8-10.ダシの素(前編)
思い出したことを、皆に報告しないと。
急いで、拠点に戻る。
祭りまで、俺を帰す気が無かったようで、少々ごねられたが、一度戻り、また来る約束をして帰らせてもらった。
祭りは20日後だと言うので、歩きだと厳しいが、勇者特急を出してもらった。
”勇者特急”名前は凄いが単なる馬車だ。
ただ、今回は見張り用の馬車も随伴して、イマイチ特急って感じではなかった。
今回の帰宅には見張りが何人も付いたが、見張りの方々は、少し年齢層高めの人達になった。
祭りに出ない人……つまり、妻候補から外れる人ということなのだろうが、むしろ俺にはこのくらいの子の方が釣り合ってると思うのだが。
拠点の皆には、俺が帰ってくることまで伝わっていたようで、出迎えられた。
「ごめん、ディアガルドに呼ばれて、トート森に行っていた」と言うと、
「それは知っている」とリーディアが答えた。
「中で話しましょう」とエスティアが言う。
エスティアが怒ってたら、どうしようかと思っていたが大丈夫だった。
見張りは2人だけ中で監視、残りは外で待機になった。
見張りの厳重さを見るだけで、何か大変なことが起きていることは、言わずともすぐに伝わった。
1人だけ、空気読めないやつが居たが。
「髭伸びてる。俺剃っていいかな?」とアイスが言う。
ある意味安心した。アイスがまともなこと言うほどは逼迫していないと言うことだ。
「それはあとでテーラと決めてくれ」と言い、アイスの話は無視して、事の経緯を説明する。
大鎧に認定されたことは既に伝わっている。大鎧をここに直接届けてもらったからだ。
祭りの話をする前に、1つ確認しておくことがあった。
「そもそもなんで、大鎧の書の追加部分隠したんだよ」と言うと、
「そうか、まだ言ってなかったか」とリーディアが言い、キリっとしたキメ顔をした。
言ってなかった、キリ、じゃねーよ!と思った。
※大鎧の書の追加については、[6-13.大鎧の子] 参照
誰も反応しないところを見ると、全員知ってたようだ。コイツら全員グルだ。
どうしてやろうかと思ったが、外が騒がしい。
トート森の見張りと、ダルガンイストの兵と揉めている。
俺はトート森での祭りばかり気にしていたが、こういう問題もあるのだ。
ここは中立地帯で、各領のバランスを保った状態で成り立っている。
ある領の見張りがいきなり増えただけで揉め事が起きる。
もう俺は心底めんどくさくなった。
「何を揉めておるのじゃ」
イグニスだ。既に面倒なところに、さらに厄介なのが……と思ったが、今だけはイグニス大歓迎だ!
「頼む、イグニス、今すぐ皆とボス部屋へ」
「おお!お主もやっとあの部屋の良さがわかるようになったか、では参ろう。今すぐ参ろう」
驚くほどうまくいった、皆を連れ、一気にボス部屋に飛ぶ。
「うわぁぁぁぁ」「ギャー」「うおーーーー!」
なんかいろいろな悲鳴が上がったが、ボス部屋に来た。
これも転送の一種ではあるのだろうが、いきなり空にスポーーーーンと放り投げられる感じで、凄く心臓に悪いのだ。
真っ暗で、硫黄っぽい臭い。ボス部屋だ。
「何度やっても慣れないな」「心の準備位させてよ」「すげー!一瞬で来るんだぜ!」
なんか、それぞれいかにもそれっぽいことを言っている。
とりあえず、ディアガルドに挨拶する。
「お前本当に外出られるんだな」というと、ベロンと舐められた。
いや、ガン無視でも良かったんだが。
つい先日、無理やりカリオ神殿跡地に呼び出されたのだ。実際にはカリオ神殿跡地ではなく、オーテル神殿跡地に呼び出そうとしたのだが、俺はカリオ神殿跡地に行ってしまった。
そのとき、カリオ神殿跡地にディアガルドが現れたのだ。
当然大騒ぎになった。
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今回は、拠点では邪魔されずに皆に説明することができなかったので来たのだ。
