Sid.103 悪魔や天使を呼べるのか
元はモンスターとは言え蛙を見ると、潰すに忍びない感じになるようで。
「なんか可哀想になるんだけど」
「普通に蛙なんだもんねえ」
「ちょっと躊躇するよな。元がモンスターでも」
「ヒロトさん、ずるいですよぉ」
マサは蛙化の魔法を見るのが初。変わった魔法だけど面白いと思うようで。
ユズは羨ましがるし。魔法使いより有用な魔法を扱えるってのが。フレージアの無力化も極めて有効だけど、蛙化の魔法も楽に倒せるようになる。蛙を潰すのは憐れみを感じはすれど、反撃されることがないから安全だと。
「精霊召喚士って、なんか半端な感じ」
「どうしてですか?」
「だって制限はあるし五種類しか居ないし」
ヴィーラは現状あまり役立てていないと思うようで。現時点で実質使えるのはアストラピとサラマンドラとシルフィ。水のある場所であればウンディーネが使えるらしい。
ノームは元より攻撃には適さないから、実質四体の精霊だけになるようだ。
「ただね」
ヴィーラ曰く、あるレベル以上に至るとエレメンタル以外に、高位の精霊を呼び出せるようになると噂されているそうで。
「天使とか悪魔も」
「え」
「天使?」
「悪魔を呼べるの?」
あくまで噂であり誰も召喚できたことがない。単純なレベル上昇だけではなく、他にも条件があるのではと言われているそうだ。
仮に悪魔を呼び出せるのであれば、この世界で神以外の手によって肉体を得る、なんて話も真実味を帯びるのか。
フラウを見ると知らなかったようで、ヴィーラを見つめてるようだ。気になるんだろうな。
教会で住人の治療をしていても加護を得られるかは不明。善意の行動が必ずしも望む結果を得るとは限らない。でも悪魔であれば契約によって、望む結果を得られる可能性はある、そう考えてもおかしくない。
「天使とか悪魔って精霊って呼ぶの?」
「一部例外を除けば呼ばないですね。天使は神の創造物。精霊は万物に宿る魂です」
堕天使や悪霊などを悪魔と呼んでいる。堕天使は神の創造物と言えるけど、悪霊となると超自然的な存在になるし。悪魔は悪魔として定義してるケースも。宗教によっても定義が幾らか異なる。イスラムに於いてイブリースは悪魔だけど、それ以外の悪魔と呼称される存在は精霊ってのもあった。
所詮は人の創造の産物でしかないけど。
でも、この世界では現実にあっておかしくはない。精霊が存在し妖精は僕の頭の上で寛いでるし、神のメッセージを受け取れる人も居る。と説明すると。
「じゃあ精霊召喚士だと呼べないんじゃ?」
「それだけど」
ヴィーラが続けて話をするようだ。
「人の性質によって召喚できる存在が変わるらしいって」
「性質って?」
「善とか悪」
善に振れていれば天使を。悪に振れていると悪魔を、と言うことらしい。
全く確証の無い話だけどヴィーラとしては信じたいそうだ。
「あのさ、ジョブって運営が決めたんじゃないの?」
「ゲームを元にって聞いてますよ」
「違うみたいだけど」
「神が介在したって話もあるみたいね」
これらのことに関しては運営に問い合わせて確認するしかないよね。常駐スタッフが細かいことまで知ってるとは限らないし。この世界の神と交渉した人が真実を知ってるんだろう。明かされない事実もあるみたいだし。
僕を見るヴィーラが居る。
「そこでヒロトの出番」
「え、僕ですか?」
「ヒロトと一緒ならレベルの上がりが早いでしょ」
モンスターが大群で押し寄せてくる。一般的な冒険者では遭遇し得ない圧倒的な物量。短期間でレベルが上がったことで、僕と一緒に居れば生命力を得やすいと。
そして誰も到達していないレベルになれば、見えてくるものがあるのではと考えるらしい。
そうなると四人の視線が集まるわけで。
「ヒロトヒロト。注目浴びてるよ」
「そうじゃないってば」
