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少女は運命に殺された  作者: Philia
Chapter1
50/60

Ep.45

 その言葉は、ヒナタにとってはとてもつらく、信じがたいものであった。だが、思い至った以上、言わないわけにもいかなかった。


「……サクラちゃん、君なら、できるよね」


 ヒナタの視線が、まっすぐにサクラへ向かう。


「ほう、それはどのようにですか?」


 サクラは、自身に疑いの目が向けられ、驚いている様子だ。


「簡単だよ。サクラちゃんの『愚者』、確か、『五感と記憶の欠落』だよね、アズキちゃんが剣に気づかなかったのも、私たちが一時間誤認していたのも、サクラちゃんの能力ならできるよね」

「……」


 ヒナタの淡々とした言葉は、サクラへ疑いを向けるのに十分な理由だった。


「ねぇ……なにか言ってよ!」


 何も言わないサクラに、苛立つようにヒナタが怒鳴る。このままでは、サクラが犯人となってしまう。


「そうですね、ではしっかり反論させていただきましょうか!」


 そこでようやくサクラは反論に出る。


「まず、確かに私の能力ならそのうようなことが可能です。しかし、結局証拠はありません。私がいつ、どのように剣を準備してアズキさんを殺したか、その証拠はありますか?」


 そう、証拠がなかった。いくら可能であり、可能性が高かったとしても、証拠もなしに犯人と決め付けるのは乱暴である。


「証拠……記憶を失わせるサクラちゃん相手にそれを引き出すのは難しいなぁ……でも、私たちの誰かがサクラちゃんの工作を見ても、それを記憶から忘れさせればいい話だよね?」

「はい、ですから、その証拠を教えてください!」


 とても難しい話だった。

 目撃情報はすべて消されてしまい、役に立たない。その場には状況しか残っていないのだ。

 しかし、今のヒナタは冴えていた。普段なら思いつかないようなことも、何故か思いついてしまっていた。


「そもそも、死因は本当にその剣なのかな?」

「……どういうことですか?」


 ヒナタの言葉に、サクラが戸惑う。


「思い出したんだよ、アズキちゃんの能力を。たしかアズキちゃんの能力、痛みも感じないし、外傷ならすぐに治ってしまう。つまり、剣を刺したところで引き抜かれて治癒して終わりなんじゃないかな?」


 全員がたしかにという表情をしている。


「つまり、あの明らかな剣はカモフラージュで、死因は別にあるって考えてもいいよね? たとえば、毒とか」


 ヒナタは、自分でもそんなスラスラと推理が出てくることに驚いていた。

 そして同じように、サクラも驚いていた。


「なるほどなるほど、確かに毒殺も有り得る話ですね! いやー、思いつきませんでした!」


 そういってわざとらしくなるほどという顔をする。


「ヒナタさん今日は冴えてますね! 毒殺なら誰が犯人か……」

「とぼけないでよ! もし毒殺なら……あのときのおにぎりしかありえないじゃんか!」


 ヒナタの目には涙が浮かんでいた。

 考えれば考えるほど、自身の推理がサクラを犯人だと指していた。


「ふむ、毒殺もあり得ると話しただけで、別に毒殺を肯定したわけじゃないんですけどね。それに私はそんな毒について知らないですし……」


 サクラはとぼける。しかし、ヒナタには既に見破られていた。


「サクラちゃん……サクラちゃんらしくないよ。そんな嘘……ここに来たばっかりの時に教えてくれた、ドクゼリのこと……それに、皆で物置部屋に行った時に水銀……これで知らないは無理があるよ……」


 それは、ここに来たばかりで湖に行った時の話。そこで、ヒナタはサクラにドクゼリについて教えてもらっていた。

 さらに、物置部屋に行った時の話。そこでは、水銀体温計を見つけたヒナタに、サクラが水銀のことを解説していたのだ。


「……」

「嘘まで言って、まだ認めないの? ねぇ、サクラちゃん。なんで……」


 なんでアズキちゃんを殺したの、という言葉は出てこなかった。心の何処かで、まだサクラちゃんが犯人ではないと信じていたから。

 だが、もう遅かったようだ。


「あはは、さすがヒナタさんですね。いやー、完敗です! まさかそんな昔のことを覚えていたとは! そうですよ、私が毒でアズキさんを殺しました!」


 サクラが認めた。

 すでに、状況証拠や虚偽によって限りなく犯人だと思われていたが、ここで本人の口から真実がこぼれたのだ。


「そんな……」

「あはは、そんな悲壮感ある顔しないでください。貴方は私を打ち破り、ここにいる全員のヒーローとなれたんですから!」


 そう言ってサクラは、事の真相をぽつりぽつりと話し始めた。



 †



 アズキを殺す。

 そこには愛があった。

 深い深い、一種の恋愛とも呼べる愛。

 だけどアズキをそのまま殺せば、自身が処刑されてしまう。

 そうしてサクラは、計画を立てて犯行を始めた。

 まずは、アズキにドクゼリ入のおにぎりを食べさせる。余裕で致死量を超えた量だ。

 痛みに耐性があるアズキなら、手遅れになってからじゃないと気づかないと信じていた。

 もしかしたら『太陽』の力が毒に勝る可能性もあったが、その時はその時だと割り切っていた。


(ふむ、でもこのまま毒殺とバレてしまうとおにぎりが怪しまれてしまいますね)


 そう思い至ったサクラは、アズキの部屋に工作をした。

 錠と剣を紐でつなぎ、布団の真上で蛍光灯にぶら下げる。そして、錠が閉まれば自動的に紐が外れ、剣が落下するという仕組みだった。

 毒が効いていれば、下痢やらで体調が悪いアズキが布団で寝込むことはわかりきっていた。

 そして、次なる罠を敷く。

 アズキが一人で牢屋に居るという状況を作るために、アズキ以外の全員の「一時間」を記憶から欠落させたのだ。

 どうじに、すべての部屋の時計を一時間遅らせる。

 これによって、施錠時間の二十三時をアズキのみが知る形となり、アズキが一人で牢屋に戻るようにすることができた。

 あとは、剣に気づかれないように視覚でも記憶でも欠落させればいい。

 そうして、アズキは牢屋で一人、毒によって殺される。

 その後、二十三時となり錠が閉じ、剣が上からアズキのことを刺す。

 これによって、まるで剣に刺されて死んだような演出をすることができたのだ……



 †




「なんで……なんでそんなことしたの!」


 ヒナタは感情のままに怒鳴っていた。

 その怒りの矛先は、親友と思っていたサクラであった。

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