Sid.112 転送アイテムを入手する
地上へ戻る際に考えていた。僕がアイテムを背負えばいいだけじゃないのかと。剣で戦闘をすることが現時点でないのだから、長剣を背負ってる必要はないわけで。
短剣を二本。あとは普通の剣を腰に提げていれば。
七階層でもレベル三十超えでチャレンジする場所。レベル六十がチャレンジする階層って、あるのかないのか不明だけど、もっともっと深い場所だと思う。
だったら戦闘が厳しくなる階層までは、僕が背負っていればいいわけで。
地上に出た際に提案してみると。
「戦闘になった時に邪魔にならないか?」
「近接戦闘しないなら関係無いです」
「重さは大丈夫なの?」
「百キロもあるなら無理かもしれないですけど」
重量次第。実際に持ってみたわけじゃない。重さも教えてくれてないし。ただアイナでも持つことができていたってことは、意外と重量は大したことがないかもしれない。単に嵩張るってだけで。
「まあ一応、俺の知ってる奴に声掛けてみる」
「あたしも声は掛けてみるけど期待はしないでね」
ユズはと言えば「遊んでる暇はないです」だそうで。ユズは推薦だから多少余裕はある。友人たちは一般選抜だから遊んでる余裕はない。
誘いようがないそうで。
「あ、でもぉ」
「なんです?」
「卒業して就職する子も居ます」
とは言え異世界で荷物持ちをする気はないだろうと。せっかく異世界に行くのであれば、華々しく活躍したいだろうからだそうで。
まあそうだよね。荷物持ちなんて地味すぎて楽しくない。しかも盾代わりとか攻撃受けるだけじゃ嫌になりそうだし。
ギルドに着くとアイナにあいさつを済ませ、待機室に向かいレベルの確認をする。
マサとフラウとヴィーラはレベル四十になった。意外と上昇率が少ない気がするけど、三人とも今の階層では過剰戦力だからだろう。
三人とも新たな魔法やスキルを覚えられるそうだ。
ユズは三十四まで上がっていた。一つ魔法を覚えられる。
「ヒロトさんは確認しないのですか?」
「一つくらいですよね、上がっても」
「確かにレベル六十だと前例がないので」
でも確認しておいて損はないと言われる。上がっていない前提でも試すことに。
結果は。
「レベル六十二」
上がったところで魔法は覚えない。少し強くなるくらいで。あの流体モンスターに対抗するには力不足だと思うし。レベル七十くらいは必要かもしれない。
やっぱりソロでの行動じゃないから、どうしても効率が悪くなる。でも自分だけレベルが高すぎても仲間に悪いし。みんなも引き上げておかないと。
待機室をあとにし魔法を習得すべくアイナにガチャを用意してもらう。
「またですか?」
「僕と居るとそうなるんです」
ガチャが用意されマサとヴィーラが回す。
マサが出て来た玉を見て微妙な表情を見せるけど。
「パッシブかあ」
「受動的なスキルでしたよね」
「ああ、でも」
魔法攻撃を受けた際に自動回復するらしい。なんか羨ましいスキルだ。
魔法攻撃をするモンスターであれば、パッシブスキルが発動する度に回復するようで。回復職の仕事が減りそうだ。
続いてヴィーラだけど。
「セヴドアリディエルって精霊みたいなんだけど」
「なんだそれ」
「戦う精霊のようなものみたいな」
「いや、基本はみんな戦うだろ」
召喚してみないとわからないらしい。
ヴィーラの精霊に関しては後日検証となった。
そしてユズだけど。
「ストラッファって言う魔法みたいです」
「それは?」
「罰って言う意味の聖属性魔法?」
広範囲に効果をもたらすらしい。自分より強い相手でも瞬殺できるとか。
「レベル換算で十までです」
「じゃあ四十四まで?」
「そうみたいです」
「しかも範囲攻撃できると」
魔法使いやべえ、なんて言うマサだけど。
これも次回検証してみることに。
最後にフラウがガチャを回すと。
