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8-12.祭りの季節ですよ!

挿絵(By みてみん)


首飾りを調べたり、余計なことしてたせいで、祭りの日が近付いていた。


この祭りと言うのは、俺が”大鎧”というトート森の神みたいなものに決まったから、その神様の妻を決めるためのものらしい。


ところが、意外に皆あまり気にしていない様子だった。

お前らが夫だと主張している男に、新たに妻が当てがわれるんだぞ!


あまり気にしてない理由はすぐわかった。

「なあ、この祭りまずくないか?」と言うと、

「問題ない。そのためにテーラを行かせた」とリーディアが答えたのだ。


なるほど。対策済みと言うわけだ。


俺はテーラを選べば済むのか。でも、そんな出来レースで良いのか?


「いいのか?そんなんで」


「かまわん。神のすることに人間は口出しできん」


ここで言う神と言うのは俺のことだ。

いや、俺の言うこと誰も聞かないし。


前の、ウグムの聖人も、俺は別の子選んだのに、エスティアになっちゃったんだよ。

たぶん、今回も、俺が誰を選んだところで、テーラが選ばれるのだ。


リーディアは勇者。

エスティアは、ウグムの聖人。

これでテーラが大鎧の妻になったら、これはもう何か最初から仕組まれたことと考えてよさそうだ。

全員、はじめから特別な何者かなのだ。


リナは不意の転送にも気付いて付いてくるし。アイスは何なんだろうか?

パンツがボロボロの勇者? そんなの伝説にならんよな……


========


ユーリとゼストが、何故か拠点に居る。

はじめは遊びに来たんだな、と思って気にしてなかったのだが、何日も居るので不思議に思ってたら、ここに住んでるのだと言う。


「なんでコイツらここに居るんだ?」と聞くと、冒険者やってると、どんどん痩せていくかららしい。

やっぱりコイツら自活能力無いからなと思った。

支度金渡したのにあれでダメだと、冒険者としては食っていけないということだ。

もう少し育てば、なんとかなるかもしれないが、少なくとも、現状は。


エスティアに確認したら、もう少し大きくなったらトルテラ(俺)が、誘惑されるかもしれないから、それまでに追い出そうと言う話になってるらしい。今追い出しちゃ駄目なのだろうか?


それに、もう少し大きくなっても、俺的には、お子様だと思うのだ。


お手伝いの子は11~13歳くらいの子にしている。

あまりお年頃だと、俺が誘惑されて危ないからだそうだ。

10歳以下じゃ労力として弱い。だから11~13歳くらいなのだそうだ。


今は、成り行きで、こうなってるだけで、本来は俺にはエスティアくらいの年の子も釣り合い的によろしくないと思っているのだ。30歳くらいでも、俺から見ればかなり若いのだ。

