Sid.101 仲間の復帰で洞窟を探索
汝の隣人を愛せよ。その心構えと実践。
神はきちんと見ていると思うから、ユズにはそう言っておくけど頭で理解しても、行動が伴うことはないんだろうな。
僕らは異世界で迷惑を掛け捲ってる。それを自覚し現地の住人と良好な関係性を築く。身内と同様に接しないと。
言っても難しいことなのだろうとは思う。
数日後マサが復帰した。
僕はフレージアの球根回収があるからテューネスからスタート。あとでみんなと合流することになってる。
待機室で預かってもらっていた球根をポーチに収納。頭の周りを飛び回るフレージアが居る。
「ヒロト。あのねあのね」
僕が行くと嬉しそうなフレージアだ。
「何?」
「見つけたよ」
「え」
「発生源」
黒い流体モンスターの居る森にあるモンスターの発生源。それを見つけたらしい。
「あの黒い奴居たでしょ」
「うん」
「あれの近くにあったよ」
つまりマブロイグロを倒さないと発生源は叩けない。そうなるともう少し鍛えてからになりそうだ。
依頼の達成も幾らか先になる。困っているだろうから、すぐにでも対処したいけど現状力不足で無理だし。マサたちと一緒に行ってもレベルが低いから、即離脱する羽目になるだろうし。三人、あ四人になるのか。瞬殺されて終わるだろう。
だからソロで向かうしかない。
とりあえずマサたちと合流すべく移動することに。
体は完全に修復済みで服も新調された。当然だけど初期装備になる。剣だけは最上級品だけどね。
待機室を出るとエルミと目が合い声を掛けてくる。
「あの、無理はしないでくださいね」
僕を見つめるエルミだけど心配してくれてるのか。
「今日は別の町に行くので」
「そうですか。あ、あの」
「なんです?」
「エルミと言います。ずっと名乗ってませんでした」
少しカウンターから乗り出すような感じで名乗ってる。
もう知ってるんだけどね。まあそれは置いておいて。
「エルミさんですね。僕の名前は知ってますよね」
「あ、はい。ヒロトさん」
はにかむような笑顔を見せるエルミが居る。なんかアイナを思い起こすような。
まさか無いとは思うけど、これ以上は勘弁して欲しいと思う。
また後日、と言ってギルドを出る。門を出る際にヤンネが「元気になったか?」なんて声を掛けてきた。
「もう大丈夫です。運んでくださり、ありがとうございます」
「いいんだよ。町の住人を助けてくれるからな」
誰も引き受けない住人の依頼を引き受けてくれる。他の冒険者とは違うと理解できたそうで。
人のために行動してくれるなら、力及ばずとも役立てることがあれば、今後も遠慮なく頼ってくれていいと言う。
「まあ、あまり無理するな」
「はい」
ヤンネと別れランシ・ヤールヴィに向け走る。
フレージアは頭の上で寛いでるけどね。
町に着くとセヴェリさんとトゥオモさんが居て「今日はどこから来たんだ?」なんて言ってる。
「テューネスからです」
「あの町の近くに古城があるだろ」
「攻略してきました」
「は?」
ボスを倒したことを報告すると、呆気に取られた感じだけど「ヒロトだからなあ」なんて言われた。
二人とあいさつを済ませギルドに向かい中へ入ると、カウンターに居るアイナと目が合うわけで。そうなると一気に華やぐ笑顔を見せてくる。
ラウンジを見るとマサたちがすでに居て、僕に気付くと立ち上がって全員傍に来た。
「久しぶり」
「あ、はい。もう解禁ですか」
「やっとだ」
それで、と一緒に居るユズに目をやり「ちゃっかり仲間が増えてたんだな」なんて言ってる。
「急に紹介されて驚いたけどな、魔法使いってことなら大歓迎だ」
仲間にしろと煩かったし魔法使いを募集してたのもあるし。鍛えれば使えるのもわかったから、今後は戦力として期待できると言っておいた。
「あとな、俺の装備も回収してくれたんだよな」
