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Sid.106 レベルアップで新規魔法

 難易度は低いはずのフェインカヴェルノ。僕が居ると高難易度の洞窟になってしまうようだ。一般的な冒険者の場合は数はそれほど出てこない。洞窟内を埋め尽くすなんてあり得ないわけで。まるでゲームだな。難易度がプレイヤー次第で調整される。

 常にスタンピードの如くモンスターが発生するんだから。

 帰路も同様に数で押し捲るモンスターだった。


 僕を除き全員疲れ切った表情で洞窟を出ると、やっと安堵したようで。


「ヒロト君。おんぶ」

「あたしも」

「誰でもいいからお姫様抱っこして連れてって」


 女性陣は歩くのも億劫な感じだ。でも歩いてもらうしかない。怪我して動けないならともかく怪我は治療済みだし。


「歩きましょう。大した距離じゃないです」

「鬼だ」

「脳筋ヒロト君」

「体力モンスター」


 マサが苦笑しながら「一人だけ別次元だな」なんて言ってるし。

 だらだら歩いていると時間の無駄なんだけど、気合を入れてなんて言っても無意味で。


「もう少し早く歩きましょう」

「車無いの?」

「あるわけないじゃないですか」

「電車でもバスでもいい」


 日本じゃないし。あるのは馬車だし。しかも乗ろうとすると他の乗客から忌避されるからね。冒険者と一緒なんて我慢ならないんだから。

 それでもお構いなしに乗る冒険者も居そうだけど。だから余計に嫌がられる。

 乗客にとってモンスターと同乗してるのと同義だ。


 三十分ほど掛けて町に戻ると、まずは待機室へ向かいレベル確認をする。

 ギルドのカウンター内に居るアイナが、手ぐすね引いて待ってる感じだ。少し落ち着きのない態度だけど、あとで顔を出すからその時に話をすればいい。

 待機室に入るとスタッフから声が掛かる。


「お疲れのようですね。みなさん」


 スタッフが女性陣を見て口にするけど、待機室に入った途端に椅子に腰を下ろしたからね。しかも背もたれに背を預け、ぐったりした表情を見せたから。


「ではレベル確認をするので、一人ずつこちらへ」


 最初にフラウが立ち上がりLIDでチェックするようだ。

 椅子に腰を下ろし確認すると。


「同行してる人が人ですからねえ」


 レベルが一気に五も上がっていた。レベル三十八。驚きと嬉しそうな表情を見せるフラウが居る。新たな魔法を一つ習得できるらしい。

 スタッフは呆れ気味で僕を見るし。


「では次の方」


 マサが立ち上がり確認。マサの場合は六上がったようで三十六になった。スキルを一つ習得できるらしい。それを聞いて喜んでる。

 次いでユズの確認をすると十も上がっていて驚きを隠せないようだ。レベル三十となり新たに魔法を四つ習得できるらしい。

 いいなあ魔法使い。一度に四つも得られるんだもの。

 最後にヴィーラも確認するとフラウと同様、五の上昇でレベル三十八になった。

 魔法の習得はと思ったら召喚士の場合は、レベル四十で新たに上位精霊を召喚できるようになるらしい。


「なんか残念」

「あと二つですよ」

「二つ上がると何があるの?」

「ガチャ次第ですが」


 強力な精霊を得られるそうだ。ハズレ精霊はないから期待して、とスタッフに言われていた。

 レベル上昇で肉体的なスペックも上がっているはずだとも。

 少し探索も楽になるだろうと言うスタッフだ。

 ヴィーラが僕を見て何やら口にするけど。


「ヒロト。洞窟に行こうよ」

「今日は無理ですって」

「じゃあ今度行けば」

「確実にレベル四十ですね」


 全員のレベル上昇が半端ないことで、スタッフに「どこに行っていたのですか?」と聞かれるけど。


「フェインカヴェルノです」

「え」

「数が尋常じゃなかったんですが」

「尋常じゃないって、どのくらいです?」


 数えきれないくらい。階層主も倒してるし。

 各自が持つポーチに入り切れない程の魔結晶。已む無く放置してきたくらいだし。