それより、ずっと若い子と言うのは人としていかがなものかと。


=======


”勇者特急”は、拠点と首都トートピアではなく、トロットの町まで行く。

祭りの前に、トロットまで来た。

町は祭りの準備で人が少ない。祭りはカリオ神殿跡地でやるので、そちらの準備で人が抜けてるのだ。


今日は、ちょっと変わった用事で来た。まあ、祭りに参加するついでの話なのだが。


家の周りを回るだけで喜ぶ家の人に、病気の女の人を診て欲しいと言われてやってきた。

俺の薬は、ケガにはよく効くらしいが、病気は治せない。


そんなの俺に言われてもと思ったけど、あんまりにも熱心に言うので仕方が無いのでお呼ばれしてきた。


なんで病人診るのにお呼ばれなんだ?と思うが、実際そうなのだから仕方が無い。


病気の人の居る部屋で神様を呼んでもてなす儀式と言うのをやって、俺が神様役をやって食ってれば良いらしい。

俺は、呼ばれたら家の周りを一周回ってから家に入る。


そして神坐に座って飲み食いすれば良いと言う。

神様を呼ぶ儀式はもっと前からやってるのだが、俺は呼ばれてから行けばいい。楽チンだ。


呼ばれたのは、俺一人だが、リナとアイスが護衛で付いてきた。

アイスは武術の方は、かなりのレベルらしい。

リナも元々強かったが、俺と合流した後に守り優先の戦法に変えたら、やたら守りが固くなったと言っていた。この2人は対人でも割と強いらしいのだ。

単に強さだけなら、リーディア連れてくればよいのだが、アレはトラブルの元になる。


俺が酔っ払って倒れても、裸の女が出てきても、ちゃんと守ってもらえるということで、やってきた。


出されたものを安心して飲み食いしてたら涙が出た。

この世界にこんなに美味いものがあるなんて……まあ、もちろん、手に入る最高のものを出してくれてるのだろうが、日頃の食事とはかけ離れた旨さにびっくりした。

平民の家で、こんなものが出されるとは思わなかった。


俺とリーディアは、豪華なもの食う機会があるが、リナとアイスは、領主様に招かれて以来だろう。


平民の括りで見たら大変なもんだ。

最近では、特に貧乏でもない俺たちでも、毎日野草風味の茹で芋食ってるのに、なんか、ちゃんとした料理が出てくるのだ。


俺は油に飢えてるのだ。

横浜に住んでた時は、揚げ物とかうんざりだったのに、ここに来たら油ものなんて滅多に食えないのだ。

揚げ物なんて数か月ぶりに食べた。


どんだけ金かかってんだよ!と思った。俺は神様役だから特別だけど、リナとアイスにも、他の人と同じ御馳走が出てた。

リナは平然としてるように見えるが、実は感動してそうだった。

アイスは「スゲーうめースゲー」とか言ってたので、俺は2人を見てとても満足した。


すると、例のトート森の伝統の囲んで回る踊りが始まった。

やっぱり、あの踊りは、元は神様に捧げる踊りなのだそうだ。

神座と病人は真ん中なので、俺が囲まれる役だ。


この踊りには、何か秘密があるのか、そもそも俺用だからなのか、なんか、いろんな子が回って踊ってると、どの子もかわいく見えてきて、竜宮城にでもいる気になってきた。


そういや、浦島太郎って亀を助けたのになんで竜宮城なんだ?

もしかして、実は日本でも竜の世界とかあったのだろうか?


回ってる中に、なんか見慣れたかわいい子が居る!と思ったら、テーラだった!なんだテーラ、テーラのくせに、かわいいじゃねーか!いや、踊ってると可愛く見えるのか?


元から可愛いけど、いつも俺に酷いことをする子なので、かわいい子枠に入ってなかったのだ。


久しぶりに酒飲んだせいか踊り見てたらテンション上がって、テーラが俺の手を引くので、一緒に病人の周りを回った。

俺は日本舞踊とか全然知らないのに、どういうわけか、日本の伝統芸能かよ!って感じの踊りで病人の周りを舞って回った。そして倒れた。


そんなに飲んでなかったと思うけど、久しぶりだったから効いた、効いた。頭がぐるぐる回った。


========


そのまま寝てしまったのだが、起きたら大騒ぎになっていた。


竜が出たとか出ないとか、病気がなんだとか、もう大変なことになっていた。

この部屋にどんだけ人が詰まってるんだよ!って感じで、通勤ラッシュの電車と比べたらたいしたことないが、凄い人数が詰まってた。


この世界、人が少ないのだ。満員電車2両くらいで1つの町の住人が全員入ってしまうほどに。


なので、これだけの人数が集まると言うのは、明らかに異常事態だった。


俺は別の部屋で寝ていたので、ここには居ないことになってるのだが。


神が舞ったので、竜が来て病気が治ったと言うのだ。神というのは俺のことだが。

確かに病気で寝てた人に会ったけど元気そうだった。

不治の病でだいぶ危ないとか言われてたらしいのだが、俺が見た限り、普通に元気そうだった。


「ありがとうございます。なんとお礼を言って良いやら」


泣いて礼を言われるのだけど、俺は食って騒いだだけなので、違和感が凄いのだ。

後で、また悪化しましたとか言われても困るんだが。


竜は大変巨大なもので、町中どこからでも見えるほどの、大きさだったらしい。

竜が出たのは数秒くらいだったようなのだが、目撃者がけっこう多かったので、見間違いでは無さそうなのだ。


しかも四方から目撃されていて、竜が出たのはこの家の近辺なのは間違いないと言う。


だとすると俺が呼んだのだろう。

あの不思議な舞は召喚術? 俺は召喚術師なのか?

俺は舞を知らないのに舞ったことを考えると、誰かに操作されたんだろうか?


