Sid.108 運び屋と言う職業がある
本格的なフェインカヴェルノ攻略も二回目となった。
前回は三階層でやめたけど、今回は五階層を目指すようで。多少無理があっても最悪、僕が居るから何とかなると考えるのも已む無しか。
「一度クリアした階層を飛ばせれば」
「確かに」
「いちいち最初からって面倒だよね」
一階層から順に下るしかない。面倒ではあるけど、早々都合の良い話はないんだろう。何かしらアイテムで移動できれば、下層階の攻略も捗るとは思うけど。
そもそも時間制限もあるから、どうしたって先へ進めなくなるし。
でも、それもギルドで話をしたら想定外の答えが。
「高価ですけど転送アイテム、ありますよ」
アイナが見せてくれたアイテムは、シールトイシッケと言う転送機だそうで。
ただ、その大きさが問題で、各辺の長さが五十センチある。これを持って移動するとなると邪魔だし戦闘どころじゃない。
じゃあ洞窟探索をする他のグループは、どうやってこんなものを運んでいるのか。
問うと。
「運び屋が居ますよ」
メンバーの誰も知らなかった事実。ジョブ選択の際に気にもしなかった。たぶん見落としてたんだろうと思う。戦闘は一切できない代わりに総重量二百キロを運べるとか。予備の武装や防具を持つことも。何より防御力が極めて高く、フェインカヴェルノの五階層の主でも、ダメージを与えるのは無理なのだそうで。しかもレベル一で。
魔力を纏い鎧代わりに使えるらしい。運び屋としてだけではなく、その頑強さから盾役にもなる。
「洞窟探索をする冒険者が仲間に加えてます」
単純に脱出するためだけのアイテムは小型軽量。行ったり来たりできるアイテムは、技術的な問題で大型になってしまう。魔結晶を多数使用する必要もあるそうで。
重量と大きさゆえ運び屋は重宝されるジョブらしい。
「引く手数多なのでフリーの運び屋は居ないですね」
好き好んで運び屋をやる人は極めて少ない。だから希少なのだそうで。
一つのギルドで二人か三人居れば良い方らしい。場合によっては一人も居ないことも。
「じゃあ募集しても」
「居ないですから」
詰んだ。
たぶんだけど、運び屋をやる人は地球であらかじめ、役割分担をしていると思う。こっちで仲間を集めるのではなく、地球で知人や友人と組んで任せるんだろう。
わざわざ運び屋をやるために来るわけもないし。戦闘が一切できないのであれば。こういう世界だからこそ、モンスターとの戦闘の醍醐味はあるだろうし。それを経験できないなら来る必要もないよね。
機材はあっても持って行けなければ意味がない。
仕方なく一階層から順に下るってことで。
「あのさ、日本で頼めそうな人居ないか?」
「僕には居ません」
ぼっちだから。
「ユズは?」
「無理ですぅ」
「ヴィーラは」
「居るわけないでしょ」
フラウも勿論、そんな都合の良い人は居ないと。マサもさすがに荷物だけ運んでくれる人は居ないようだ。
こういう時に空間収納とか、現実にあり得ないスキルがあれば良かったのに。
「まああれだ、今度探してみるよ」
「あたしも探してはみるけど」
マサとヴィーラが探してみるが期待はするなと。荷物持ちをやる人なんて、普通に考えて居るはずもないだろう。
高いプレイフィーを払って荷物持ちじゃなあ。いざと言う時はモンスターの攻撃を引き受けるだけなんて。
楽しくないよね。
居ない以上は已む無しってことで、一階層から三階層までは僕が蹴散らすことに。
簡単に排除できる程度の相手だし。一階層や二階層なら素手でも排除できる。時間の節約になるからってことで。
そして四階層への階段前に辿り着く。ここまで何の苦労もなく着いてしまった。
後方から付いて来るだけのメンバー。僕一人が働けば済むってことで。ついでの効果として時短になったのは言うまでもない。
「まじで悪いと思ってる」
