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8-11.ダシの素(後編)

挿絵(By みてみん)


拠点で何があったか聞いた。が、さっぱり話が進まない。


「それが……」

「テーラの首飾りなんだけど」


「温泉……お湯にね、首飾りが、その……」


よほど言いにくいことらしく、話がちっとも進まない。


「すまない。この私としたことが」とかリーディアが言い出す。

いや、そういうのはいいから、何があったのか話してくれよ!と思っていると、ようやく話が進み始めた。


「この首飾り」

テーラが差し出す。


この首飾りのせいで、何かが起きたらしい。


「これが?」と言うと、テーラが「匂いが薄くなって」と答えた。


は?意味が分からん。


「湯につけたら匂いが取れたのか?」と言うと、テーラが悲しそうに頷いた。


何故悲しむ。意味が分からん。

それと昨日の酔っぱらいみたいなのと何の関係があるのだろうか?


「それを湯につけたら、なんか変なんだよ」とアイスが言った。

「なんか、お湯から出たくなくなって、困ってたら……」とリナが言ったが、そこで話が止まる。


何があったのだろう。

何か悲しいことが?と思い「困ってたら、なんだ?」と聞くと、


「でかいのが来て、温泉の湯飲んだ」とアイスが答えた。


すげー!びっくりするほど、ぜんぜん悲しくない!!

とりあえず1つわかった。ポチは、あのとき、温泉の湯を飲みに行ったのか。


根気強く話を聞くと、こういうことらしい。


首飾りを湯につけて、その湯に入ると、いやーんな感じになる。


1行で済む話にどれだけ時間使ってるんだよ!!!と思った。

もうコイツらに聞くのは諦めた。

この首飾りは、元はと言えば、イグニスに貰ったものだ。

ずいぶん前に迷宮ではじめてイグニスと話したときに、駄賃に財宝やるから勇者装備探してこい的な感じで、いかにもテキトーに集めたもの的なものの中に含まれていたものだ。


コイツ(イグニス)に聞いても、意味ある答え返ってくるかな?とは思ったものの、一応聞いてみることにした。

ポチに転送で拠点に送ってもらうとイグニスがオマケで付いてくる。

まだ帰っていないので、ここに居るのだ。


イグニスに「これ何かのアイテムか?」と聞くと、

「知らぬ。迷宮に挑んで、命を落としたものが持ってきたものではないか?」と言う。


そして、首飾りを手に取り、匂いを嗅ぐ。ふんふん。

まあ、コイツは中身が竜だから仕方ない……と思っていると、次はアイスがふんふん匂う。

次はリナが、エスティアが……


もう俺は驚かない。この世界の女は匂いを嗅ぎまくるのだ。そういうものなのだ。

特に俺の周りに集まる女は、加齢臭が大好きなのだ。


凄く簡単に言うと変態なのだ、匂いフェチなのだ。


一周するとイグニスが「魔力を貯めるアイテムではないかの。使い方は知らぬが」……と言った。


それはにおい嗅いでわかる情報なのか!!と心の中で突っ込みを入れた。


魔力を貯めるアイテムか。

貯め方は分からないが、取り出し方は分かる。湯につければ良い。

単に温めるだけで良いのかもしれない。



このアイテムのことはちゃんと調べてみようと思った。

だいたいこの世界のモノはスケールが小さい。

火の魔法は頑張るとローソクに火が着くレベル。

シールド魔法は慣れれば雨を防げる程度で、敵の攻撃から身を守ることはできない。

竜は、でかい子犬だ。


そんな世界で湯につけるといやーんな感じになるって、恐ろしく強力なアイテムだ、伝説級の!

何か特別なものに違いない!そう思ったのだ。


試しに俺も匂いを嗅いでみたがよくわからなかった。特に匂いなんてしないのだが。


テーラにあげたものなので、返すが、ふんふん匂って「やっぱり匂いが薄くなった」と言って悲しんだ。


「また魔力を貯める方法を調べてみよう」と言うと表情が多少穏やかになった。


========


そんなに簡単に、分かるわけないとは思ったが、試しに町の道具屋に首飾りを調べてもらう。


「おお!これは、勇者にしか使えぬと言う幻の!」


いやいや、幻のアイテムを、なんで町の道具屋が判別できるんだよ!!!

そこにも驚いたが、なんで勇者シリーズが迷宮の拾得物に混ざってるんだよ!!と思った。


それに、勇者装備探して来いと言ったイグニスから貰ったものだ。

勇者装備探して来いって言って、そのとき渡すのが勇者装備っておかしいだろ、それ!


