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少女は運命に殺された  作者: Philia
Chapter1
40/60

Ep.36

「さて、新たに犯人が居ないという選択肢が増えましたが、正直私は犯人を探してもいいと思います」


 サクラが発言を重ねた。


「え、でも自殺なんじゃ?」


 その発言に、ユイが反応する。


「自殺だとしても、結局不自然な点があるんですよ。というか自殺のほうが説明ができなくなってしまうんですよね。例のハート型の血です」


 そう、ハート型の血だ。他殺だとしても意味不明だが、自殺だとすればもっと意味不明なのだ。


「それは……そうだね」


 ユイも引き下がる。事実を述べられれば何も言い返せなかった。


「あのハートの血、やはり第三者による介入があったという方が自然なんですよ!」


 サクラの推理に間違いはない。間違いはないが、犯人が居ないという選択肢を提示された少女は、その可能性を追い求めているのだ。


「いや、サクラちゃん、まだわからないよ」


 サクラに反論するのはヒナタだ。


「例えば心中だとすれば、状況的にケイちゃんがヒビキちゃんを殺して、その後自殺した、っていう可能性が高いよね。だったらケイちゃんがヒビキちゃんを殺した時のヒビキちゃんの血でハートを描いて、その後に自殺した、っていう可能性もあるんじゃないかな」


 たしかに、ヒナタの述べる可能性は無視できない。


「ふむ、ヒナタさんの言うことももっともですね。否定はしません。ですがそうなるとやはりおかしな点が出てくるんですよ」


 サクラは、ヒナタの推理を否定する。


「あのハート、太さ的には明らかに手によって塗り拡げられていました。剣や、その他小道具ではありえません。ですが、死体となってしまった二人の手は綺麗に、そしてお互いを固く握り合っています。それは、どう説明できますか?」


 サクラは、ハートの書かれ方と死体の状況から自殺を否定する。


「それは……ケイちゃんがハートを書いた後に湖で手を拭き取った可能性だってある……はず……」


 ヒナタも、その可能性はないだろうと感づいている。だが、言わなければ自殺の可能性が消えるのだ。

 しかしサクラは容赦なく、その可能性を切る。


「ふむ、だとすればヒビキさんの返り血で濡れたケイさんが血を一滴もこぼさずに湖に行き血を洗い流した、ということでしょうか? 少なくとも私が見た限りでは、そのような血痕はありませんでしたけどね」


 サクラは調査の際、湖の方まで走っている。しかし、そんな痕跡はなかったのだ。


「ヒナタさん、酷なことを言うようですが……これは他殺なんですよ」


 その一言が、ヒナタに重くのしかかる。だが、これは受け止めねばならない事実なのだ。


「でも……他殺だとして、誰が犯人になるのでしょう?」


 アズキが口を開く。

 アズキの言う通り、結局は話が振り出しに戻っただけなのだ。


「やっぱり、能力だな」


 皆の結論はルゥと同じだった。


「能力なら、私のメモの出番ですね!」


 そこで、サクラは自身のスマホのメモを見せる。


「うわ、いつの間に……」


 このことを知らなかったルゥはサクラの行動に驚く。すこし引いているかもしれない。


「ふふふ、例えばケイさんの『恋人』の『感覚共有』ですが、これはおそらくヒビキさんとしていたのでしょうね。常に行動を共にしていた理由にもなります!」


 サクラはいきなり真相に迫るのではなく、まずは外堀から埋めていくようだ。


「それならルゥの『魔術師』の『創造』なら、凶器をいくらでも作れそうだよね」

「むむ」


 ユイの推測にルゥが反応する。


「ああいや、別にルゥが犯人だろうってわけじゃなくて……」


 ルゥから怒りを買ったと思ったのか、ユイは即座に弁明する。


「いや、大丈夫」


 ルゥも別に怒っては居ないようだ。


「あとは、マコトちゃんの『月』の『幻影』とかもなにかできそうだよね」

「え、ええ……」


 ヒナタの考えも全然有り得る話だ。


「たとえば、自分の幻影を作ってアリバイを作ったり……」

「わ、私はそもそもあの大きな狼しか出せません……!」


 しかし、そんなヒナタの推理もマコトに否定されてしまった。


「うーん、行き詰まってしまいましたね。一度、事件の流れをもう一度おさらいしてみましょうか」


 行き詰まった議論をまとめるために、サクラは言葉を重ねる。


「まず、事件発生したのは、今日の朝、すくなくともケイさんとヒビキさんには朝食を食べる時間はあったぐらいですね。その後、おそらくケイさんたちは庭に出て、そして殺されてしまいました。おそらくその時間は、私やヒナタさん達は朝食を食べているか、観光を始めた頃でしょう。そして、マコトさんは朝食を食べて医務室へ、ルゥさんやノノミさんは共に休憩室でお茶をしていましたね」


 そこで、サクラは一旦区切る。今のところ、特に問題はなさそうだ。


「ここからは私の視点ですが、私はヒナタさん、アズキさん、ユイさんと共に観光へ行きました。そして、ケイさんとヒビキさんの死体を発見した、という流れです。そこで聞きたいのですが、みなさんは朝食後に何をしていましたか?」

「ワタシ達は朝食後、休憩室に居ましたよ。途中でマコトさんが食堂に戻りましたが、それはサクラさん達に見られていますよね?」


 サクラのまとめにつづいて、ノノミが話す。


「はい! そうですね!」

「……そこからはずっとノノミと一緒だった」


 そこにルゥも付け加える。

 ここまでの状況だと、やはりケイとヒビキが死んだときのアリバイは全員が持っていることとなる。


「なるほど……」


 サクラは、深く考え込んでいた。

 そうして、議論はどんどんと深まってゆく……

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