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大秦戯界開拓録  作者: 御食山左近
ある商人の冒険
10/15

東経四度の雑貨商



休む間もなく襲撃である。


此度のスポンサー様は太っ腹な事に、軍装一式を仕立ててくれたが感謝するのはそこまでだ。


全くもってうんざりである。


ひっきりなしに食い詰めた風を装った傭兵たちが隊列に攻撃を仕掛けていた。


街道をゆく数十騎の騎士と付き従う兵を遠目にも見えるこの隊商が襲われるというのは、明らかに尋常の事態ではなかった。


どすんと大きな荷袋が落ちたような音がする。どうやらラ・ラメー殿がまた一騎、航空騎兵を撃墜したようだな。大した方だ。


夜明けとともに出発した俺たちは、丘を一つ越えたあたりで野盗の待ち伏せにあった。


出発前の明け方、隊商の護衛の指揮官だと言われて、出てきたのが迸るボンクラ臭のするおじゃるの時点で如何にアンヌの無事を確保しつつ未来方向へ転戦するかを俺はシミュレートしていた。


しかも盗賊…傭兵崩れにしては無駄に統率のとれている連中相手に単騎駆けを宣言して、従卒も引き連れずにひゃっはぁー楽ぉしいと突撃するのを見て俺はヘクターに目配せをし、故ラ・ラメー男爵が討ち取られた瞬間に逃げる算段を整えた。


「準備はいいな」


その言葉に俺とアンヌはうなづく。


-----いち、にの…


その時である。


虚空に血のような色の円環が刻まれ、劈くような轟音と共に赤い巨躯が兵団の眼前にに出現したのだ。


こっそり逃げようとしていた不届き者の隊商の護衛の一人が叫んだ。


「召喚術だ!」


はじめて見た…


いやサモナーではなくケモナーなら死ぬほど目の当たりにしてきたが…


プレイヤーはおろかNPCすらほとんどが普通は一生お目にかかることがない技能である。


何らかの形で契約したモンスターを、生息地から時間と距離を無視してデリバリーするというチート極まりないスキルである。


チートすぎる為に当然ながら使い手も少ない。ここらの有名どころだと、やはり我らがおっぱいでかい辺境伯の大火龍とか獣王が駈る一角獣ぐらいか。


というかそもそも魔法自体がチートである。基本的に魔法技術自体が本国の貴族に独占かつ秘匿されているので、多くの場合噂レベルでしか知ることがないのだ。


-----やべぇかっけえ!!


思わずロールプレイが崩れる。ウチの軍団長の魔法とか地味だったからなぁ…


「おい兄弟!口調!口調!」


この世界ではロールプレイこそが粋で、プレイヤーと露見することは末代までの恥である。


なぜならその方が非現実に没入できて、よりファンタジーを楽しめるからである。


-----ああ、すまん気を付ける。…しかし竜とか初めて見たな。


「しかも火竜の成体だから大方、あのマロ眉は親衛隊上がりだろうな。」


サービス開始直後の本国は、あんなマロ眉の数百騎が皇帝と一緒に半島上空を我が物顔で飛び回っていたのだろうか?


それも名状しがたい焼き豚を量産しながらだ。


「いささか冒涜的な光景ですね。」


-----ひとの妄想を勝手に読みとるんじゃない!



下手すれば本当に神経系の信号を読んでいる可能性もあるので勘弁してもらいたい。


阿呆なことを考えているうちに野盗は消し炭となっていた。



「あの殿さまが焼き払っちまったせいで、背後関係は洗えそうにないな。」



確かにその通りである。実際のところはわかりきってはいるのだが、それにも一応証拠がいるのが自称法治国家の難しいところである。なんとなれば大義名分が必要なのだ。


遠くの方で我が帝国の街道を穢す不届き者は成敗しておじゃった!とか聞こえてくるが、なんか明らかに戦闘力だけで選ばれた感がほとばしっているな…


というか地上の戦力に対してほぼ無敵の竜騎士を投入するって、一体ルシノーとマッシリアの参事会は何を考えているのかわからなくなってきた。


というか数十人の兵が一分もたたずに全滅か。


立場が違えば俺たちがそうなっていたから合掌物のである。なむー。


そんなこんなで隊列はのんびりペリエールへと再度進み始めたのだが、流石にもう竜の朝ご飯になりたい連中は来ないだろうという俺の考えは甘かったようだ。


どこぞの黒いお友達のように丘を越えるたびに野盗が沸いてきたのである。


当初は男爵がいちいち焼き払っていたのだが、とうとう面倒になったのか其方らが片づけるでおじゃるとサボり始めたのだ。まあしゃあないし気持ちはわかる。


西方領の治安はどうなっておじゃるのかとマロ眉が不満げにあのおっかない死霊王に抗議する気満々なあたり、さてはどこぞの名家のボンボンなのだろうか?


それにしても隊列に即席で編成させた従士隊を張りつかせて、俺たち重装騎兵による突撃を行うハンマーと金床作戦で大方片付くことから考えると、兵力の提供元は冒険者ギルドであろう。…何より焼き払わなかった事で気づいたが死体が残らないし。


となるPCだから何十回も上の口から下の口まで鉄の槍に貫かれて「んほぉぉぉぉぉぉぉおぉぉっ!」となっている猛者もいるかもしれん。


基本的にプレイヤーはNPCの野盗に家を焼かれたり身ぐるみ剥されたり、あげくの果てに最後に残った種もみを奪われるのが仕事なので慣れているのだろう。


というかここまでの戦力が投入されることを予見して参事会は竜騎士と、西方軍の精鋭である俺たちガリア騎兵を集めた可能性があるな。


騎兵なんて軍団の中でもめったにいない兵科だから、他の軍団でも大体が顔見知りであるし連携もとりやすい。


というかみんなアレ兄弟だし。


しっかし本当に気が滅入ってきた。


おや、とうとう連中本気を出してきたなー。


地上戦において馬との愛の力で、神聖軍団並みに無敵のガリア騎兵が護衛についているとようやく気付いたのだろう。


あと少しでペリエールが見えるというところで虎の子の航空騎兵を投入という訳か。


ペガサスなんて初めて見たな。今日は初めて見るものばっかりでワクワクしっぱなしだ。


あれが敵でなければもっとよかったんだが。東方領の珍獣とか是非とも兄弟たちと味見し…マジでお土産にしたいな。


何はともあれ飛び道具は全部はじいて、地上に降りてきたら適当に陣形整えてチャージでミンチにすればいいだろう。


とりあえず連中を足止めして商隊を市門の前まで連れて行けばこっちの勝ちだ。


まさか門前で隊商が襲われて衛兵隊を出さない訳にはいかないだろう。


それじゃ気楽に行きますか…

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