SS:年末年始(2本)
クリスマスなので思いついたおまけです。相変わらず変なこぼれ話です。
クリスマスに書きましたが恋愛要素は低いです。
※本文『』内のみ日本語の発音です。
【ショートケーキ】
「『ショートケーキ』が食べたかったんです」
「いいわね。『ショートケーキ』」
「スポンジはふんわり。生クリームはよく泡立てて、スポンジの間にも周りにもたっぷりと。絞り袋と口金も使ってきれいにデコレーション。白いクリームの甘さと赤いベリーの甘酸っぱさが、いい感じのこんな見た目ケーキ……って、絵も描いて渡して、うちのシェフに作ってもらったんです」
「なるほど」
「そしたら、でき上がってきたのがコレで……」
「……赤い花びらがトッピングされてるわね。薔薇かしら?」
「『イチゴ』が……『イチゴ』がないんです!」
「異世界だからね〜」
「生クリームはいい感じじゃない」
「間に入っているのは、赤いベリー系のジャム?コンポート?」
「うーん。カシスとラズベリーの間って感じの味がするわね。美味しいわ」
「ケーキとしての完成度は高いんだよなぁ……でも、『イチゴ』のない『ショートケーキ』は『ショートケーキ』じゃない」
「異世界だからね〜」
「自分がこれほどの『ショートケーキ原理主義者』だったとは」
「『日本語』でもない単語よね?『ショートケーキ原理主義者』」
「ああ、でもこれはこれで美味しい。うちのシェフ、またパティシエとしての腕を上げてきたなぁ。くうぅ」
「そりゃあ、毎度毎度あなたに無茶振りされ続けりゃ腕は上がるでしょうね。今度は『ブッシュドノエル』頼んでみたら?」
「『チョコレート』のない『ブッシュドノエル』はなー」
「あなたこだわりが多すぎるのよ」
【ヒイラギ】
「年末年始になにか飾り付けってするの?」
「『クリスマス』がないから、ツリーは飾りませんが、扉に飾る小ぶりな枝飾り程度は趣味で作ってます」
「そういえば『ヒイラギ』っぽい葉っぱの木が庭にあったわね。あれとか使うの?」
「『ヒイラギ』か。そういえばそれっぽいのありますね。今年はあれも使って作ってみようかな」
「それじゃぁ、あいつが冬になると毎年作ってた飾りは、異界由来の神事だったのか」
「私達のいた国では神事っていうほど信仰と結びついてはいない感じの風習だったけれどね。宗教観のゆるい国民性なのよ」
「女神様のご加護を得ている聖女様のお言葉としては不適切極まりないな」
「その分、他国の色々な神話や風習にも寛容で、おまじないや伝承の類も、気に入ったらどんどん取り入れて楽しんでいたわね」
「というと?」
「夏には先祖の霊を迎える自国由来のダンスパーティーを開いて、秋には悪霊に扮する他国由来の悪霊避け仮装パーティーを楽しんで、冬には他国由来の聖人の誕生を祝う祭りでなぜかカップルの恋愛イベントが盛んで、その6日後には土地神に厄払いを頼んで、翌日は自国の神に新年の挨拶に行くぐらいにはカオス」
「それを宗教観のゆるい国民性の一言で済ますのか?!」
「翌月には鬼祓いの神事と、縁起のいい方向を向いて縁起のいい食べ物を食べる行事と、他国の聖人の名を冠してるけど信仰とは全然関係のないご贈答イベントが……」
「信仰心が薄いと言う割には、神事や聖人関連の行事や魔物払いが多すぎるんだが、どういう世界なんだ」
「今言ったのは街中が騒ぐメジャーどころで、マイナーな風習もあるのよ」
「本当に国中がそんな感じなのか。想像もつかないな。マイナーな風習っていうのは?」
「細かいのは私もうろ覚えなんだけど。たとえば『クリスマス』の緑の葉の飾りの下に立っている若い女の子は、キスを断っちゃいけないとかいうのもあったわね」
「は?」
「『ヒイラギ』だったかしら、今年はそれで作るって言ってたけど」
「なにっ?!」
「なんだ。それで血相変えてきたのか。バカだなぁ。それは『ヤドリギ』の言い伝えだよ。『ヒイラギ』は関係ない」
「そ、そうか」
「『ヒイラギ』は葉っぱがギザギザだから魔除けになるんだよ。ほら、これが『ヒイラギ』の魔除け」
「なんで魚の頭が一緒についているんだ?」
「なんでだろう?民間信仰だからなぁ」
「魚の頭を枝に刺す信仰?」
「雑魚の頭も信心という感じのことわざがあって、信じる心があればしょうもないことでも尊いとされるんだ」
「うーむ。よくわからんが、焼き魚の刺さった小枝の下でキスをする気にはならんな……」
「だからそれは別の植物なんだってば。それにキス云々の話も、元はキスを拒むと、結婚のチャンスがなくなるって迷信だから、私には関係ないしね。……恋人同士が『ヤドリギ』の下でキスすると『ヤドリギ』の祝福が受けられるらしいけど」
「そんなものの祝福を受けなくても、愛の女神様直々の祝福と加護を得ているだろう」
「そりゃそうだ」
「それにキスをするなら、神だのご利益だのを考えずにしたい」
「…………そうだね。断るかどうかは言い伝え関係ないし」
「とりあえず、その枝飾りはあっちに置いておこうか。焼き魚と目が合うのがすごくイヤだ」
「鬼祓いの効果高いなぁ、『柊鰯』」
ちなみに主人公が毎年作っていたのはしめ飾りでクリスマスリースではなかったり……泣くほど女子力が足らない(でも凝り性)
お読みいただきありがとうございました。




