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Sid.8 森の中で大物と遭遇した

「初心者大歓迎! 一緒に冒険してくれるメンバーを募集中。剣士または戦士と魔法使い、回復士を募集してます。自分はスカラーDランクで魔法剣士やってます。」


 掲示できる紙のサイズはA四程度。気の利いた文面を思い付けず、なんかバイト募集みたいな。しかも余白だらけ。なんか勿体無い。

 条件とかの要不要も分からないけど、とりあえず掲示板に貼ると受付嬢から「掲示できるのは一週間で一日四バーカル掛かります」と言われる。追加で「掲示終了後に清算しますので踏み倒さないでくださいね」だそうだ。

 有料って、なんか世知辛いなあ。一日八十円程度とは言え。


「あの、もしメンバーが集まらず追加でってなったら」


 気になったから聞いてみる。


「改めて申し込んでください。金額は同じです」


 あ、そうだ。もうひとつ。


「えっと、仲間って経験値? の割り振りはどうなるんですか」


 少し呆れた感じで見てる。


「説明されませんでしたか?」

「聞いてないです」


 下を向きぶつぶつ「時々必要な説明が抜ける担当って」なんて言って、こっちに向き直ると「メンバー申請の際にタグにメンバー名を記載します」だそうで。

 メンバー名をタグに刻むことで、倒したモンスターの生命力が均等に割り振られるそうだ。

 止めを刺した人とか攻撃をした人だけだと、回復士など支援職に生命力が行かないから。

 名を刻むだけで均等に割り振れるって、タグに何か魔法的なものがあるのかな。まあ生命力なんてあるくらいだし。何かしら細工が施してあるんだろう。


 一応、頭を下げ礼を言って外に出る。

 最速でレベル五になったらしいけど、受付嬢にはあんまり良い印象を抱かれてないかも。魔結晶を持って来た時も疑われたし。態度も事務的だしなあ。親しみを感じさせない雰囲気出してるから。


 町の外に出る際に門衛がタグに気付いたようで、スカラーになりました、と言うと「もう昇格したのか」と驚かれた。


「来て早々に昇格した奴は見たことがない」

「そうですか」

「人は見掛けによらないものだな」


 頑張って町と人を守れる存在になってくれ、と言って送り出された。間違っても住人に刃を向けるような奴にはならないでくれ、とも。

 門衛の人には期待されてるのかな。気さくな感じで接してきてくれるし。


 町を出ると街道を進む。

 昨日入った森にまた入ってみよう。危なくなったら逃げればいい。逃げ切れるか分からないけど。


 森に辿り着くけど、道中、何も出てこなかった。居ないこともあるんだ。

 薄暗い森に入り歩みを進めると、時折ガサガサ音がするけど姿は見えず。一応警戒しながら進むけど、なんか後頭部がちりちりする感じがして、振り向くと昨日の奴が飛び掛かる寸前だ。

