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Sid.113 久しぶりに教会へ出向く

 贅沢なことをしていると言うマサ。そして他のメンバーも同じことを言う。


「レベル六十の冒険者を荷物持ちだぜ」


 自分たちが如何に恵まれているか、今さらながらに実感してるそうだ。

 他のグループは荷物持ちすら居ない。居ても少数に限られる。しかも戦闘はできずレベルも低いのだろうと。単に重量物を背負い移動するだけの存在。それはそれで役立つのであろうが、戦闘はできないから頭数には入れられない。

 しかし僕の場合は違うと。


「神の加護を持ってる。レベル上位のモンスターも倒せる」


 戦闘に於いて比肩するものなし。


「仲間に欲しいと思うだろうなあ」


 欲しがるより排除したがる奴が多かったけど。今は違うのかな。

 そもそも日本人って他人の足を引っ張るのが好きだ。出る杭は打ち捲って出ないようにするし。喬木(きょうぼく)は風に折らる、高木(こうぼく)風に(ねた)まるってのもあったっけ。同じ意味合いの言葉が複数存在するってことが、日本人に多い性質を如実に表してる。

 何にせよ日本人は嫉妬深い。横並びを歓迎しつつ自分は抜きんでようとしたり。二面性も顕著で卑怯なんだろうな。

 とは言え僕に絡んできた連中が日本人だったのか、それ以外だったのかはわからない。他所の国でも同じように足を引っ張るらしいけど。


 結局、人間の本質なのか。


 アイナが用意した転送アイテムだけど背負ってみることに。


「軽いかも」

「ヒロトさんならそうですよね」

「軽いんだ」

「試していい?」


 フラウが背負ってみたいと言うから、外して背負わせてみたら、尻餅をつきそうになり慌てて支える。


「ヒロト君」

「はい」

「これを軽いって言われても」


 軽いなら攻撃手段を持たないフラウが、なんて思ったらしい。でも背負うと身動きが取り難くなるようで。アイナの方が力があるのか?


「アイナさんはこれをカウンターに」


 僕の言葉でアイナに視線が集まり「受付嬢って力持ち?」なんて言い出す。

 否定するアイナだけど箱を持ち上げて、カウンターに載せたからなあ。少なくともフラウよりは力があるのかもしれない。

 試しに背負わせようとすると。


「ヒロトさん。あたし力ないです」

「お試しで」

「ヒロトさんの抱っこがいいです」

「あとでしますから」


 その言葉で機嫌が良くなり箱を背負うと「重いですけど動けます」だそうだ。意外だ。

 こうなるとヴィーラやユズも試してみるようで。


「無理ですぅ」

「あたしには無理」


 アイナの方が力はあるのか。まあ力=戦闘力じゃないし。荷物持ちは二百キロを背負えても戦闘はできないらしいし。また違った能力なんだろう。

 成り行きを見ていたマサだけど「ヒロトってつくづく万能だな」なんて言って感心してるようだった。

 そして僕の袖を引っ張るのはアイナか。


「さっき言いましたよ」


 ああ、抱っこ。

 お姫様抱っこを所望されているのだろう。已む無く抱きかかえると首に腕を回し、密着して顔を近付けようとするし。人目があるから遠慮して欲しい。

 アイナの欲望は常に全開のようだ。


 ちなみに転送アイテムは待機室で保管してくれるらしい。高価なアイテムだけにセキュリティの確保できている場所がベストだから。

 ギルド内だと冒険者が持ち出しかねないし、盗む奴も出てきてしまうからね。受付嬢を脅して奪う奴も居ないとは限らないし。

 スタッフが見てる前で盗み出せる奴は居ない。敵対して逆らったところで制圧されてしまうからだ。冒険者に対して制圧権を持つらしい。


 まだ少し時間が残ってるようだから、久しぶりに教会へ行くことにした。


「最近会ってないのか?」

「ないですね」

「じゃあ行って来いよ」

「浮気するんですね」


 マサに背中を押されアイナに引き留められ、ギルドをあとにし教会へ向かう。

 白い尖塔と白い壁の教会。久しぶりに来たような気がする。もっと頻繁に来たかったけど、何かとあって、いや言い訳だな。来ようと思えば来れたはずだから。

 教会の入り口に立ち中を覗き込む。


「あれ?」


 マリッカじゃない若い女性が一人忙しなく掃除をしている。黒いベストに白いシャツ。そして黒いロングスカート姿でシスターって感じじゃないけど。

 一歩足を踏み入れると気付いたのか手を止め「本日はお祈りでしょうか、それとも懺悔でしょうか」なんて言ってる。えっと、マリッカは?