これが勇者シリーズってのは嘘臭く感じた。



勇者と言えばあの人。キャゼリアに聞いてみよう!


白い巨人の生け捕りの件放置したままなので、本当は今はあんまり会いたくなかったのだが、ダルガノードまで来て、キャゼリアに見てもらった。


今は勇者特急……と呼んでるただの馬車で行けるので、とても楽になった。

とは言え、なぜ皆付いてくるのか。6人でぞろぞろとキャゼリアのところに行く。


例の首飾りを見せて「これ何だかわかるか?」と聞くと、一目見て「それは!」と言って、首飾りを持って奥に引きこもってしまった。助手も一緒に。

一目で、いかにも怪しいことが分かる一品らしい。


俺たちはまったく気付かなかったのだが。イグニスも。

町の道具屋や、キャゼリアには、なぜわかるのだろう?



待ってる間、真剣な表情でエスティアがお菓子をバリバリ食べる。

リナも真剣な顔をしてバリバリ食べる。


お前らは、ハムスターか何かか!と思ったがとりあえず何も言わないことにした。

リーディアは窓際でカッコイイポーズをとっている。アイスは暇そうで、テーラはちょっと沈んだ感じだ。


他はともかく、リーディアのは意味が分からない。なぜそういう無駄なことをする!


菓子が食い滅ぼされてしばらくすると、やっとキャゼリアが出てきた。

「これは興味深い。どこで手に入れたの?」と言うので、迷宮で待つ竜のところに行ったとき貰ったものの中に入っていたことを話す。


すると、キャゼリアは「これは勇者の装備かもしれない」と言った。

助手は得意げな顔をしてキャゼリアの横で頷いていた。


だから、なんでそんなことわかるんだよ!と思った。


助手が「うふ」をやってから何か言おうとしたが、キャゼリアが首飾りを握りしめて、凄く欲しそうな顔してるのでテーラが慌てて取り返す。


「ねぇ、テリシア、それ、ちょっと調べさせてくれない?」とキャゼリアが言うが、テーラが逃げた。テリシアはテーラの本名だ。


勇者の首飾りって違和感あるが、女ばかりの世界だから勇者装備に首飾りがあるのか……


巨人の生け捕りの話もあるのだが、とりあえず逃げるように帰ってきた。


また例の如く、助手が「まだお話が!」と言っているが、とにかく脱出してきた。


========


エスティアとリナとリーディアは、菓子を仕入れに行った。

ついさっき、バリボリ食べてたのに、まだ買うのかよ!と思った。

菓子買う金あるなら、食事のレベルアップしてくれよ!


アイスは屋台の焼き鳥みたいなやつ買いに行った。

お前はその金でパンツ買えよ!と思った。


でも、もしかしたら、気を利かせて、テーラと2人きりにしてくれたのかもしれない。


テーラに「勇者装備だけどどうする?」と聞いてみた。

俺は勇者装備とか嫌いなんだよな……と思うのだが。


テーラは「これは私の……トルテラに貰った」と言った。

どうやら手放す気はないようだ。


勇者って名前付いてると呪いのアイテムみたいじゃないかと俺は思うのだ。


するとテーラが首飾りを俺に差し出したので、やっぱ返す気になったのかと思ったら俺の首に付けた。

俺は呪われた気がした。なんだか脱力感を感じる。


やっぱコレ呪いのアイテムだと思った。


脱力してたら、テーラが外してくれた。


意図が分からなかったが、ふんふんとにおって「魔力の貯めかたが、分かった」と言った。


俺からチャージするのか。なるほど。

前に俺が持ってた時にチャージされてたんだな。


なんで魔力の貯め方に気付いたんだろうか?



エスティア達が戻ってきた。

またいっぱい買い込んで、散財しやがってと思うのだが、リーディアが買ってくれたのかもしれない。

うちの経済状況は、俺には知らされてないので、よくわからないのだ。


========


あの呪いの首飾りだが、それの使い道はなんなんだ?と思って、テーラに聞いてみた。


すると、答えはずいぶんまともで、普通に「薬作るのに使う」と言った。湯に溶け出すなら薬にも使えそうだ。頭良いな、と俺は思った。

ところが、エスティアは「それ使うと全部惚れ薬になるから辞めなさい」とか言ってた。


だから、なんで惚れ薬なんだよ!



「なんで使い方分かったんだ?」とテーラに聞いてみた。

すると「トルテラが勇者だから」と言った。


「俺は勇者じゃなくて、神とか大鎧の方じゃないか?」と言ったのだが、それには答えてくれなかった。


やはり、テーラはまだ俺の知らない何かを知ってるような気がする。


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