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少女は運命に殺された  作者: Philia
Chapter1
51/60

Ep.46

「なんでって、そりゃもちろん、アズキさんのことが大好きで大好きで大好きで、ずぅっと一緒にいたかったからに決まってるじゃないですか!」


 サクラはあっけらかんと答える。


「どういう……ことなの……」

「知りませんか? これ、おじいちゃんから教わったのですが、人が死んだ時、最も近い人間が最も大事な人らしいですよ! 私はアズキさんのことが大好きでしたので、ずっと一緒が良かったんですよ! でも、最初にクモさんが言ってましたよね? いずれカードに呑まれて死ぬと。だったら、私が私の手で殺せば、私が一番近いじゃないですか! あ、もちろんアズキさんだけじゃなくて、ヒナタさんやみなさんも大好きですよ!」


 その目はどこまでも澄んでいた。まるで、自分の言っていることに間違いはないと言わんばかりに。


「……狂ってる」

「あはは、よく言われます! 実際、両親が死んだときも、私はずっと死体と一緒に暮らしていたらしいですよ!」


 ルゥの厳しい一言も、サクラにとってはどこ吹く風だった。


「よく、言われるんですよ。頭がオカシイんじゃないかって、狂ってるって。どうなんでしょうね。自分の中では普通だと思ってたんですけど、やっぱり違うみたいですね。だから普段は普通の人みたいにしてたんですけど、ここにきて初めて素の自分を出せて、認めてもらえて……すっごい嬉しかったんですよ!」


 その言葉と同時に、サクラが自身のスマホを操作する。


『たった今、投票が終わりました。投票結果を公開しますね


 ・楠サクラ 5票


 というわけで、今回処刑されていただくのは、楠サクラさんです』


 その声とともに、中央に相変わらずの束が現れる。

 それを引きながら、サクラは語りを続けた。


「やっぱり大好きなんですよ。皆さんのこと。ずっと一緒に居たいくらい」


 四つの束を引き終わり、一つの束を引く。


『結果は……III.女帝。いい運命ですね』


 そして光とともに、その処刑方法が露となる。

 中央にあったのは、巨大な釜だった。

 グツグツと煮えたぎるそれは、自身のいる場所まで熱気が伝わってくるようだった。


「いやー、やっぱり完全犯罪って無理なんですね! 証拠がどうしても残る以上、どう頑張ってもこの結果になるのは納得ですが! あーあ、結局約束、果たせなかったや……」

「もう、喋らないでよ! サクラちゃんはアズキちゃんを殺したんだよ! 今更何を言っても……もう、何も……」

「ヒナタ、もうこいつの言う事は聞かなくてもいい。こいつは、根っからの狂人なんだ。友情なんて、これっぽっちも無い」


 ヒナタの激情を見て逆に冷静になったユイが言う。


「ひどいこと言いますね! 少なくとも私は、なんと言われてもみなさんのこと親友だと思っていますよ!」


 そう言いつつ、サクラはその釜へと足を運んでいた。

 すでに、釜の縁へ足をかけている。


「いやー、ヒナタさん。あっぱれでした!」


 そう言って、サクラは一歩進む。

 すでに縁に立っていたのだ。どうなるかは誰にでも分かった。

 崖から落ちるように、サクラの体は落下する。

 そんなサクラのことを、ヒナタは見続けた。

 サクラは、今から死ぬというのに常に笑顔だった。

 笑顔を絶やさず、そのまま釜に飛び込んだのだ。嫌だとも怖いとも言わずに。その様子には後悔や懺悔はなく、あったのはやりきった、あとは任せたと言うかのような、清々しくも凛々しい面立ちだった。


「あ……」


 そして、重力に従い、ちゃぽんとサクラは落下する。

 どこかあっけなく、あっという間の出来事だった。


『無事、罪人の処理が完了しましたね。それでは鳴神アズキ殺人事件裁判……閉廷です』


 なにかが足りない。

 そこにいる誰もがそう思っていた。

 思い出したのか、ユイが声を上げる。


「黒いスライムが……出てこなかった」


 そう、いつもなら出てきていた『運命』そのもの……黒いスライムが出てこなかったのだ。


「どういうことなの?」


 そんな事を言っても、なんの返答もない……というわけではなかった。


『はぁ、やはり面倒ですね。「愚者」という運命は』


 クモの声が響いた。


「え?」

『あ、ミュートし忘れてた。まぁこのくらいならいいでしょう。「愚者」の運命は、どうしてもその運命から抜け出す方法を見つけてしまうんですよね。困った困った』


 そういってクモの声は終わった。ウンともスンとも言わなくなった。


「運命から……抜け出す?」


 その言葉が、どこか胸の奥に引っかかる。


「ヒナタ、今日もう休もう……」


 まだ昼時だと言うのに、ユイの体は疲労困憊だった。

 そしてそれは。ヒナタやルゥ、ノノミも同じであった。


「……そう、だね」


 そうしてムードメーカーを失い四人になってしまった少女は、気持ちの暗いまま、各々の時間を過ごしていた。

 ヒナタは少し寝転んで休むことにした。

 お昼時だと言うのに、何かを食べたいとも思わなかった。


(すこし寝よう……)


 そうしてヒナタはゆっくりと目を閉じる。

 ……

 …………

 ……………………何時間が経っただろうか。

 ふと、頭痛がしてヒナタは目を覚ましていた。

 身を起こせば、段々と頭痛が増していく。


(なに……これ……)


 そうして、全てを思い出した。

 サクラによって忘れさせられていた真実を。

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