ありがとうと頭を下げて礼を言われた。礼なんて言わなくてもと思う。僕のせいでみんなが巻き込まれたようなものだし。
なんか強烈な視線を感じると思ったら、フラウが僕を見つめてるし。なんか気になるけどマサが復帰したことで、肩慣らしとして洞窟に向かうことにした。向かう先の洞窟はフェインカヴェルノ。PKに遭った洞窟ではない。難易度が低めの洞窟だから肩慣らしに都合がいい。
「マップですけど」
「新たに作るしかないか」
「面倒なんだけど」
「無いと迷子になるだろ」
フラウが作るんだけど確かに面倒だろうなあ。
少し嫌そうな表情を見せたけど僕と目が合うと、にっこり微笑んでるし。何、その微笑みは。
「じゃあ行くか」
マサを先頭に移動するけど「みんなレベル上がったんだろ」と言ってる。少し置いて行かれた感じかもしれない。
今日はマサとユズのレベル上げを重点的にやっておこう。
先頭を歩くマサだけど振り向いて「ヒロトはレベル六十とか聞いたぞ」と言い出す。それと妖精を従えていることで「一人で魔王討伐にでも行くのか」なんて、そんなわけないけどね。魔王も話が通じる相手だと思うし。魔族とも話ができる。何も敵対する理由はないから。
「それでな。今後はヒロトをリーダーにしたい」
「え」
「あ、それいいかも」
「ヒロト君なら適任でしょ」
単純にレベルが高いからと言った理由ではなく、戦闘時の対応力が誰よりも高い。判断や指示も的確で適任だと考えるそうだ。
まだ無理な気もするけど。
「責任感もある」
だから任せたいと。
「リーダーなんてやってりゃ慣れるものだ」
「あたしはヒロト君にリーダーやって欲しいな」
「適任だと思うよ」
「ヒロトさん、あたしも鍛えてくれました」
と言うことで急遽、僕がリーダーとなってしまった。
「じゃあ任せた」
「あの」
「これまで何度も指示出してるだろ。いつも通りだっての」
洞窟まで行くと守衛に松明を買わされ中に入る。
ここは一階層を半端に攻略しただけ。今日は行けるなら二階層に向かう予定だ。
松明に火を灯しマッピングをしながら進む。
「居ますよ」
「見えない」
「ヒロトは見えるんだよな」
「今日の戦闘はマサさんとユズさんがメインです」
フラウにはマッピングに専念してもらう。回復が必要にならないよう守りは僕が徹底的に行う。ヴィーラには手助け程度で。
とは言え一階層に出てくるモンスターは楽勝な相手。数は多く出てくることで、少々忙しない戦闘にはなるけど怪我はしない。ユズの魔法もさすがと言えばいいのか、効率よく敵を排除できてる。
「ちょっと体が鈍ってるなあ」
「休みが長かったからでしょ」
「仕方ないんだろ。行くなって言われたし」
制限されている間は真面目に学生をやっていたらしい。
「普段は真面目じゃないんですか?」
「それなりにだ」
「すぐ怠けるからね。いい機会だったんじゃないの」
「怠けてないぞ」
余裕があることで会話も多い。久しぶりの攻略ってこともあるけど。
でも順調に進むわけでもない。マッピングに手間取るから。
「ヒロト君」
「なんです?」
「代わりにやらない?」
「守りに専念したいんです」
僕がやってもフラウがやっても同じだと思う。なんか、魔法で描けるとかあれば楽なんだろうけど、そこまで都合の良い魔法って無いんだろうなあ。
それでも一階層を突き進み二階層の階段前に辿り着いた。
「ここからが本番です」
「強いモンスターとか出るのか?」
「それはわからないです」
急に強いモンスターが出てくる、なんてパターンもあるだろうけど。
軽く休憩してから下ってみることに。
全員が休憩してしまうと咄嗟の際に対応できない。僕が周囲を警戒しながら他のメンバーに休んでもらう。
少し申し訳なさそうなメンバーだけど、疲れを感じないから僕が適任ってことで。