 一人百二十個としても五人居るから、六百個はあると思う。それを言うと開いた口が塞がらないようだ。


「えっとですね」

「なんですか」

「一度に持ち込まれても対応できないので」


 一時預かりの上、後日三回に分けて報酬を支払うとなった。

 ここのギルドで活動する全冒険者が、一日に持ち込む魔結晶の総数は約二百個。全冒険者で、だから僕らの場合は常軌を逸してるそうだ。


「一度に市場に流すと価値が下がってしまいますしね」


 市場価格の下落を招かいないよう、少量ずつ流すことになるそうだ。

 まあいろいろあるんだろうなあ。


 待機室を出てギルドのカウンターに行くと、アイナが期待して待ってるんだよね。


「ヒロトさん! 今夜」

「無理です」

「ずっと放置されてるんですよ」

「でも今日は無理ですって」


 なかなか戻って来ないし他の町に行ってしまうしで、寂しいと言ってる。

 わかるんだけど、まずは魔結晶を預けてガチャを用意してもらわないと。


「えっと、トレーですけど」

「二つですか?」

「全然足りないです」


 呆れた表情を見せるアイナだけど「ヒロトさんのせいで残業です」とか言ってるし。残業代は僕の愛で示してもらうのがいい、とか言い出すし。それを聞いてるメンバーは冷やかしてくるし。

 アイナってストレートに愛情を示すんだね。周囲に人が居てもお構いなしだ。

 でもそれだけ愛されてるってのも悪くないかも。時々重いけど。


 魔結晶は一時預かりで後日となり、ガチャを用意してもらい魔法を習得することに。


「誰からですか」

「じゃあ俺から」


 マサが最初に回すようで、剣士系用のガチャが用意された。ガチャには大まかに魔法系と剣士系がある。魔法剣士は剣士系のスキルは持てない。だから魔法系のガチャになるらしい。

 フラウやヴィーラは魔法系。でも少し毛色が違うらしい。


「赤だ」

「アクティブスキルですね」

「お、それいいな」


 赤い玉を掴み飲み込むと「大当たりだ」と実に嬉しそうだ。


「スキルは何ですか?」

「斬撃を飛ばせるようだ。スネーストレッキと言うらしい」


 これまでは直接攻撃オンリーだった。でも今後は少し離れた敵にも攻撃できる、と喜びを隠せないようで。

 攻撃範囲が広がることで守りながら、しっかり攻撃もできるようになる。周囲も楽になるんだろうな。


「次はあたし」


 フラウがガチャを回す。

 出て来た玉は白。それを見るフラウだけど「どうなのかなあ」と言いながら口に含む。


「あ、すごく役立ちそう」

「何です?」

「防御魔法」


 マギスクスコルと言う名称があり魔法の盾を展開できるそうだ。物理と魔法攻撃の両方を一定程度軽減できるらしい。完全防御ではないから多少のダメージはあるかもしれないそうだ。でも無いよりまし。

 つまりマジックシールドって奴か。僕のは物理的な壁を発生させるけど、フラウの場合は魔法で守るんだね。これも使えると思う。

 最後にユズだけど。


「四回ですか。過去に無いですよ」

「まあ僕と居るから」

「ですよね。ヒロトさんですし」


 呆れ気味のアイナがユズに四回ですよ、と言ってガチャを回すよう言う。

 勢い回すユズが居る。

 一個目は赤い玉。二回目は青い玉。三回目は黒い玉。四回目は緑の玉だ。

 どれも攻撃系の属性魔法なんだろうな。魔法使いって魔法の種類が豊富でいいなあ。


「これ、全部飲むんですよね」

「そうですよ」


 全部まとめて口に放り込んでるし。

 そして一つずつ習得できたのか、ふんふん言いながら「範囲攻撃があります」と言ってる。

 範囲攻撃か。便利だよね。単体を攻撃するのと異なり集団戦で有利になるから。特に僕と一緒だと乱戦になるし。


 そして魔法だけど、一つはエクスプロディエラで爆裂魔法。これが範囲攻撃らしい。一つはフルーセンで凍結魔法。そしてインレコラプスと言う内部崩壊を意味する魔法。最後にシンネスコントロルが精神支配。

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