「エフテリフトって」
「なんだそれ」
「寛解ってことみたい」
完治まではいかないまでも状態として良好。病気であれば再発の可能性も残るが。
これまでの回復魔法は傷をある程度治すに留まっていた。今回得た魔法を使えば骨折であっても、瞬時に行動に支障が出ない程度まで治るらしい。
相当なレベルだと思うし、僕が過去に怪我をしたレベルであれば、全てフラウが治せるってことだ。
「すっごいですぅ」
「凄いですね」
「かなり無理できるってことだよな」
「でも無理はしないで」
レベル四十まで上がると効果の高い魔法を得るのか。マサのように最前線に立つ場合は、骨折することもあると思う。魔法攻撃は回復できても骨折は無理だろうし。そんな時にフラウの魔法で治せるのは大きい。
代わりにフラウを絶対守り切らないと意味がないけど。
何はともあれ各々優れた魔法を得た。
僕が覚える魔法とは違う。魔法剣士は覚える魔法が変わり種すぎる。
そして僕はレベル七十にならないと新たに魔法を覚えない。使える魔法の種類も少ないし。その点ではみんなを羨ましく思う。
神の加護が無ければ魔法剣士って、器用貧乏なだけの最弱職だよね。
「ヒロトは……そうだった」
「レベル十毎です」
「なんで魔法剣士だけ?」
「わかりません」
そろそろ僕が居なくても何とかなりそうだ。レベル四十なら洞窟攻略も無理がないよね。
あ、そうだ。
「アイナさん。転移アイテムですけど」
「荷運び見つけたんですか?」
「僕が持つんです」
「え、ヒロトさんがですか?」
当面みんなのレベルアップをサポートするだけ。危険度に応じて手助けするけど、基本は見守ることがメインになる。
戦闘もほとんどしないから手隙なんだよね。
だから荷物持ちをやっても良いと思ったわけで。それを説明すると転送アイテムを用意するアイナだ。カウンター内のどこに置いていたのか、運び出してカウンターの上に載せてる。
「重くないんですか?」
「少し重いです。背負ってみます?」
転送アイテムは手に持てるサイズではない。だから箱にショルダーストラップとチェストストラップ、そしてウエストベルトが付けてある。複数のストラップやベルトで簡単に外れないようにしてるのか。
それにしても大袈裟な気もするけど、その理由を聞くと納得するしかない。
「高価なんです。三百ベリキですから」
日本円で二百四十万円は高いとは思う。でも僕の長剣は百五十ベリキだった。だから驚きは少ないんだよね。それでも一般的な冒険者には高額と感じるのだろう。
ただ値段を聞いた他のメンバーがね、僕が全額負担すると思ったようで。
「俺たちも出すぞ」
「一人六十ベリキでしょ」
「そのくらいはね」
「あたしも出します」
僕と一緒に行動することで稼ぎは良い。収入が多くある割には使うことがなく、ほぼ貯金している状態らしい。
レベルアップに付き合ってもらい、稼がせてもらっているのだから、遠慮なくメンバーを頼って欲しいそうだ。
幾ら僕がお人好しでも全額負担する気はなかったんだけど。まあいいや。
「じゃあお願いします」
と言うことで各自の預金から七十ベリキ払ってる。
「あの、六十じゃないんですか?」
「え、ああ。ヒロトは二十でいいぞ」
「均等に割るんじゃ?」
「あたしたちはヒロト君のお陰で冒険できてる」
低いレベルの自分たちに付き合って、自分が向かいたい場所にも行けないだろうと。ソロで活動できる力がありながら、みんなの世話をしてるのだから、この程度の負担はさせて欲しいそうだ。
「本来なら俺たちで全額払いたいけどな」
「それだと納得しないでしょ」
「だから二十ベリキ負担してくれればね」
そして何より安心感が違うと。
僕が持っていれば紛失や破損の心配がないのだそうだ。
「俺らってさ、物凄く贅沢なことしてるんだよ」