「でも、ヒロト君と一緒なら」
「まあ確かに上がりやすいだろうし」
興味はあるから付き合うのはいいけど。
「単に利用するだけでしたら」
「まあ、そう受け取られるよなあ」
でも違うと。今はレベルが低く引っ張ってもらう必要がある。いずれ同程度のレベルに至れば相互に協力関係を築けるはずだと。
ただ口先では何とでも言える。行動で示すしかないから証明して行くそうだ。
話し込んでしまったけど先へ進むことに。
十一個ある洞窟の入り口。そのどれかに入ることにしたけど、三つはフレージアが事前に偵察済み。
「偵察済みの洞窟にしましょう」
「じゃあ三択だな」
「右」
「右がいいかな」
こういう時は全員が揃うんだよね。不思議と。
曲がりくねっているだけで一本道らしい。ゆえにマッピングは不要になるから、さっさと入って進むことにした。
フラウが新しく得た魔法を試したいらしい。リュースクロットだっけ。光球って意味の。
「試しておきましょう」
「じゃあ使うね」
フラウが魔法を使うと裸電球のような光が発生する。直視すると眩しいけど洞窟の壁が明るくなった。見通しが利くほどではないんだけどね。
因みに光球は熱を帯びないようだ。
「あの、光球って移動できるんですか?」
「え、移動って?」
「例えば先に進めたり後方を照らしたりです」
「試してみるね」
何やら念じてるようで光球が動き出すと、一気に前進し壁に当たって消えてしまう。
何か障害物にぶつかると消えるのか。
「あれ?」
「コントロールが難しいんですか?」
「えっと、そうみたい」
「もう一度お願いします」
再度光球を発生させ動かすようだ。少々眉間にしわが寄ってるけど、視線を向けた先に少しずつ移動してる。
視線を一気に動かすと光球も同じように動く。そして洞窟の天井にぶつかり消えた。
「もう一回試してみるね」
どうやらコツを掴んだようで。ぎこちない動きだったけど、スムーズに動かせるようになった。
僕は暗視で見えてるけど他のメンバーは見えない。周囲に敵が居れば光球を飛ばし、大まかな位置を把握できるだろう。メンバーが視認できれば攻撃もしやすい。
これも使い方次第で有効な魔法になる。視線を向けた先に移動するようだから。
曲がった先に潜むサソリのモンスター。
光球の飛ばし方次第で影を生む。不意に攻撃を受けることも減るだろう。
これも僕は気配を察知できるから、不意打ちは殆ど食らわず済むんだけど。他のメンバーは察知できないから役に立つ。
おおよその位置を確認できると魔法を放つユズだ。ヴィーラも続いて精霊を放つ。
リスクを減らし順調に進むと広い空間に出た。
「奥になんか居るぞ」
「照らしてみる」
光球を飛ばすと照らされる存在。
まだ動いてはいないけど、どうやら階層主かもしれない。
「俺が防御するからヴィーラとユズで攻撃を」
マサが盾を構え前進すると動き出すモンスターが居る。球形で接地面には細かい脚だろうか、無数に生えていて波打つように動く。
少しすると球形の上半分から無数の棘が出現した。
「あれ飛ばして来るよ」
フレージアの言葉にマサの後方に集まるけど。盾の大きさから全員を守り切れないと思う。
イースピラレでマサの前に壁を作ると、僕を見て「なんか悪いな」と言ってる。
次の瞬間、発射される無数の棘。長さ三十センチくらいで太さは一センチくらいか。猛烈な速度で飛来し氷の壁に突き刺さってる。
「これ、盾だけだったら蜂の巣だ」
「壊れないね、この氷の壁」
「前より硬くなってない?」
硬いかどうかはわからないけど、レベルと共に頑丈にはなるみたいだし。
逆に壊れ難くなると邪魔になることもあるけどね。
「精霊なら視認しなくても攻撃してくれないですか?」
「あ、試す」
ヴィーラの精霊が無数の棘を掻い潜り攻撃をしてる。




