Sid.111 四階層まで攻略が済んだ
アイテム魔法のジーベンスは僕のレベルのせいなのか、この洞窟内のモンスターでも瞬殺されてしまうようだ。仲間と釣り合いが取れないのも不便と言えば不便。
代わりに仲間は安全に攻略できるけど。僕に頼った攻略だと成長はできない。
ちょっと悩みどころかも。
後続の人型モンスターが怒涛の如く押し寄せてくる。手前の障害物が消えてしまったから。
この数を今のメンバーが相手にするのは無理だろう。本来であれば複数出現しても、せいぜい数体程度のはずだから。僕を基準にモンスターが湧いてくると思う。
「ジーベンス」
もう一発放つと集団の半分を倒せるけど、後方の集団にまで影響を及ぼせず、残りの集団がやっぱり突き進んでくるわけで。
僕の頭髪を引っ張るフレージアが居る。
「あたしがやりたいぃ」
「駄目だってば」
「つまんない」
「言ったはずだよ。他の仲間が成長できないって」
フレージアの攻撃魔法は気になるけど、使うのはソロの時だけだって言ってるのに。だから髪を引っ張らないで。頭の上に座って髪を引っ張り「ヒロトはケチケチマンだぁ」とか言ってるし。
眩しく煩いジーベンスを使わず、エルドクロットでも通用するか試すことに。
両手を前に突き出し攻撃する。
「エルドクロット!」
一発一発を超高密度にして放つと充分な効果があるようだ。人型モンスターが次々弾け飛び先頭集団から徐々に消えていく。
威力もそうだけど連射される状態が、すっかり機関砲の如しで秒間何発発射されているのやら。
戦闘集団が倒されると中央の集団が排除され、さらに後続も排除されると全部倒しきれたようだ。一体につき十発程度が着弾と同時に爆発。頑丈なはずの体がバラバラになるのだから、威力が過剰とも思えてくる。
「ヒロトが全部倒しちゃった」
「数が多すぎたからね」
「あたしがやりたかったなぁ」
「ソロの時に任せるから」
多数の魔結晶を拾うべくメンバーを見ると、少し引いた感じになってるし。
マサが僕を見て「腕にガトリング砲でも仕込んでるのか」なんて言ってる。
「なんか、もうね」
「ヒロト君、まだ本気出してない?」
余裕があるのは確かだけど。そもそもレベル六十で、こんな低階層をうろうろしてるのがおかしい。本来であればもっと深い階層を攻略するものだろうし。
でも安全に攻略できるわけで。メリットもあればデメリットもある。メリットは危険性がないこと。デメリットは乱戦時の経験を積めないことか。僕に頼ってしまうから。
とりあえず魔結晶を拾い集めるけど、ポーチに入り切れなくなった。
「置いて行くしかないのか」
「勿体無いなあ」
「今度からはバックパックが必要かもね」
邪魔になるから大きなバッグは携行しない。残して行くのが勿体無いとなれば、大きなバッグを携行することになるけど。それを誰が持つのかってことで。
「あたしが持ってもいいけど」
背負っていれば邪魔にはならないだろうってフラウが言う。魔法の盾を張るくらいしかすることがない。僕は長剣を背負ってるから物理的に無理。マサは大盾を装備しているから同じく無理。ヴィーラやユズは体力がないし、攻撃もするから邪魔になるだろうってことで。
「任せる」
「いいよ。今度からバックパックを背負ってくるね」
収納しきれない魔結晶は放棄し先へ進むと、行き止まりとなったようだけど扉がある。
「階層主の部屋か?」
「たぶんそうでしょう」
「入るの?」
「入らないと五階層を確認できないですから」
僕が先行し扉を押し開けると、広い空間に双頭の狼を多数従えた巨人が居る。すでに攻撃態勢の狼が居て巨人は人型モンスターより大きい。身長三メートルは超えてるようだ。
四本ある腕には弓矢を装備している。遠距離攻撃できるタイプのようで、狼を前衛として使い後方から矢を放つスタイルか。
