Ep.48
自身が作り上げた『塔』の頂上でヒナタは思う。
これに意味があるのかと。
(サクラちゃん、今思えばかっこよかったなぁ。アズキちゃんの気持ちにも気づきたかったなぁ)
今までの自分を振り返る。
そうしていると、目の前に一枚の紙切れが降ってきた。
(あ、そういえば思い出した。ヒカリちゃんにリリィちゃん、ウミちゃんにキヨちゃん。多分ヒビキちゃんやケイちゃん、マコトちゃんのことも忘れてたのかなぁ)
それは、かつて忘れないようにとメモした紙だった。
何が理由かはわからないが、思い出すことができたのだ。
「私も、そろそろ限界かなぁ」
ヒナタは、自身の限界を悟る。
すでに、下半身は『塔』と一体化していた。
「全部、壊さないといけないからね」
やがて、自身の身体がどんどんと『塔』に飲み込まれていく。
しかし、完全に飲み込まれる前に、すでにヒナタは壊していた。
自身の運命をも。
大きな亀裂が一直線に『塔』に入る。
それは、『塔』と一体化していたヒナタにも入っていた。
「さよなら、ユイちゃん、ルゥちゃん、ノノミちゃん」
別れを告げて、ヒナタは目を閉じる。
直後、『塔』が大きな音を立てて崩れ去った。
天にまで届かんとしていたその『塔』は、ヒナタの望みで消え去ったのだった。
†
「ユイ!」
外でルゥの叫ぶ声がする。
やがて、自身の真っ暗な視界に、一筋の光が見えた。
ルゥが、何やら道具を片手に、自身の埋まる場所を掘り出したのだ。
「助かった! ありがとう!」
自身を助けてくれたルゥにお礼を言う。
しかし、ルゥはその言葉を聞かず、走る。
ユイもそれについていく。
「え……?」
そこには、ノノミが血を出して倒れていた。
「なんで……」
思えば、ユイの体には傷一つない。先程瓦礫の下敷きになったのにもかかわらずだ。
「なんでなんでなんでなんで!」
ユイは取り乱した。
ユイは彼女の能力を知っていた。
『自己犠牲』、ほぼ確実に、ユイを庇った結果だった。
「もう……死んでいる」
ルゥが、信じたくないと言った表情を浮かべながら答える。
しかし、これが現実なのだ。
「ああ、そうだよ、知らなきゃ。知らなきゃいけないんだ」
ユイは力なくフラフラと、屋敷のあった方向へ歩く。
「ユイ……?」
「知らなきゃ……知らなきゃ……不安で夜も眠れない」
ユイは、自身の変化に気づいていなかった。
その涙は黒く染まっている。
まるで、黒いスライムが目から流れ出たかのようだった。
「……わかった。私も行く」
ルゥの声に、ユイは少し嬉しそうに頷く。
すでに埋葬は終えていた。
そうして二人は、屋敷のあった場所へと向かうのだった。