ここなら見張りも付いてこれない。
一応、ボス部屋行くことは伝えたので、大騒ぎになっていないとは思うが……騒ぎになっていないことを祈る。
それにしても、ちょうど良いタイミングでイグニスが来てくれて助かった。
とりあえず、大鎧の書に子のことが書かれてしまったので、大鎧の妻を決める祭りが開かれることを皆に説明した。
凄く驚くわけではなく、皆微妙な表情をしている。コイツら何か俺の知らないことを知ってそうだ。
知らなきゃ大騒ぎするはずだ。
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イグニスと俺が居れば、皆を連れてここに一気に飛ぶことができる。
俺は特別温泉が好きなわけでは無いが、ポチに会いに来る約束があるので、月に一度や二度は来なければならない。
会いに来ないと、また俺一人召喚される可能性があるので来ているのだ。
ボス部屋の扉は俺は外からしか開けられないので、一人で召喚されるとイグニスに迎えに来てもらわなければならないのだ。
俺は……というのは、前回閉じ込められたとき分かったのだが、実は扉を内側から開けることができないのは俺とイグニスだけで、皆は開けられるのだ。
ただし、ポチが召喚できるのは、ポチのオマケであるイグニスを除くと俺だけで、あとは俺の同行人をセットで連れて来られるだけなのだ。
イグニスが居ないと転送で屋敷に戻れないので、いつもイグニスと俺はセットで来ることになる。
他に誰が行くかで揉めるので、だったらと行ける者全員で来ているのだ。
ルルはポチが怖いので、来ないことが多い。
今回は急用で来たが、皆、以前にも何度かは来たことがある。
それはそうと、召喚も扉もなんで俺だけイグニスと同じ扱いなのだろうか?もしかして、俺ってポチの付属品なのか?と思ったが、ポチと子を作れるらしいので、それも違う気がする。
俺がポチと遊んでる間暇なので、女たちは温泉に入っている。
で、今、俺はポチのブラッシング。ポチが喜ぶのでやっている。と言っても手の届く範囲なので、ポチがゴロンと寝転がってる状態でも一部だけしかかけれないのだが。
ブラッシングは気持ち良いらしく、イグニスもポチに戻っているので、そこらにイグニスの抜け殻が転がっている。何回か前に来た時に、イグニスが「妾もブラシかけして欲しいのう」と言っていたので、本体に戻れば良いのではないかと言ったら、その手があったか!といきなりその場に倒れた。
本体であるポチに戻ったためだ。
イグニスの体で横になってから、ポチに戻れば良いと思うのだが。
毎回イグニスに戻ったとき痛くないのだろうか?などと思った。
ブラシかけてると間違えて、口の下の髭に触ってしまったり、触らなくても何故かべろんとされるので、俺はだいたい、これが終わった後に温泉に行く。
女たちが上がってくるのが遅いような気が……と思っていたら、ポチが起き上がり。ドスドスと温泉の方に行ってしまった。入浴中か着替え中のはずなので、俺は暗視も遠目も使えない。
見られないし近付けない。
仕方がないので、ぼけーっと待っていた。
しばらくしたらポチが戻ってきた。
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少し時間をさかのぼるが、女たちはいつも通り温泉に浸かっていた。
湯に浸かる時間はけっこう個人差があり、アイスはすぐに上がってしまうことが多い。
風呂に慣れてるのか、リーディアは長くつかっているいることが多い。
ところが今日は誰も上がらない。
なんだか体がジーンとしてきた。温泉効きすぎなんじゃ。
とエスティアが思ったタイミングで
「なんかおかしくないか?」リナが言う
「これかな?」とテーラが首飾りを見せる
確かに濃厚な何かを感じる。
