8-6.大鎧トラップ(前編)
ある日の夜。トルテラが留守の間に女子会が開かれていた。
今日はトルテラが”男子会”に行ってしまったからだった。
この世界では大人の男は少なく、男の友達は珍しいので、”男子会”に行ってしまったのだ。
リナがリーディアに「今回の依頼には感謝している」と礼を述べた。
リーディアは
「男は死ぬ。トルテラが神であっても、人の世から去るだろう。それまでの間のことだ」
と言い、蜂蜜酒をぐいっと飲み干した。
蜂蜜酒は量が取れないので、この世界では大変高価なものだが、リーディアは一応貴族でそれを買うくらいの金は持っている。
テーラはリーディアの頭を撫でた。
おそらく、テーラなりの感謝の意を示す行動なのだろう。
この世界では、男は寿命が短い。子を作ると寿命が減るためだ。
勇者の伝承でトルテラは勇者と子を作って幸せに死ぬことになっている。
トルテラが居なくなったらどうするか、そんな話になった。
意外にも、アイスは「俺はトルテラじゃなくてもいいよ」と言った。
皆は、ええ? あれだけトルテラ大好きなのに? と思ったが、
「でっかくて力持ちで、強くて優しくて、いい匂いがして、髭が生える男なら誰でも」と言った。
リナとエスティアは”はあ、そうですか”と思った。
そこで何故かリーディアも対抗して言う、
「わたくしより力強く強い男、そう、手加減しても勝てるほどなら誰でも」
変なポーズを決めて。
かなり酔っ払ってるようだ。
「はいはい。あんたは伝説で子供産むの決まってるでしょうが」
そもそもリーディアに勝てる男が居ない。
この世界では、男女で戦う機会はほとんどない。
貴重な男が兵士として消費されることも無いので、男の武術は部活レベルでしかない。
単なる力比べならともかく、技には大差がある。
※練習試合レベルなら強い男は結構居ます
男女問わず、勇者になる前のリーディアに勝てる者もほとんど居なかった。
今、勇者となったリーディアに勝てる男など世界中探しても、おそらく1人しかいないのだ。
トルテラはご機嫌で帰ってきたが、男子会の方は、それほど飲みまくったわけではなかった。
戻ったとたん、女に囲まれて、さあ、今すぐどれか選べみたいな状況になってしまった。
「お前ら飲みすぎなんだよ!!!」
そこで、深酒禁止のお触れが出た。
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翌日、アイスが深刻な顔をして「話がある」と言いだした。
皆、どうせどうでも良いことだろうと思った。
「俺一晩よく考えたんだけど、俺、やっぱトルテラじゃないと駄目なんだ」
皆思った。”知ってた”
「だってな、でかいし力あるし、強くて優しいしいい匂いするし髭生えるしな」
あの場に居た者は、いや、だからそれはトルテラじゃなくてもいい理由と一緒だからと突っ込みを入れた。
「それに、トルテラは俺のパンツ大好きなんだよ。勝負下着買ってくれたしな。
でもほんとはパンツじゃなくて、俺のことが好きなんだ」
俺は勝負下着など買っていない。
何か理解が間違っている気がした。最後は間違っていないが。
テーラが対抗した。
「トルテラは私のパンツも好き。
私の方がずっと前から”ふわふわのパンツ”履いてたから」
理由はそれかよ!
