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凡人貴族に転生したのでサステナブルな領主を目指していたら乙女ゲームヒロインがバッドエンドを迎えそうです……やめて  作者: 雲丹屋


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20/20

SS:お花見(4本)

季節ネタSS

今回は母娘でお花見に行く話です。


※本文『』内のみ日本語の発音です。

【花見(P):計画】


「春ね〜。お花見行きたいわ」

「いいですね。お花見」

「でもこの世界に『桜』はないでしょう?」

「『ソメイヨシノ』はないですが、梅や花桃っぽい花木はありますよ。王都で庭園を造ったときに花木園も造りましたから」

「そうなの?観てみたいわ。……でも、そのためだけに王都に行くのはちょっと予算も時間も合わないわね」

「花を観るなら領内にもありますよ。お花見スポット」

「まぁ!ホント?」

「そりゃぁ、自分が観たいですから、子供の頃、植えてもらいました。だいぶ木も育ちましたから、いい感じですよ。季節になると、山間の谷が花で染まります」

「谷一面?」

「はい」

「……桃源郷?」

「いえ、どちらかというと水源地なので水神を祀るために紅梅寄りで」

「ごめんなさい。ネタがわからないわ」

「ドラマ原作の少女マンガは読んでるんじゃないんですか?」

「ドラマ化された少女マンガは全部読んでいるというわけではないのよ!」

「くっ、名作なのに……」




【花見(D):実行】


「わぁ、凄い。花びらと香りで本当に谷に花の色の霞がかかっているみたい」

「最高のお花見日和ですね~」

「これ、全部植えたの?」

「領主って、土地と権力と資金があるんで、子供の我儘レベルでけっこう村おこし規模の事ができちゃうんです」

「村おこし……?」

「この花の後の果実を加工した特産物で、過疎ってた近隣山村にいい感じに現金収入ができました」

「そういうこと考えるのは、子供の我儘じゃないんじゃないかしら?」


「あ、お前たち、その木の下にベンチ組み立てて、緋毛氈敷いて。日傘は日よけ以上に見栄えが大事だから配置に気をつけて」

「酒樽はどこに置きましょう」

「今年は自分は母上とここでゆっくりお花見したいから、宴会組は例年の場所で勝手に始めていいよ。私達の分だけお弁当とお茶置いていって」

「承知しました」


「皆さん、毎年ここで宴会してるの?」

「そうですね。父上は仕事で来れないんですが、食客の先生方や鍛錬所の皆は毎年”奉納試合”の名目でここに来ています。この先に滝があって、その前に大岩がちょうど舞台風になってるんですよ。そこでトーナメント戦をやって優勝者が酒盃と賞品の酒樽を貰います」