「あの、何か他のご用件でも?」


 視線が彷徨っていて挙動不審と思われたかも。


「あ、えっとですね、マリッカさんは」

「シスターマリッカですか?」

「そうです」

「外出していますが」


 居ないのか。


「いつ頃戻りますか?」

「あの、シスターマリッカとはお知り合いでしょうか?」

「え、あの、そうです」


 なんか少し疑われてるような。シスターなら魂を見分けられるんじゃなかった?

 僕を見つめてるけど修業が足りないのかな。見るだけの力が備わってないとか。


「あなたは?」

「あ、僕はヒロトです」


 暫し無言で考え込む風だったけど、何かピンと来たのか手を打ってるし。


「し、失礼しました。お名前は伺っております」


 慌てて頭を下げ近くに来ると「こちらにお掛けになり少しお待ちください」と言われた。それと「あと十分くらいで戻りますので」だそうだ。

 どうやらマリッカから僕の名前は聞いてるようで。

 言われた通りベンチに腰を下ろし暫し待つことに。


「ヒロト様、でしたか」

「様?」

「シスターマリッカから来訪された際には失礼のないようにと」


 僕をどう説明したんだろう。加護と寵愛を授かってるとか言ったのかな。

 掃除の続きをするようで、箒を手に礼拝堂の床を掃いてる。けど手を休めることが多く、その際に話し掛けてくるんだよね。


「ヒロト様は救世の方と伺っています」

「え」

「シスターマリッカを暴漢から救い、ギルドの受付嬢を救い」


 門衛を救い他の町では住人のために行動している。他の冒険者に爪の垢を煎じて飲ませたい、なんて言ってるし。

 この世界にも爪の垢を煎じて、なんてあるのか。誰が広めたのか元々あったのか。


「とてもお優しい方とも伺っています」


 きっとそれがあってマリッカが惚れたのだろうと言ってる。惚れたってのも伝えてあるのか。


「あ、私は当教会に派遣が内定しているミンミと申します」

「派遣?」

「はい。人員補充です」


 今はシスター見習いなのだそうで。ここではインターンのようなものらしい。一時的に教会でシスターから直接指導を受けるべく、半年間実地で研修をしているそうだ。その後、再び修道院に戻り半年後に配属されるそうだ。

 そんなのもあるのか。教会のことはわからないけど、シスターになるにも様々あるんだな。


 ミンミと名乗ったシスター見習いと話をしていると、戻ってきたのか「ミンミさん。掃除は済みましたか?」と声が掛かるけど。


「ヒロトさん?」


 僕を見て驚いてるようだ。


「あの、ご無沙汰してます」


 ベンチから立ち上がりマリッカに向かい頭を下げるけど。

 口に手を当て少し涙目になりつつも、歓喜に打ち震えてるのだろうか。ふるふる震える感じで近付いてくる。

 傍まで来ると「ヒロトさんです」と言いながら、居住まいを正し「久しくお会いできませんでした」と言われた。嬉しいのだろうか、僕は人の感情を読み取るのが下手だ。喜んでいると思うけど。


「シスターマリッカ」

「なんですか?」

「掃除が終わりました」

「では夕食の支度を」


 ミンミに声を掛けられ視線を向け指示を出してる。僕に向き直ると「面識はありますか?」と聞かれ、さっき互いに名乗ったと言うと。


「修道院を出ると、この教会に来ます」


 当面は二人体制になるそうで。

 視線を動かしミンミを見てたけど、僕を見ると抱き着いてきた。目と目が合い瞳に映る僕だ。

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