俺は間違って理解されているように思うのだ。
俺は膨らんだスカート姿のテーラが好きなんだが。
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今では南北合併して、この拠点がウグムの町本体ということになっている。
そこで、ウグムの聖人について調べた。
そんなに詳しい話は無くて、簡単に言うと、戦争が始まるときに踊りを踊って、皆がその踊りに見とれて戦争が回避されるみたいな話だった。
全然違うけど、なんか合ってるっぽい気もする。
四つ巴状態を解決するために、”おっぱい祭り”と言う名のおっぱいとは、あまり関係ない踊り勝負が行われた。
勝敗はどうでもよかったので、エスティアが優勝したことになり、四つ巴状態は解決した。
傍から見ると、エスティアが踊って戦争を回避したようにも見えなくはない。
勇者の伝承と同様に、結果的には合っているのだ。
本当にエスティアが、キタキタおやじ的な聖人なのかもしれない。
しかし、調べた範囲ではウグムの聖人に子供の話はない。
勇者は俺の子を産むのでリーディアは別として、他の子と過ごす時間を延ばすために、子作りは後回しで、もう少し長生きしないとダメなのかもしれない。
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俺はディアガルドのボス部屋に来ていた。
ポチ……ディアガルドに会うためだ。定期的に来ないと困ったことになるためだ。
実は、しばらく前から違和感を感じていることがあった。
イグニスには”星になる”と言えば通じるのだが、イグニス以外は皆、”星など見たことが無い”と言う。
イグニス以外、つまり人間は全員だ。
やはり、俺はイグニス側……人間ではなく竜と同じ特性を持つのか……
俺には浄化の能力がある。その能力はディアガルドも持っている。
そして、俺とイグニスとおそらくディアガルドにも、浄化の際にキラキラが見えるのだ。
これには大きな問題があった。
キラキラが見えると、俺はとっても嫌な気持ちになることがあるのだ。
俺的には、ファンタジー世界の若い女の子は、う○こなどしない。
故にキラキラなど見えたりしないはずなのだ。
なので、ディアガルドのボス部屋に、壁を作りトイレを作ったのだ。2つ。
正確には壁と、トイレを1つ増設した。俺がトイレに行けば両方のトイレが星になるが、壁があるので星を見なくて済むように。
なんというか、量子力学的な感じで、観測されるまで状態が確定しない。
俺が見たとき何もなければ、はじめから無かったという状態が俺の中で確定する。
故にキラキラが見えてはならないのだ。
※シュレディンガーの猫の話ですが、おっさんは故意に意味を捻じ曲げています。
俺の盾は、たぶん大鎧の盾なのだが、この部屋で手に入れた。
ここにあった死体が持ってたものだと思っていたが、死体に近くに有っただけで、関係無いという。
しかも、あの死体は元からあそこにあったもので、ディアガルドは関係ないらしい。
あの扉は、人間は内側からなら開けることができる。
そして、外から開けることはできない。
出られず亡くなったなら、人間ではなかったのかもしれない。
扉が開いたとき、慌てて持ち出したが、そもそもあの盾は誰が持って行っても良いモノだったらしい。
結局最後は大鎧の元に行くからと。
「専用のアイテムと言うのは、本来の持ち主のもとに勝手に届く。
そういうものなのじゃ」イグニスが言った。
キャゼリアも同じことを言ってた。
手放しても戻って来ちゃうのだろうか?
それとも、誰かに押し付ければ、そいつが大鎧になるのか?
いや、大鎧のサイズ的にもそうだし、森に飛んでくる竜の話もそうだし、大鎧の書に書かれている内容も俺に一致してる。
どう考えても俺が大鎧だ。
いや、フラグ的には、こういう時こそ、”違いました”ってなるかもしれない。
”こんなあからさまだったら、謎にならないもんな”などと考えていた
フラグと言うのは、考え事をしただけでも立ったりする。
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トート森での話になる。
「いつになったら取りに来るのでしょう?」 前領主が言う。
「おかしいのう。あの盾は大鎧の盾だと思うのじゃが。
肝心の大鎧を取りに来る気が無いようじゃ。
予定と少しちがっておるようじゃ」
「私もできれば、この目で見ておきたいのです」
「そう言えば、人の命は短いのであったのう。
お主も娘っ子であったのに、もう孫がおる。
そうじゃな、ここは妾が一肌脱ごう」
「何は方策が?」
「あやつ、自分の使命を覚えておらんようじゃ。
お主らが”オーテル神殿跡地”と呼んでおる神殿跡地に呼び出して、
もう一度やり直しさせるかの。
使命を思い出すやもしれぬし、書に何かが書かれるのやもしれぬ」
「それで?」
「妾の役目は迷宮で待つこと。それ以外は知らぬのじゃ」
「それでは、何ができるのでしょう?」
「呼べば来る。竜とはそういうものなのじゃ」と言い、しばし考える。
「はて? あやつは竜であったかの?
まあ、迷宮には来る。きっと竜なのじゃ」とイグニスが言う。
……………………
オーテル神殿跡地に巨大な生き物が現れた。
「う、……竜。生きてるうちに再び見られるとは」
目から涙が零れた。
実際にトルテラを呼びだすことができるかは、やってみないとわからない。
だが、ディアガルドを森に出現させることはできる。
ディアガルドは、完全に迷宮に籠っているわけではなく、たまに出歩くことがあるのだが、あまり人前に姿を現すことはない。
こんなに人の間近に現れることはなかった。
「もう妾の役目も終わる故、終われば2度と会うこともあるまい。
最後のサービスじゃ」
イグニスはそう言った。