「へー、面白そう」

「あっちは花は少ないので花見には向いていないんですが、お弁当食べたら観に行きましょうか。今日のお弁当は『料亭懐石風幕の内』ですよ!」

「……前から聞きたかったんだけど、昔、私の”お弁当”作ってくれたの、あなたよね?」

「今日のはパワーアップ版です。自重なしのお花見スペシャルですよ。権力を濫用しました」

「ふふ。なんだか泣けて来ちゃった。早く見たいわ」

「見よ!花びら型の透かし柄の入った薄紅色のグラデーション風呂敷に包まれた三段重幕の内弁当!」

「おおっ!『デパ地下』で予約するやつ?!」

「くぅ~っ。この素晴らしさを理解して、目の前で喜んでくれる相手がいると、作りがいがあるっ」

「……幸せね。私達」

「仕事で来れない父上と、王都に出張中のうちの旦那には悪いですけどね」

「気持ちだけ愛を贈っておきましょう」

「では」

「いっただっきまーす!」

「お花見最高」




【花見(C):問題点の検証】


「で、今年の優勝者は?」

「また拳王殿です」

「くそっ、あのおっさんを出場禁止にしろよ」

「邪竜2キル組は殿堂入りさせないと」

「せっかく今年は隊長も剣聖も出張中でいなかったのに、あのおっさんが一人でイキるだけの結果で終わっちまった」

「龍の奴は、水難避け祈願に龍神が出場はおかしいっていうお嬢の謎理論で、大人しく出禁になったのに、ちくしょうめ」

「まぁ、酒が掛かった試合に、あの拳王(酒飲み)が出ないわけねぇからなぁ」


「わはははは。今年も奉納酒はいただくぞ」

「新年に神前に酒樽奉納しているのって、春に拳王に全部持っていかれるためになっているじゃねぇか」

「どうせすぐ飲んじまって1年も持たんがな」

「もったいない。信仰心もないくせに」

「二級酒にしろ」

「わはは。石舞台を壊さん力加減でっていうルールの範囲で手加減してやってやっとるんだから、勝て。勝ってから言わんとすべて負け惜しみだぞ」

「くそっ、今日はコンディションが悪かったんだ」

「俺は春先は本調子じゃないんだ」


「それじゃあ、お前たち、夏や秋にもやるか?奉納戦」

「お嬢?!」

「なんですかそれ。やります!」

「ふん。酒がないなら出んぞ」

「お、それならいけるかも?」

「くぅ~、でもそれはそれで勝ち逃げされるようで悔しい」

「飲み逃げだろう」

「心配するな。賞品の奉納酒は出すよ」

「おい。年始の奉納酒を分割するなんてつまらないことはするなよ、お嬢」

「大丈夫。そんなことはしないから」

「え?だからと言って、新年に数を奉納しすぎると、置き場がないから、神殿に迷惑がられますよ」

「そこはちゃんと考えてるから、任せて」




【花見(A):対策の実行】


「なるほど。奉納回数を増やすのね」

「新年のものはこれまで通り。そして春の花見の後には、花の後の果実を使った果実酒を奉納。夏の終わりにこれを賞品に試合。その後はワインを奉納して、冬の始めに『ボジョレー』でもう一勝負。こうすれば、これまでと産地と酒種が違うメーカーも、神殿奉納の宣伝効果のご利益を得られるし、奉納試合の会場も季節ごとに別にして興行化すれば、観客動員による経済効果が各地で見込まれるんで悪くないと思うんだよ」

「『相撲』の巡業みたいな感じ?」

「いいですね。イベント性を高くして、露天と公式予想屋(ブックメーカー)出しましょうか」

「信仰心が希薄ね~」

「元聖女様に言われると照れるなぁ」

「はぁ〜。母と娘の会話じゃないわ」

「娘らしくなくて、さーせん。そうだ!いっそのこと王都の神殿にも奉納酒の風習を教えて広めましょうか。あそこ、邪竜事件で評判落ちて寄進も減ってるそうだから、酒造メーカー名や寄進者の名前を書いた派手なラベルをつけて酒樽を飾る行事を教えてやったら、喜んでやりそうだ。そしたら王都でタダ酒興行が一回うてる気もするし」

「発想が罰当たりに『広告代理店』ね」

「神殿の膿を出しすぎて力を削ぎ過ぎちゃったから、変な宗教が余所から入ってこないように、もうちょっとバランスを取りたいって、この前、特務の元上司が嘆いてたんですよ。よし。もうちょっと具体的に詰めてから手紙で教えてあげよう」

「まずはお父様に相談しなさい。あの人、そういうバランス感覚は確かだから」

「はい、母上……あ、なんか家族っぽくていいですね、こういうの」

「話題は、家庭の団欒からはほど遠いけどね」




夫二人「なんだか嫌な厄介事の気配が……」

たまにちまちま更新してますが、これ、SSだけ分離したほうがいいかなぁ……。

ちょっと検討してみます。

ブクマしてくださっている方、もしSS移動させて話数変わったらごめんなさい。

拳王のおっさんとかサイドBのキャラを登場させるなら、分離したほうが、本編だけ読みたい人の邪魔にならないんですよね。


なにはともあれ、お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
もーーー!雲丹屋さまと読者の人の掛け合いサイコー! 梅の谷に紅!
[良い点] オチで明かされた数々に笑い、人物紹介で「うわぁ…」と声が出て、おまけSSで侍女さんの旦那は誰!?となりました。面白かったです。 [気になる点] 侍女さん誰の奥さんになったの?サイドBで明か…
[一言] モトネタ お嬢 恐ろしい子  ですね。 興行したら、是非教えてください。(笑) 
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