湯に何かが溶けだしたようだ。
「テーラのそれ、ただの飾りじゃなくて何かのアイテムかも」とエスティアが言った。
皆は知らなかったが、公儀髭剃り役のテーラは、この首飾りを擦るとトルテラの匂いに似た匂いがすることを知っていたのだ。
それで、この首飾りを欲しがったのだ。
所有権は明確になっていないが、テーラがずっと持っているものだ。
外すのを忘れて湯につけてたら、こんなことになってしまったのだ。
いつもならすぐに上がってしまうアイスが、心地良すぎて湯から出られずにいた。
それもあり、湯から上がった方が良いか?でも、気持ちいいしこのまましばらくつかってようかと迷っている頃に、タイミングよく救世主が現れた。
ドスドスとポチがやってきて、ジャボジャボと凄い勢いで湯を飲み始めた。
女たちは慌てて湯から上がる。
牙の長いポチは犬や猫のように舌で掬い上げるようにジャボジャボと飲むので、辺りには盛大に湯が飛び散る。
水面が半分の高さになった頃、ポチはドスドス戻っていった。
風呂から上がった女たちは、湯上りのぽわっとした感覚とは別に、なんとも言えないイヤーンな感じが残っていることを感じていた。
「うひゃー」 上から落ちてきた水滴が当たってアイスが騒ぐ。体が敏感になっていて、ちょっとした刺激がとても強く感じられる。
いつもより、だいぶ苦戦しながら服を着る。
テーラだけは首飾りの匂い無くなったらどうしよう……というのが心配で、あまり効いてなかった。
服を着た後、
「ふう、コレけっこうキツイかも……」とエスティアが言った。
「確かに……」 リナは一言で返す。
この2人は特に強く効果を受けてしまったようだ。テーラの近くにいたからかもしれない。
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いつもとは違う感じで、ヨロヨロ、ゾロゾロと女たちが戻ってきた。
皆上気している。ジトっとした目つき。
あ、この目つき知ってる。やばい奴だ とトルテラは思った。
「酒禁止だぞ」
「お酒じゃないのよ……」と言いつつ、トルテラに近付こうとするリーディアをテーラが止める。
「ごめんなさいトルテラ、お酒じゃないの。でも、危ないから離れてて」とテーラが言う。
お酒じゃないのよって、口調までいつもと違うが、本当は本来はこっちの口調で、いつものは無理して喋ってるんじゃないか?と思った。素のリーディアは別の者なのかもしれない。
エスティアとリナは、膝に手をついてふうふう言ってる。おじさんが階段上って息が切れたみたいなポーズではあるが、何とも色っぽかった。
俺も凄くドキドキしてきて、やばい感じになってきた。
なんかコレ凄くまずい状況なのでは?
理由はわからないが、何かが起きてるのだ。
ここで匂い出たら絶対襲われる。そう思った。
なんか凄く性的な意味で危険を感じるのだが、困ったことにボス部屋は俺は内側から開けない。
だが、イグニスと一緒なら転送で出れる……ポチが協力してくれればだが。イグニスは人間の体で俺を性的な意味では襲う心配は無い。ここはひとまず、ポチに外に転送してもらうか
……と思っていると、ドスドスとポチがやってきた。そういや、ポチにも同じ症状出てたら最後だな……と覚悟を決めた……。ポチの顔が迫ってくる……咥えられた。
ポチに咥えられ、いつものポチスペースに戻るとポチは寝転がり、俺はポチの腕と腹の間に差し込まれるように寝かされた。
ポチが守ってるれる……んだか、確保されたんだかわからないが、とりあえず安心な気がした。
ありがとうポチ。……が、ポチは毛が固いので実は寝心地はあんまり良くなかった。
朝になったら、皆だいぶ回復していて、少なくともジト目では無くなっていた。
大丈夫そうなので、ポチに屋敷まで転送してもらった。
まだ敏感状態が少し残ってたようで、転送の絶叫がいつもより凄かった。