「お陰で楽だったけど」
「ヒロト君には感謝してるから」
「お疲れさまでしたぁ」
先にフレージアが偵察に行き簡単に構造を把握しておく。
「下りるとね洞窟が一本だけあるの」
不定形モンスターが多数出没するそうで。
それを進むと二股になっていて、右側に進むと地底湖があるそうで。左側は人型のモンスターが居るらしい。
「人型って?」
「人型ぁ」
「いや、あの」
「武器持った人間」
なんか想像できないけど、もしフレージアの言うように人だったら、倒すのに躊躇しそうだ。
極悪な冒険者なら排除した方がいいけど、ただの人だとしたらやりづらい。
「地底湖の方は?」
「水の中にうじゃうじゃ」
つまりモンスターが多数居るってことか。しかも水棲の奴。
「右か左、どっちに進みます?」
「右の方が」
「左は人なんでしょ?」
地底湖は先へ進めるのかフレージアに確認すると。
「橋があるよ」
「橋?」
「うん。なっがーい橋」
一直線に対岸まで伸びる橋があるらしい。欄干など無く板状の橋らしい。そこを渡る際にモンスターが襲ってくるのだろうと。
でも渡らないと対岸には行けない。
「考えても仕方ない。人を相手にするよりはな」
「ですね」
と言うことで右側の洞窟を進むことに。
階段を下りるけど、ここもまた段数が多いようで三百段くらいあった。
下りて右の洞窟へ進むと、早々に不定形モンスターの団体さんと遭遇。数がね、やっぱり尋常じゃなかったけど。
「こいつら、剣だとダメージが通らない」
「魔法しか通じないの?」
「じゃあたしがやります」
ユズの出番とばかりに覚えたての魔法を使うようだ。
「試してみたかったんです」
エクスプロディエラ。爆裂魔法だ。洞窟内で使えるのかどうか、まあ検証は必要だし。
「エクスプロディエラ!」
魔法が発動すると大爆発だ。これ、狭い場所で使っちゃ駄目な奴だ。爆風に晒され吹っ飛ぶ面々とモンスター。一気に四階層の階段下まで転がる羽目に。
熱と爆風だから全員が無駄にダメージも食らってる。
「ユズさん。ここでは使用禁止」
「こんなに威力あると思わなかったんです」
「場所の問題ですよ」
トンネル内で使う魔法じゃない。僕の衝撃波と同じで。衝撃波より熱が加わることでダメージは大きくなるし。
フラウが全員を治療し再び進むけど、インレコラプスを試すと一匹しか効果を示せず。内から破壊されるってのは、見た目ではわからないけど。
「推測ですけど外殻の固い奴に効果があると思いますよ」
「そうみたいですぅ」
残念魔法使いだ。結局、精霊と炎の槍や氷の槍で倒すことに。僕がやれば早いのはわかってるけど戦闘慣れは必須だし。
地味に削りながら先へ進むけど、不定形モンスターってスライムだよね。スライムは最弱なんて誰が言ったのやら。
「あっつ!」
「溶けてきたぁ」
「これ、まずい奴だろ」
倒される際に溶解液を放出するようで、飛沫を浴びると爛れてしまう。
意外と手古摺らされるスライムだ。僕の魔法でコントラクフーンを使うと、飛沫が飛ぶことも無く収縮され消えるようだけど。
「ヒロトに任せたい」
「倒す度に溶かされてると」
「熱いし痛いし」
「でもまとめては無理です」
単体相手の魔法だから。
「あとはスタートヴォーグですけど」
「衝撃波だよね?」
「そうです」
「あれも吹き飛ばされるし」
それでも押し込めるなら、と言うことで範囲を絞って行使する。
でも洞窟で使う魔法じゃないのはわかってた。転がる面々。耳も痛いし暫く聴覚が麻痺するし。
それでもスライムの集団は進行方向に押しやられ、拉げて消えていたようで。
「ちょっとあれだけど」
「ヒロトに頼るしかないな」
ここでフラウが試したいと言う。
「あ、もしかして魔法の盾」
「そう。あれで少しでも防げれば」
と言うことで先へ進んで試すことに。




