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Sid.11 森林はやはり危険だった

 門衛のセヴェリさんに感心された。たった数日でレベルが十に至り、ランクもスカラーCになったことで。トゥオモさんも同じように感心してるし。


「他の冒険者とは何か違うと思ったんだよな」

「はあ」

「横柄で見下す奴らばっかりでな」


 とにかく冒険者の多くは態度が悪い。人として認識されてないと感じることもあるそうで。正解。間違いなくNPCくらいの存在としか認識してないよね。

 あくまでセヴェリさんとトゥオモさんの言葉通りなら、だけど。

 町の住人を殺害したってことも含めれば、増長した存在が居るのは確かだろう。


「ヒロトは言葉も態度も丁寧だしな」

「レベルが上がっても偉ぶらない」


 だから気さくに話もできるし期待もするそうで。


「変わらないでくれよ」

「そのままのヒロトがいいんだよ」

「あの、善処します」


 笑ってるし。


「森に行くのか?」

「そうです」

「気をつけてくれよ」

「そうだぞ。期待の新人だからな」


 笑顔で見送られ門を出るけど、閉じるまで手を振ってくれていた。

 外見はともかく中身は日本人だからかなあ。外面の良さとかで良い印象を抱かれるのって。日本人以外って現地に馴染もうとしないから、何かとトラブルになりやすそうだ。

 どこに行っても自分は自分。郷に入れば郷に従う、なんて考えも無いだろうし。

 ましてや現地の人より遥かに力を得てしまうとね。


 でも、日本人だからってのは違うと後々気付く。


 街道を進み森へと入る。

 鬱蒼と茂る森の中を移動していると、後ろから襲い掛かるコバロルムが三匹。もうさすがに慣れた。

 前後から来る場合は前の敵をまず倒し、振り向きざまに剣を薙げば勝手に自滅してくれる。頭で思い描き行動に移すけど、ダッシュの瞬間景色が歪む。前より足も速くなってるみたいで、あっという間に敵との距離が詰まり、剣が突き刺さると同時に反対側へすり抜けた。

 一瞬で二枚おろし状態に。


「え?」


 疑問を抱く間もなく後頭部に鈍い痛みが生じるから、反射的に剣で薙ぐと今度は上下に分離した。


「あれ?」


 もう一匹が木の上から降下してきて、後頭部に攻撃しようとするから、剣を上に向けると勝手に刺さり二枚におろされてる。

 どうやらレベル上昇で身体能力も大幅に向上しているようだ。剣速も向上してるから簡単に敵が真っ二つになるのだろう。

 自分自身の変化に驚いたけど。

 三匹を倒し、さらに奥へと進むと地べたを這いずる何か。


「どこだ?」


 下草の合間をすり抜ける存在が居て、虎視眈々と狙っているような。

 すり抜ける、ってことは蛇のような存在なのか。


 違った。

 ムカデのような巨大モンスター。違うのは虫じゃなく爬虫類の如き体と脚。鱗に覆われている点で硬そうだけど。


「エルドクロット!」


 最大十連発で発射すべく剣先を向け攻撃。

 最初の一発目にまたも自分が驚いた。


「でかっ」


 火の玉のサイズが五十センチくらいになってる。速度もあって直撃すると、ドカンドカンと爆発炎上状態に。これにも驚かされた。

 それを十連発だからだろうけど、何やら弾け飛んでいるようで、周囲に火の粉が撒き散らされてるし。

 森林火災を引き起こしそうで、攻撃をやめるとバラバラになった化け物。

 火の粉を消すべくイースピラレを使い、周囲に氷の柱を発生させようと思ったら、こっちもまた地面から氷の柱が次々吹き上がるような。


「何これ……」


 消火はされたけど氷の壁が至る所に。

 魔法って単純に威力が増すだけで調整できないの?


