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少女は運命に殺された  作者: Philia
Chapter1
44/60

Ep.40

 あれからずっと図書館に入り浸っている。

 時折ルゥやノノミが来ては、こちらに変な視線を送っている。

 なぜなら、ヒナタ達は全力で解読不能な本の解読……をするための翻訳書が無いかを死に物狂いで探していたのだ。


「うーん、一つの言語として成り立っているなら、今の時代翻訳のための辞典くらいあっても良さそうなんですけどね!」


 サクラがそう言うが、未だに見つかる気配すらない。

 それどころか、例の解読不能な本すら、今ある一冊以外は見つかっていないのだ。


「うーん、これはますますこの場所が現代社会の手の出せない僻地の可能性が高くなってきたな……」


 ユイは片手に漫画を持ちながら答える。誰がどう見てもサボっていた。


「はぁ……やっぱり無いのかなぁ」


 手に取った本が違うとわかり、ヒナタは肩を落とす。


「諦めてはいけません! まだ半分くらいあります! きっと見つかりますよ!」


 サクラはそんなヒナタに気を使い、元気づける。

 そんな中でもアズキは黙々と作業を続けていた。


「はぁぁぁ……疲れた……」


 少し時間が立ち、ヒナタは体力の限界を迎える。

 サクラとアズキとユイはまだまだ元気そうだった。


「んー、眠い……」


 そしてそのままヒナタは机に突っ伏して寝てしまう。

 すやすやと、静かな寝息が図書館に響いていた。



 †



(あれ、ここはどこだっけ?)


 ふと、ヒナタは目を覚ます。

 そこは、どこかの遊園地のようだった。


「ヒナタさん! 早く行きましょう!」


 遠くでサクラが手を降っている。よく見れば、ジェットコースターの列に並んでいた。


「アズキさん達は先に行きました! どうやらめちゃめちゃ怖いらしいですよ!」


 サクラは、そんなジェットコースターにワクワクしているようだ。


「チケット見せてもらいまーす」


 いざ自分の番となり、店員さんにチケットを見せる。

 その名札にはマコトと書いてあった。


(あれ……うん?)


 それに少し違和感を覚えるが、列が詰まっていたので急いでジェットコースターに乗る。


「楽しみですねー!」


 横では、サクラが目を輝かせていた。

 そんなヒナタのすぐ後ろの席で、なにやら話す声が聞こえる。


「ヒビキさぁ、もっと怖がったほうが楽しいと思うよ?」

「ケイ、それどういうことなの?」


 その声に、言葉に、名前に違和感を覚える。

 しかし、その違和感に気づく前に、ジェットコースターは出発していた。


「ひゃああああああ!」


 サクラが嬉しそうな悲鳴をあげている。その顔は涙が浮かびつつも輝かしい笑顔だった。


(……あれ?)


 ふと、ヒナタの視界の端に、亀裂が目に入る。

 一瞬で、その亀裂は大きくなってゆく。


(このままだと……!)


 広がる亀裂は、すでにレールへと入ってきていた。もはやどうなるかはわからない。

 ヒナタはぎゅっと目を閉じる。


「ヒナタさーん? 起きてますか?」


 目を開ければ、そこには自身の身体を大きく揺らすサクラが居た。


「ん……あれ?」


 周りを見渡せば、そこが図書館であることがわかる。

 どうやら、居眠りをしていたらしい。


「ふむ、眠ってサボろうなんてボクが許さないぞ!」


 先程まで漫画を読み漁ってサボってたが、それは過ぎたことだと言わんばかりの態度でユイは話す。


「すみません、なんだかうなされていたので起こしてしまいました……大丈夫、ですか?」


 アズキがそばで心配している。その手には多くの本が抱えられている。自分が寝ている間もずっと本を探し続けていたのだろう。


「大丈夫だよ、心配しないで」


 すこし頭痛はするが、その程度だったら気にしなくても良いレベルだった。


「ちなみにヒナタさんが寝ている間に殆どの棚を調べてみたんですか、翻訳どころかあの言語で書かれている本すらなかったんですよね! だからあの本だけで解読しなければいけなくなりました!」


 サクラが明るく報告するが、かなり難しい話だ。なぜならそれは少なくとも自分たちの知らない未知の言語。低機能スマホに翻訳なんて素晴らしい機能はもちろんない。全てを人力でやらなければならないのだ。


「そんなこと、できるかなぁ……」


 アズキも弱気になる。

 しかし、そんな中でもサクラは明るく振る舞う。


「大丈夫です! それに、もしも解読できたらもしかしたらここから出られるような情報が手に入るかもしれません!」


 たしかに、ここに来てから不思議なことは多い。能力や黒いスライム、これらがこの未知の言語と繋がっている可能性は高いだろう。

 もしかしたら、ここから脱出できるような事も書かれているかもしれない。


「たしかに……そうですね!」


 そんなサクラの元気に当てられ、アズキも自然と元気が湧き出す。

 そんな様子の四人に、声がかけられる。


「……何してるの?」


 ルゥだ。そばにはノノミもいる。


「ああ、ルゥさん! 実はですね……」


 そうして、サクラは例の未知の言語の本について話す。


「なるほど、挿絵しかヒントがない、か……」


 ルゥも頭を悩ませる。


「ワタシ達にもその挿絵を見せてくれませんか?」


 ノノミの希望に、アズキが挿絵の写真を見せる。


「崇めている……いや、従えている? それに……黒いスライム?」


 二人は、その挿絵を見て四人とほぼ同じ結論に至った。


「挿絵が……少なすぎる!」


 ルゥが心の叫びを漏らすが、だからといって解読のヒントが増えるわけではない。


「……この絵、時代で言えばどうでしょう……千年ぐらい前に描かれてそうな感じがしますよね。それこそ、ビザンツ美術みたいな」

「なんだそれ?」


 ノノミの言葉にユイが反応する。


「結構昔に発達した美術の体系です。ワタシもそんな詳しいわけじゃないのでわかりませんが、見た感じそうなのかなと……」

「……知識人」


 ルゥに褒められ、ノノミは嬉しそうにもじもじする。


「え、じゃあこの本は千年前にできたってこと? 超重要歴史書じゃん!」


 ユイの言葉は全員の思ったことを代弁していた。


「うーん、そうなるとやはり言語学者と歴史学者が欲しいですね!」


 無論、そんな人物はここには居ない。

 軽い絶望とまたほんの少し進んだ調査結果を胸に、少女たちは一日を過ごしていく……

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