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大秦戯界開拓録  作者: 御食山左近
ある商人の冒険
8/15

正午の雑貨商



物言わぬ廃墟と化した新市街の中心部を抜け海魔の彫刻が禍々しい重厚な石造りの門を過ぎると、黎明期の都市であるマッシリアの旧市街がある。


マッシリア湾を望む丘の上にある大神殿と付随する巨大な灯台、レムルス半島各地の廃都から死霊王が取り寄せた大理石で建てられた旧軍団長公邸である市庁舎が観光名所として有名である。


また都市の構造もレムルス諸都市のような無秩序な都市計画とは対照的に、施政者を掣肘する者がいない開拓時代では古代中国の都市のように碁盤の目状に区画が配置されている。そのため無駄に歴史考証をやった為に景観が今一な本土の都市に対し見た目にもすっきりしていてプレイヤーにも人気が高い。


旧市街の市壁を抜けた辺りで身なりのマシな大店のであろう丁稚に小銭を握らせたところ、我が友の店はすぐに見つかった。


ヴァレリウスの凱旋門を通り抜けて市庁舎の裏手に出ると、荷車にオーク樽や麻袋をこれでもかと積んだ牛車や馬車が行きかう結構な通り、誰が名付けたかヴィクトリア通りには赤茶けた建物が並ぶ。


比較的最近建てられたであろう、窓から小粋に生えた三色旗が洒落たヴィクトリア朝様式の五階建てのテラスハウスの一階にその店はあった。


この店主そっくりのいやらしい顔のダイヤのジャックの看板のはずである。それにしても人通りの割には閑古鳥が鳴いているな。


おっと、あの売れない絵描き染みた汚れたエプロンをした長髪の男は…。



----よう『狂える』オルランドゥ!一国一城の主の癖して相変わらず貧相ななりをしてるなぁ!


「なんだてめぇ美少女なんか連れてきやがって!俺へのあてつけか?!『怪人赤マント』のエティエンヌ様よぉ!」


----はっはぁ!羨ましいだろう存分に妬みやがれ!あと俺はマルセルだ!『憤怒』のラ・イールでもド・ヴィニョルでもない!


「そんな細かいこと言ってるからてめぇはセイレーンにしかモテねぇんだよ。あと俺はヘクターだ!」


----一瞬だけマジ返しとかやめろよ?!その一撃で俺がどれだけ傷ついたと思ってやがる?!


「我らが新帝国系の都市国家の家成法ではなぁ、奴隷の私的所有が禁止されているのはお前さんも知っているだろう?!

 金髪美少女のエルフ侍女を夢見てきたこの俺を嘲笑うかのようにそのプリチーな娘さんを連れてきたお前だけは絶対に許さん!

 これでお相子だな。いや、慈悲はない。お前を殺す。」


----待て!早まるな!…お、俺は童貞なのだ!


その一瞬街のざわめきが静止する。


隣の衣服問屋で手間賃の交渉をしていたそばかすが目立つ見習いがぽかんと口を開けてこっちを見ている。


向かいのワイン商の恰幅のいいおかみさんと目が合ったがすぐに目をそらされた。


…アンヌはいつのまにか俺のおやつの蜂蜜菓子を持ってとてとてと何処かへ行ってしまった。


「お、おう。そうだったな。まあお前も長旅も疲れただろうから、ちぃと馬でも留めてゆっくり休んでいけよ?な?」


こういう時に真に頼れるのは長年の相棒だけだな。少なくとも俺はそう確信した。


ヘクターの店の徒弟が荷馬車を厩まで移動させてるうちに、挨拶がてら情報交換と行くか。



----それにしても兄弟。久しぶりだな。おおよそ半年ぶりか?こんなに客来ないのによくやっていけるなざまぁ見やがれ?


「ほんとに半年ぶりだが、そんなに会ってねぇ気がしねえな。ほんのちょいと昔は一緒にセイレーンの群れに全裸でダイブしたものだけどよぉ。というかいい加減にしないとあの別嬪の嬢ちゃんのふくらはぎ舐めるぞ? まあ、最近は内緒で町のはずれに皮革ギルドに明礬を卸しているのと、その伝手で繊維ギルド相手に商売を広げてるから結構儲かってんだ。」


たしかに住民から見ると厄介者である皮革ギルドを相手に商売するのは盲点だったな!


おぅふ。サスペンションなしで死んだ俺の尻が悲鳴をあげる。


無論上の口もだ。


しかしいちいち商売の種を鼻を膨らませながら教えてくれるこいつの人の好さは悪くないと思う。


薬売りもピンからキリまでいる訳だから、自前の店でやっていけるあたり善良な商人なのだろう。


----それはそうと今年は一体全体どうしたっていうんだ?新月でもないのに触手プレイが起きてるし、街中でちらほら見かける三色旗はなんだ?


「なんとなれば時代は今、革命なわけだよ市民マルセル君!」


最近はやりの革命ごっこの余波だろうか?いや、それにしては街中に活気があるからあれか。


----ああ、分かったわ。最近になって急に主流派と化したマッシリア独立派への牽制かなんかでヴァレリウスと愉快な仲間たちがなんかやって、それでこの都市がいい感じに壊滅したおかげで内海の流通がストップしてうちにとばっちりな訳だ。


風が吹いたのに桶屋がつぶれるのは勘弁してほしいものだ…。


「流石だな兄弟。大体あってる。まあひとつ加えると親愛なる同志善良王書記長は革命を輸出している疑いで有名だから、ついでにヴァレリンちゃんの勢力圏全域で内陸も荷止して、南方への経済封鎖をやってるらしいな。今回に関しては関与していないって話なのにお前の所もとんだとばっちりだな。」


大変そうだなぁと肩を叩いてくるこやつは本気でそう思ってるのだろう。


いやすまん兄弟。実は今回もまっくろなんだ。いや、真っ赤か?


このところ衛兵が南方から来る人間が多いと言っていたからには、恐らくそういうことなのだろう。


私のような観光客というかよくわからん何かは結構浸透してるようだなぁ。


それにしても異世界で中世なファンタジーで、なんで俺たちはこんな陰謀劇をやっているのだろうか?







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