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少女は運命に殺された  作者: Philia
Chapter1
52/60

Ep.47

「実は私、嘘ついてるんですよね!」


 ヒナタの思い出した記憶は、サクラのことだった。


「記憶は実はなんと二十四時間消せるんです!」


 なぜか色々な部屋の時計をいじっているサクラに声をかけたヒナタは、そんなことを言われた。


「え、なんでそんな嘘を?」


 疑問に持ったヒナタが、サクラに問いかける。


「いや、嘘というか、多分ですけど昔よりも能力が強くなってるんですよね。前までは六時間が限界だったんですけど、最近気づいたら二十四時間も消せるようになってるんですよね。昨日の夕ご飯覚えてます?」

「……覚えてないかも」


 サクラの言う通り、ヒナタは昨日の夕ご飯を思い出すことができなかった。


「つまり、皆さん運命に呑まれているんですよ。私を含めてね。ここからは仮説なんですが、強い殺意や敵意、いわゆる、どす黒い感情があの黒いスライムの餌だと思うんですよね。そして運命に呑まれるほど、その殺意や敵意が増していって、最終的に現実に現れる、みたいな」

「うーん、難しくてよくわかんないや」


 サクラの説明も、ヒナタには少し難しかった。


「あはは、まぁそうですよね。そうかもしれません。多分、近い内に殺人事件が起きますよ。もしもそれで私が処刑されたら、私の部屋の布団の枕に隠してある手紙を探してください。お願いしますね」

「え、突然どうしたの……」



 †



 そこからは思い出せなかった。おそらくサクラに忘れさせられていた記憶だけが蘇っただけで、それ以外は普段通りだったからだ

 ただ、確実に一つのことを思い出していた。


「手紙……」


 いてもたってもいられなくなり、ヒナタは牢屋へと向かう。


「あ、サクラ! 今から庭に行くけどくる?」

「あとで!」


 途中でユイとルゥ、ノノミにであった。三人は庭に行くようだが、ヒナタはそれよりも手紙が気になっていた。


「ここかな……あ!」


 そして発見した。

 折りたたまれた封筒は、どこから調達したのか、しっかりと紙に鉛筆で書かれていた。


「これは……」


 その内容は、ヒナタにとって衝撃であった。


『ヒナタさんへ

 こんばんは! いやおはようかもしれないしこんにちはかもしれないけど、そんなことどうだっていいですよね!


 ヒナタさんがこれを読んでいるってことは、きっと私は自分の無罪を証明できずに処刑されたんでしょうね。あーあ、完璧な完全犯罪だと思ったんだけどなぁ。あ、これはただの自慢なんですが、私実はギフテットでして。所謂、高いIQを持った選ばれた人間なんですよ。すごいでしょ!


 さて、じゃあ私がなぜこんなものを書き置きしているかと言うと、約束を託すことにしたんですよ。

 私はたしかにアズキさんを殺しました。

 ただこれ実は、彼女に頼まれてやったことなんですよね! ああ、別に嘱託殺人だから許してくれなんて言うつもりは無いですよ! ただ、事実として教えておくべきだと思っただけです。


 どうやらアズキさんは、自分が運命に呑まれてしまうことが本当に嫌だったようで。リリィさんやキヨさんが処刑されてから、自分もいつかああやって人を殺してしまうんじゃないかと不安だったそうです。自殺も、自身の『太陽』のせいでできないようでした。だからこそ、私に頼んだんでしょうね。いやぁ、いちばん頭がいいでしょうなんて言われちゃって、とても嬉しかったですよ!


 というわけで入念な準備をして挑んだ訳ですが、先にも言った通りまぁ負けてしまいましたね。しょうがないです。さすがはヒナタさん。私のことをよくわかってらっしゃる!

 だからこそ……ヒナタさんに託したいんです。アズキさんとの約束を。


 こんな牢獄のような世界ぶっ壊しちゃってください! きっと私を超えたヒナタさんならできます! 私は地獄の底で応援していますよ! 頑張れ!


 サクラより』


 ヒナタは声が出せなかった。

 そのサクラらしい軽快な言葉で書き綴られていたのは、一つの真相だった。

 アズキの殺害は、アズキの希望だったのだ。


「そんな……」


 嘘だった。

 大好きだから殺したのも、狂っているというのも、全て嘘だった。

 偽りの仮面を被り、皆を騙し、あたかも狂った殺人鬼のように見せた。


「あ……あぁ……」


 声にならない叫び声が、ヒナタの喉から漏れる。

 もしも、アズキがサクラではなくヒナタを頼っていたら、果たしてアズキを殺せただろうか?

 もうその問いに答えられる存在は居なかった。

 ヒナタの内側にどす黒い感情が流れる。

 それは世界よりも何よりも、自身への恨みと殺意だった。


「分かったよ、サクラちゃん。私が全部、壊す、か、ラ……」


 瞬間、地響きが周辺を襲う。

 それはもちろん、庭に出ていたユイ達三人にも届いた。


「え、ちょ、なになにすごい揺れてるけど!」


 ユイは焦ったように身をかがめる。

 ルゥとノノミも同じ行動を取った。

 地響きが収まり、顔を上げる。


「うそ……なに、これ……」


 そこには、天を突き刺すような『塔』が建っていた。

 もともと屋敷があった場所だが、今はその『塔』が支配している。

 ふと上を見てみると、何かが見える。


「……ッ! 逃げて!」


 ユイとルゥとノノミは一斉に駆け出す。

 上空からは、屋敷が降ってきた。

 塔の頂上から落ちるその屋敷は、まるで王者の失墜を示すかのようだった。

 やがて大きな音とともに、屋敷が落ちる。


「あぁ……」


 ルゥとノノミは逃げ切れた。

 しかし、ユイは少しだけ遅れていた。

 おかげで、館の瓦礫に飲み込まれた。


「なんだろうな……」


 不思議と痛みはなかった。一周回って冷静となった思考で、先程のことを考える。

 真っ暗な視界の中ですぐに思い至った。


(そういえば、ヒナタの運命……『塔』だったな)


 まさかとは思うが、一度考えだしたら止まらなかった。


(ああ、ダメだなぁ、知らなきゃ。知らなきゃいけない。不安で夜も眠れない)


 ユイの不安性が再発する。衝動に駆られるように体を動かすが、瓦礫の下敷きとなったのでピクリとも動かない。


「……ユイ! ユイ!」


 そとでルゥが叫ぶ声がする。


「……ボクは、ここ!」


 ユイも必死に声を上げる。

 死ねない。死にたくないのだ。すべてを知るまでは。

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