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少女は運命に殺された  作者: Philia
Chapter1
41/60

Ep.37

「やはり、おそらくこの事件、アリバイは無意味だと思います!」


 サクラがとんでもない発言をする。その一言に、全員の目が見開かれる。


「ちょっと、サクラちゃん、どういうこと?」


 ヒナタがサクラに説明を求める。


「そんな焦らないでください。ちゃんと説明しますので!」


 そう言って、サクラはわざとらしい咳をコホンと鳴らす。


「まず、この事件、全員にアリバイがありますね?」

「まぁ、そうだね」


 そこの意見はここにいる全員が賛成している。


「それが問題なんですよ。全員に何かしらのアリバイがある。つまり、この事件は全員が等しく犯人になり得るというわけですよ」

「……どういうこと?」


 ヒナタはサクラに説明を求める。そんなサクラは、慌てる様子なく言葉を続ける。


「今回のアリバイ、私含めて全員が誰かが誰かに見られていることによって証明されているだけですよね? つまりは、その誰かが共犯だった場合、もしくは能力によって誤魔化しが効く場合、そこが犯人、というわけですよ。共犯も誤魔化しも、ここにいる全員ができます。だからこそ、私はアリバイの意味がない、といったわけです」


 そこで、サクラは言葉を切る。

 そんなサクラに質問を投げかけるのはルゥだ。


「つまり、たとえば私はノノミとアリバイ証明をしているが、私が犯人でノノミが共犯だった場合、アリバイがあろうが私たちの犯人は揺るぐことはない。ということが私たちだけでなく全員に言えるということだな?」

「そういうことです! 私が犯人で、ヒナタさん達が共犯者なら、もはやアリバイは犯人ではない要素にはならなくなってしまいます!」


 つまりは、全員がアリバイを持っているが、その中に犯人がいる場合、アリバイは犯人ではない証明にならないというわけだ。

 なぜなら、犯人もアリバイを持っているからだ。


「そうなると……議論の焼き直しが必要ですね」


 アズキの言うことが全てだ。ここまで出てきた証拠のなかから、再び犯人を探す。先程と違うのは、全員が犯人になり得えるという条件の変化だけだった。


「はい! では再び状況の整理から始めましょう! まず、死体は庭にあり、ヒビキさんが出血、ケイさんが剣を突き立てられていました。ケイさんの鞘に剣が収まっていなかったことから、犯人はケイさんの剣を奪いヒビキさんを殺し、そのままケイさんを殺害した……という筋書きになりますね!」


 改めてサクラが状況を整理する。皆も黙って聞く姿勢だ。


「さて、そのタイミングですが、私たちは食堂でご飯を、マコトさんも一緒でしたね。ルゥさんとノノミさんは休憩室にいたそうです」


 その言葉に、ルゥとノノミが頷く。

 しかし、その部分で、ヒナタはどうにか引っかかることがあった。


「質問いいかな? ルゥさん達は何時頃に起きて朝食を食べたの?」

「ええと、起きたのはだいたい七時頃でしたかね? 朝食は七時半には食べ終わっていたはずです」

「うん、ただ私たちが食堂に行く前にケイ達が食堂に向かっていた。」


 ヒナタの質問にノノミとルゥが返す。


「なるほど……つまり私たちが起きたのはだいたい八時ごろだから、その間にケイ達は朝食を終えて庭に向かっていた、というわけだね」


 ヒナタは少しずつ事実を積み上げていく。そんなヒナタの言葉には誰も異論はない。


「そうなると、ケイちゃん達が庭に行ったときにルゥちゃんたちが休憩室に行った、ということかな」

「そうなるね」


 続くヒナタの言葉に、ルゥが賛同する。


「……じゃあさ、マコトちゃんはいつから朝食を食べ始めたの?」

「……それは、ルゥたちと別れた後だから……八時前くらい……」


 ヒナタの質問にマコトが答える。そのようすは、どこかぎこちない。


「……つまり、その間はマコトちゃんだけアリバイがないわけだ」

「……!」


 その間……時間にしておよそ十分から二十分だろう。しかしその間だけは確実に、マコトが何をしていたか証明してくれる人物がいなかった。


「まって、アリバイの話はもうなかったことになったんでしょう?」

「いや、流石に新しい状況証拠が生まれたらそうとも限りませんよ」


 マコトの反論にサクラが答える。

 なかったことになったアリバイは今までのことであって、再び新たにアリバイについて出てきたならば、それは再考の余地がああるのだ。


「……でも、たかが二十分もないくらいでしょ? もし私が犯人だとして、そんな短い時間でどうやってあの二人を殺せるのよ!?」


 そう、マコトが犯人だとするならば、圧倒的に時間が足らなすぎた。

 しかし、そんな彼女に追撃がかかる。


「『幻惑』……でしたっけ」


 そう呟いたのはアズキだ。そしてそのまま言葉を続ける。


「『幻惑』を使えば……いくらでも視認情報を誤魔化せそうな気がします……」

「そ、それは……私はまず『幻影』では狼しか出せなくて……」

「それは証明できるんですか?」


 マコトの反論に、サクラが質問する。


「……どういうこと?」

「すでにできることによる推測では犯人の特定はできませんでした。つまり、理論上でもできるという可能性がほんのちょっぴりあるだけで、犯人につながるんですよ。そこに貴方の意見は関係ないんですよね」


 冷静に、ゆっくりとマコトを追い詰めてゆく。


「それは……できない……けど……」


 マコトは、何も言い返せない。できないことを証明する……そんな悪魔の証明など、彼女にはできなかった。

 だからこそ、別の論点から身の潔白を証明する。


「じゃあ、どうやって私はあの二人を殺せばいいの? 死体の状況から、私が犯人だとすればケイの剣を奪い、ヒビキを殺し、その後にケイを殺した。そんなことは、それこそ『拘束』でもしない限り無理でしょ?」


 問題となるのは、死体の状況。そこから、もしもマコトが犯人だとした時にどうやって二人を殺したかの説明ができなかった。

 しかし、ヒナタは思い出す。


「それって……」


 その言葉は、議論を大幅に進めるものであった。

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