか言う呼び名じゃないのは現地呼びだからで。僕らの世界であればトレントになるんだろうけど。

 剣で薙ぐには相手が大きすぎる。エルドクロットは大惨事。もう少し使い勝手のいい魔法が欲しい。

 たった二つしか無いんだよ。魔法。


「そうだ。練習してみよう」


 どうせその場から動けないモンスターだ。火加減の練習相手に丁度いいだろう。

 剣先を向け小さな炎の玉をイメージし、高速で打ち出すとサイズは小さくなってる。それと速度も更に速くなったようで、一瞬で命中すると爆発炎上するわけで。

 この爆発まではいいとして炎上するから、他に燃え移って延焼する羽目になる。これを防がないと使い勝手が悪すぎるんだよ。


 結局イースピラレで延焼を防ぎ鎮火させる。

 なんかもう少しで掴めそうだけど、延焼しない方法を考えないと。


「エルドクロット」


 一発放てば樹木のモンスターなんてすぐ倒せる。前は気付けなかったから重傷を負っただけで。

 倒したら魔結晶は拾ってポーチに仕舞う。

 あ、そうだ。装備を上質なものにしたい。今の装備は初期装備で貧弱だから。


 先へと進み前回倒された場所に出ると、復活するんだよね、ゲームと同じく。

 片っ端から燃やして氷で冷やして、全部処理すると魔結晶を拾うんだけど、前回の分はやっぱり無くなってる。

 誰かが拾ったのかモンスターが食べたとか。拾った人は運がいい。戦わずして成果だけを得てるんだから。


 ちょっとため息が出た。


 少し歩みを進めるとムカデ蛇に遭遇し、これも楽に排除してさらに進む。


「ああ、こんな場所があるんだ」


 深く踏み入り木々が無くなり視界が開けると、青く澄んだ水を湛える泉が眼前に現れた。

 涼しげな色合い。ほとんど波立たないことで、水面に反射する森の木々。静寂が支配してるような。


 暫し泉を見ていると水中から飛び出す何かが居る。

 円盤状の何かで半透明な体はクラゲのようでもある。淡水性のクラゲ?

 でもクラゲって飛ばないよね。円盤状で縁をひらひらさせてる。と思って見ていたら勢いこっちに向かって飛んできた。回転しながら飛んでくる。

 慌てて剣を構え向かって来るクラゲを叩き斬ろうとすると。


「あ、避けた」


 クラゲの癖に。

 避けて後方に進むけど、くるっと円を描き戻って来た。今度は斬る。


「また避けた」


 近付くまでは目で追える程度の速度。でも躱す際の速度は尋常じゃない。視界から一瞬消えて後方に居るんだもん。

 またも近付いてくるから魔法を、と思ったら向こうも何かを放ってきた。しかも光ったと思ったら体が痺れまくった。


「あ、ががが」


 電気だ。放電攻撃してくる。

 意外と厄介な相手だ。躱す際の速度が速く対処しきれてない。泉の上でホバリングしてるし。

 そして向かって来るのと同時に光が発生、痺れて暫し動けず。

 くっそ、空飛ぶ電気クラゲって、なんだよ。


「エルドクロット」


 水の上、そして樹木じゃないから炎系の魔法でも延焼しない。遠慮なく連射するけど上手く避けてるし。時に泉に潜ってしまうし。

 でも、徐々にだけど避ける方向が分かってきた。

 もう一度、今度は良く見極めて。


「エルドクロット」


 連射が秒間五発になってるから、火炎弾の間隔が短く数を放てる。一回に放てる数も増えたことで最大二十発。

 対空砲火を浴びせると、ついには当たって爆発炎上。

 でも泉の上。飛び散るクラゲが落とす魔結晶は泉の中へ。


「意味がない」


 なんか青色してた。少し大きい感じもしたし。拾いに、と思っても泉自体は深そうだし。装備を纏っていたら溺れかねない。

 諦めて立ち去ろうとしたら第二弾だ。


「なんで数が増えるのかなあ」


 最初は一匹。今は三匹。しかも矢継ぎ早に電気を食らわせてくるから、痺れてまともに体が動かないし。

 魔法って両手で放てないのかな。

 試す価値はある、ってことで剣を収め両手フリー。


「エルドクロット!」


 両手から放つことを強くイメージして、どうせだから追尾してくれると、なんて考える。

 しっかり両手から放たれる火炎弾だ。でも追尾はしないんだね。

 目まぐるしく移動する三匹のクラゲを追い、とにかく魔法を放ち続けると、偶然とはいえ当たって弾け飛ぶ。

 一匹は泉の上で、もう二匹は陸上で弾けたことで、魔結晶を確保できた。


「手こずらせてくれる」


 散々痺れさせられ苦労したけど、こうして魔結晶を手に入れられればね。

 まだ攻撃力で言えば低いから何とかなるけど、これが強力な電撃だったら下手すれば死んでるかも。


「戻ろう」


 今日はリハビリみたいなものだし、目的は治療費の支払いだったから。

 でも戻ろうとすると足がもつれる。腕も痺れが残っているのか、帰路でコバロルムを迎え撃つ際に剣を落とした。

 何度も電撃を食らったせいかもしれない。治るのかな、これ。


 徐々に痙攣が酷くなりながらも町に戻ると、セヴェリさんが「今日は早いな」と言ってる。

 話をしようとして他にも影響があると気付いた。


「きょ、きょ、今日は、り、りはりは、リハ、あ、れ?」

「おい、どうした?」

「な、なな、んか、しび」

「もしかしてイレクトリコスにやられたか?」


 それが何かは分からないけど、舌も痺れまくっていて喋るのも困難だ。

 とりあえず首肯すると「教会で治療できるぞ、治してもらうといい」と言われた。


「あ、ありり、が、と」

「無理に話そうとするな」


 頷くと「さっさと行ってこい」と言われ背中を押される。

 痺れが増す中、上手く動かない足を引き摺り、教会まで辿り着くと庭先にマリッカが居た。

 僕に気付いて「どうしたのですか? あの、顔が歪んでます」と言われる。

 自分の顔がどうなってるかなんて分からないけど、他人から見て分かる程度に歪んでるってことか。


「中へどうぞ。すぐ治療します」


 聖堂内に案内されベンチに腰掛けさせられ、両肩に手を宛てがうと「アフェレシ・フォルティシス」と唱え、体から痺れが抜ける感覚になった。


「もう大丈夫だと思いますが」

「あ、えっと。大丈夫みたいです」

「良かったです」


 微笑むマリッカが愛らしい。


「また無理してきたのですね」


 そう言って肩に手を回し抱き着いてくる。なんかボディタッチの多い人だな。


「聞きましたよ。先日のこと」


 ギルドに担ぎ込まれたことで気が気じゃなかったそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