========


騒ぎが収まるまで数時間待たされた。延々お茶飲んで過ごすのだが、見つからないようにトイレにも自由に行けないのだ。お茶飲みまくってトイレ我慢するという、まるで拷問のようだった。


帰るときもルートに決まりがあって、その順番で家の外に出なければならなかった。

ルールはよくわからなかったが、案内通りに外に出た。


リナとアイスが着いてきたらスゲー勢いで怒られてた。

俺のルートと違うルートで出ないと駄目らしい。


思ったんだが、ある程度の条件に合う人が作法通りに神様役やれば、勝手にそいつが踊って竜が出る仕組みなんだけど、条件に男の老人とか入ってるだけなんじゃないだろうか?


一応、この儀式には神様役は存在しなかったことになっている。

通常は儀式に神様役は居ないので、神様役付きでやる方が珍しいそうだ。

おかげで、俺は居なかったことになっていて、バレずに済んだ。


だけど、ちょっと心配なことができてしまった。

神と言うのは、この土地なので大鎧のことなのだが、あの儀式は、大鎧が満足すると舞うのだそうだ。

料理を出し終わったら神役の俺にテキトーに舞わせるつもりが、俺が勝手に舞って竜が出たので、神に違いないと言われたのだ。


既に、先代領主から大鎧認定受けてるけど、民衆には浸透してないのか?


リナたちと合流したら、さっさと帰ろうと思って待っていると、背中に誰かが抱きついてきたので、リナかと思ったらテーラだった。


そして「私が一番」と言った。意味分からん。


なんか、昔の記憶がよみがえって、メロディー付きで頭の中で再生された。

私が誰より一番♪ 俺が子供のころやってたアニメのオープニングだ。鬼っ子の宇宙人が、地球を侵略しに来て、ダメな主人公が地球の運命をかけて、鬼っ子と鬼ごっこするやつなのだが、原作だと鬼っ子は2話には出ないゲストキャラなのに、いつのまにかメインヒロインになっているのだ。


それはそうと、全然意味が分からん。何故テーラが一番なのだろう?


とりあえず、今日はオリアン神殿跡地の、お堂に帰る。


お土産たくさん貰って帰った。

お土産には、人間用の凄い御馳走の残りと、銀貨が2枚入ってたのだ。


神様用のご馳走は神様専用なので、お土産にならないらしい。

人間用の御馳走の方は、女共が凄い勢いで分けて食べてた。


銀貨は俺が貰って良いというので、また念願のパンツが買える。

アイスのが、だいぶへたってきてるのだ。


それにしても、あれだけの儀式やって何故銀貨2枚?という中途半端感はあるが、正直有難かった。


俺は心底神様役やりに行って良かったと思った。

銀貨2枚あればパンツは6、7枚くらい買えそうだ。色なしのやつなら。


パンツは後日買いに行った。

アイスは色付きを欲しがったが、色なしで済ませた。

相変わらず、色付きは供給不足で異様に高価なのだ。

勝負しないときは、色なし穿いとけと言っておいた。


========


祭りは何故か、妻を選ぶ必要が無くなった。

よくわからないが、俺が舞って竜が出たから、すでに終わってしまった話らしい。


神がすでに妻を選んだってことらしい。妻ってテーラのことか?


妻を選ぶと言う重圧が無くなると助かる。

気持ちが軽くなって、珍しく踊りを楽しめた。


俺が神様役なので、周りを女の子が回りながら踊ってるんだけど、元々俺用だからなのか、皆可愛く見える。30人も40人も居るけど、もう本当に皆、超可愛い。


もう、全員優勝で良いか!とも思ったが、一応、踊りを見て一番かわいい子を指名した。


今回は珍しく、その子が優勝になった。

表彰の時、抱き着かれて、ちゅっとされたので俺はいきなり倒れた。


========


俺が指名しなかったせいだと思うが、しばらくテーラが口きいてくれなくなった。

あのとき言ってた”私が一番”って、踊りで私を一番に選べって意味だったか!!


だって、あの子踊り上手いし可愛いんだよ!

テーラだって10番以内に入るくらいは可愛かったし、踊りも上手かったけど、もともとキタキタ踊りに慣れてるから、踊りの雰囲気がキタキタ踊り風味なんだもん。


なんかちょっと浮いてて違和感あるんだよ!本人気付いて無いようだが。


ただ、その後もたまに背中にくっついてきては、「私が一番」とか言うようになった。


これには、何の意味が有るのだろう?


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