「こんな威力だと災害になる」


 暫しその場で思案し次に遭遇した存在には、加減して放つことを意識してみることにした。

 魔結晶は緑色で十円玉くらいの大きさ。ポーチに仕舞い込み移動する。

 周囲に気を配りつつ移動すると、八本足の蛇みたいな奴、オクタプレヴロと遭遇した。

 手加減してやられたら世話がない。


「エルドクロット!」


 放ってから後悔。


「加減すれば良かった」


 またも森林火災に至りそうになりイースピラレで鎮火。

 前回苦戦した相手だったのに爆発の際、周囲に飛び散る有様だ。魔結晶はどこかと探すと、木の根っこの部分に挟まっていたから、傍に行き拾うんだけど。


「いって!」


 木がモンスター。

 ファンタジーの定番は、この世界でもあるんだ。枝を振り回され弾き飛ばされた。一瞬、体が浮いて次に地面に叩き付けられる。その際に背中を打ち付け息を吐き出す。殴られた脇腹と打ち付けた背中に鈍い痛み。

 結構な衝撃が来たけど起き上がらないと追撃される。

 体を起こし攻撃してきた存在を見ると、派手に枝葉を揺すり振り回してるけど。


「なんだ。届かないのか」


 その場から動けないし届かない。攻撃の範囲外に居ればダメージも食らわない。

 《《それ》》と気付いていれば苦も無く倒せそうだ。


「エルドクロット」


 剣先を向け火の玉、いや火炎弾を放つと木だからね。実によく燃える。

 鎮火すべく氷の壁を発生させると、地面から生える氷の柱が幹をバラバラに。あっさり倒されてくれた。

 油断さえしなければ問題無い相手だ。炭化した幹の破片の合間に、青く光る一円玉くらいの魔結晶があった。

 拾ってポーチに仕舞っておく。


 甘かった。

 もう少しだけ奥に進もうと思って移動すると。


「うがっ!」


 まただよ。


「ぐえっ」


 まじで?


「ごふっ、げっ、がっ、げふっ!」


 き、きりが無い。

 まさか一本だけじゃなく周りにあった木、十本以上が全部モンスター。

 最初に殴られて飛ばされると、飛ばされた先でモンスターに殴り飛ばされ、またその先もモンスター。そこでまたも殴り飛ばされと、まるでピンボールのポップバンパーに弾かれるボール状態だ。次々弾かれ飛ばされる。

 全身に衝撃があって呼吸しづらいし、何より体勢を立て直せない。


 ヤバい。今度こそ死ぬ。

 頭も含め全身打撲。


 剣は落としてしまった。何とか手をかざし魔法を。


「え、ぐっ」


 声が。


「エル! ぐぼっ」


 駄目だ、魔法名を唱える暇が。

 イメージだけで発動するのか? とにかく体が破損する前に何とかしないと。レベル上昇のお陰で壊れにくくはなったんだろう。でも攻撃を受け続ければ壊れる。

 すでに全身が痛すぎる。骨折までするとお金が掛かるだろうし。


 イメージだ。

 炎を飛ばせ。


 頭を打ったようで一瞬意識が飛びかけたけど、それでも炎を飛ばすイメージをすると。

 至る所で爆発音が発生し攻撃が止んだ。


 バチバチと音がする。うつ伏せになっていることで、周囲の状況把握ができないから、起き上がろうとするけど。

 思わず呻き声が漏れ出た。

 骨折してる。腕だ。頭を守ろうとして腕で防御したせいで結果、折れてしまったんだろう。


 体を横に向けると燃え盛る木々。森林火災で炎上しそうだ。


「イースピラレ」


 氷の柱を多数発生させ延焼を防ぐと、燃え広がる勢いが衰え鎮火した。

 イースピラレって、なんで攻撃に使えないのか理解したよ。エルドクロットは放置すると大惨事。火消しに必要な魔法なんだね。

 痛い。

 全身が痛い。鈍い痛みと刺すような痛み。よく意識を保っていられる。


 戻らないと。

 右腕は折れたみたいだけど左腕は打撲だけ。左腕を使い体を起こし立ち上がるけど、立ち上がるだけでも足や腰、胸元とか背中とかとにかく痛い。

 でも、こんな場所に居ても怪我は治らない。


 周囲を見て魔結晶が散らばってるのを確認。でも拾い集める気力もない。剣だけは持って帰りたいから拾って腰に差しておく。

 他は無視して森の出口に向かって移動するけど、出るんだよね、こういう時に限って。


 魔法で排除して進むけど勿体ないなあ、魔結晶。

 足を引き摺り痛む腕を庇いながら、何度かモンスターを相手にし森を抜け出せたようだ。


 町まで辿り着くと痛みから膝を突いてしまう。

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