足を踏み入れると狼が一斉に襲い掛かってくる。数はざっと見た感じで三十匹くらい。洞窟内で遭遇する数より圧倒的に少ない。
「ヒロト、俺が前に」
「あたしは魔法の盾を張るね」
「魔法で攻撃します」
「精霊を使うから」
魔法の盾を張る前に矢が飛んでくる。長さ一メートルはある矢だ。あれに貫かれたら即死するかも。
飛んでくる矢はマサが盾で防ぎ、突進してくる狼には魔法と精霊で攻撃。まずは狼の群れを排除しないと、巨人に集中できないってことで。
「ヒロトは何もしないの?」
「危なくなったら」
すでに乱戦を経験したメンバーだし、狼を排除してしまえば何とかなりそうだ。巨人は近接戦闘をするタイプじゃないみたいだし。ユズやヴィーラが牽制しマサが近接戦をすれば倒せるだろう。
守りと回復はフラウが居ることだし。本来の攻略レベルよりみんな上だし。
魔法攻撃と精霊による攻撃で狼はすぐに排除できた。
飛来する矢はマサの盾で防ぎ一歩ずつ接近して行く。狼が居なくなれば魔法攻撃は巨人に集中され、精霊の攻撃も巨人を対象にすることに。
フラウも前進しマサを守る盾を張る。
「余裕あるのかなあ」
「今のマサたちのレベルなら、もっと下層へ行けるから」
矢を放とうにも魔法や精霊の攻撃が鬱陶しいのか、少しずつ後退する巨人が居て、マサが接近し斬撃を何度か飛ばすと切断される足だ。四本の足があることで一本では転倒しないけど、右足二本に攻撃を集中することで、二本目も切断されるとバランスを崩し倒れる。
少し距離を取り斬撃を頭に向け飛ばすと腕で防御するようだ。
「腕が邪魔だ」
「そりゃ守るでしょ」
「体に魔法を集中してくれ」
「やってる」
四本ある腕のうち一本で薙ぎ払おうとするも、魔法の盾に阻まれ払いきれず。
体に魔法攻撃や精霊の攻撃を食らい続け、藻掻きながらも回避しようとするけど。立ち上がれないからどうにもならず。武器である弓も落としてるからね。
マサの斬撃が腕を一本切断し、魔法攻撃で相当なダメージを食らったのか、ついに動かなくなり霧散して行く階層主だ。
「よっしゃ!」
「倒せたね」
「そこまで苦労しなかったけど」
「無傷です」
洞窟内より階層主の方が先頭が楽ってのもなあ。結局は戦いは数だってことだよね。
数の優位性を出そうとして洞窟内では、モンスターが無数に発生する。でも階層主はスペックを頼りに戦闘をする。階層主よりレベルが上なら戦闘も楽になって当然。
メンバーにはそこを理解していてもらえれば。
階層主を倒すと下層階への扉が出現する。
「じゃあ見てくるね」
退屈していたであろうフレージアが嬉々として扉の向こう側へ向かった。
階層主の魔結晶は回収し無理やり押し込んでおく。フレージアが戻るまでの間は休憩となり、地べたに腰を下ろし暫し雑談となった。
「今日はこれで引き返します」
「まあヴィーラが新しい精霊を得られるならな」
「どんな精霊かなあ」
「悪魔か天使とか?」
ただの噂だから期待しない方がいいと言われてる。僕もそう思う。悪魔だの天使を仮に得られるとしても相当なレベルが必要だろうし。
少ししてフレージアが戻って来た。
「ものすっごく広かったよ」
「広い?」
「うん。下りるとね、広いだけで何にもないの」
どうやらひたすら広大な空間が広がっていて、入り組んだ構造にはなっていないらしい。
ただし地面は凹凸が激しく移動しづらいだろうと。
「でね、鳥がたくさん飛んでる」
「鳥、ねえ」
「ハーピーみたいな?」
「鳥だよ」
巨大な鳥が飛び回っていると言う。大きなくちばしに四枚の羽、六本の足を持つそうだ。
まあ行けばわかる。フレージアに詳細な説明を求めてもね。
とは言え攻略に時間が掛かる。深い階層へ向かうとなれば。そうなると転送アイテムは必須かもしれない。