 出たよ。

 咄嗟に体を捻り剣を抜いて頭の横に構える。


 今日は簡単にやられるつもりはない。コバロルムとか言う奴だっけ。うまい具合に躱せたけど他の枝に掴まると睨んでくる。

 剣は構えたまま。

 他の枝に飛び移り後頭部を狙うべく、移動し続けるようだけど。こっちに来ない。


「警戒してる?」


 少し肩の力を抜き剣の切っ先を下げ、少し視線を逸らしてみると移動した先から飛び掛かってきた。

 誘いには乗ってくれるようだ。

 体を捻り剣を突き出すとザクっとした感触。昨日と同じく勝手に突き刺さる。


「エルドクロット!」


 昨日より重さを感じない。宙に浮かせたまま火達磨になるコバロルム。

 炎が収まると消えてしまい、あとに赤い魔結晶を残した。


「なんか楽勝」


 これが危険なのか、と思ってしまうが、油断すれば命取りなんだろう。あとはレベル上昇の恩恵もありそうだし。

 魔結晶を拾いポーチに仕舞い込み、先へと進むとガサガサと多数の音がする。

 一匹じゃなく数匹居そうだ。そうなると、こっちが不利になりかねない。背中を晒さずに済むよう少し太めの木を背にして立つ。

 剣は頭の横に構えておき注意深く周囲を見回すと、木々の枝を飛び回るコバロルムが居るのを確認できた。


 腰を屈め体勢を低くし耳を澄ませ音の位置を割り出す。

 左に一匹、斜め前に一匹、正面に一匹。右斜め後ろに一匹。なぜか位置が分かるんだけど。

 これもレベル上昇の恩恵かも。

 で、次の瞬間、右斜め後ろの奴が飛び掛かってきて、同時に正面の奴も飛び掛かってくる。

 同時攻撃はずるい。


 それでも後頭部を攻撃するのは難しいだろう、まずは正面の奴を倒すべく走り出し、剣を突き出すのと同時に魔法を放つ。

 前から来た奴は火達磨になり落ちてもがき、後ろに居た奴は空振り気味だったから袈裟斬りを試みる。

 地面に下り立つ寸前、しっかりヒットしたようで魔法を放つと、火達磨になりもがきながら消え去った。


「残り二匹」


 木を背にしてないことで後ろから来る気配がある。

 前からも来てる。

 戦い方の基本が理解できた。前後で挟撃される場合は、前にダッシュして目の前に迫る敵を倒す。振り向きざまに後方の敵を倒せばいい。

 枝から飛び移る際に距離を見ているだろうから、目測を誤らせることで攻撃され難い。


 挟撃してきた奴らも無事に倒すと魔結晶をしっかり落としてくれる。


「赤いのが三つと緑色のがひとつ」


 赤と緑色の違いって何で生じるんだろう。

 リーダー格と手下とか。

 ポーチに収め再び歩みを進めると、何かが向かって来る気配があり、目を凝らし耳を澄まし方角と姿を確認すべく立ち止まる。


「斜め前方。数は一匹か」


 黒い影が視界に入るけど、なんか、やたら大きくない?

 徐々に近付いてくるそれは、蛇のような頭と首の長さに足が生えてる。トカゲとも違うし足が八本もある。妙な化け物で鎌首を持ち上げると、高さが三メートルを超えてるし。

 あれは無理だ。相手が大きすぎる。


 そっと後退りし逃げる算段を整えようとしたけど、気付かれてるんだろうね、猛烈な勢いで向かって来る。

 木に足がぶつかってもお構いなしだ。


「エルドクロット!」


 剣の切っ先を向け火の玉を放つと、レベル一の時より速度があり、大きさも二十センチくらいになってる。

 勢い飛んで行く火の玉が化け物に直撃すると、一瞬その場に留まるも火が消えると、再び猛烈な勢いで向かって来た。


「全然怯まない」


 逃げ切れるか分からない以上は、何とか迎え撃たないと。

 エルドクロットを連発すべく剣先を向け片っ端から放つ。秒間二発だった火の玉だけど、今回は秒間三発は発射できてるみたいで、次々化け物に直撃してる。

 たぶん有効じゃないんだろう。それでも、あ、そうだ。


「イスノーラル!」


 散々炙って次は霜柱の攻撃だけど、レベル一だと使い物にならなさそうだった。

 でもレベル五なら、と期待して連射して試すと、自分から四メートル程度の場所に氷の壁。


「え、何それ」


 連射して発生した氷の壁は発射した分だけ、積み重なり厚みを増す感じだ。


「ただの氷の壁じゃん」


 攻撃に使えるかと思ったけど、こんなの視界を塞ぐだけで意味がない。

 ああ、でも足止めには使えるかも。

 続いて連射し続けると衝撃音が響き、氷の壁が破壊されてるし。やっぱ役に立たない。


「エルドクロット!」


 火の玉を連射し勢いを殺すけど、炎を割って蛇の頭が向かって来た。

 ヤバい。ヤバすぎる。

 逃げたいけど背を向けたら間違いなくやられる。剣を頭の上に構え近付く化け物の頭に振り下ろす。しっかり頭を下げて僕を狙ってくれたからね。

 振り下ろし当たった瞬間に魔法を発動。炎が噴き出すと、さすがに怯んだようで後方に仰け反った。

 すかさず腰の位置に構え直し斜め上に切り上げる。

 ザクっとした感触。痛みからだろうか呻き声を上げ、さらに後退する化け物だ。


 手傷を負ったであろう化け物の傷口に向け魔法を連射。

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