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少女は運命に殺された  作者: Philia
Chapter1
39/60

Ep.35

 その場に残ったのは、ヒナタ、サクラ、アズキ、ユイの四人だった。


「それでは、見ていきますか」


 サクラの様子に、どこか慣れを感じる。


「これは……うぅ……」


 ヒナタがふと見つけたものに、涙を流す。

 それは、血濡れたキーホルダーだった。間違いなく、ケイとヒビキのものである。


「まず気になるのは、やはりこの剣とハートですね」


 あまり死体の様子は変えたくないので触れることはないが、明らかにその刺さりっぱなしの剣が二人を殺したのだろうと推測できる。ケイの鞘に剣が収められていないので、おそらくはそれだろう。

 そして二人は、死んでいるのにもかかわらず固く手を結んでいた。その白く綺麗な手はまるで、もう離さないという意思表示のようだった。

 そして死体を囲むようにできている血で描かれたハート。手で書かれたようなそれは、まるで何かのメッセージかのようだった。


「うーん、やっぱりどうしても……」

「どうかしましたか?」


 なにか迷っている様子のユイに、サクラが反応する。


「いや、そりゃ他の情報にもよるんだけど、ボクはどうしても自殺なんじゃいかなって……」


 ユイが言い出したのは、二人の自殺……つまりは、心中ということだった。


「だってさ、まず誰かが二人を殺したとして、こんなハート型にする意味がないっていうか……」

「ふむ、それはたしかにそうですね。わざわざ犯人が証拠を作った、ということになってしまいますね」


 ユイの言う通り、血のハートが不自然すぎるのだ。あきらかに人の手が加えられているが、それが犯人によるものだとすると、わざわざ証拠になるようなものを残していったということになってしまう。


「いや、まぁそれを狙うための偽装っていう可能性もあるんだけどね」

「まぁ、心のなかにとどめておきましょう」


 サクラは自殺の可能性を否定せず、調査を続ける。ときには、湖の方まで走ったりしていた。

 しかし、それ以上調査しても不自然なものはそれら以外出てこなかった。


「それでは、一旦牢屋に戻りましょうか」


 サクラの号令で屋敷へ戻る。

 屋敷の牢屋には、すでにルゥがいた。


「やぁ、おはよう」


 力なくルゥが挨拶をする。


「ルゥちゃんはなにか見つけたの?」

「いや、まったく。あの場所から逃げるようにここに来ただけで、なにか目的があったわけじゃないから」


 ヒナタの質問に悲しそうに、それでいて少しの後悔とともにルゥが吐き出す。

 その横でパシャパシャと、サクラがいつも通り皆の個室を撮っていた。


「ルゥちゃん以外はどこに居るの?」

「物置部屋やレクリエーションルームに行っていた。けどもうおそらく裁判所に行ったと思う。ノノミだけは、ケイとヒビキの下へ行ったけど……あの子は強いよ」


 どこか遠い場所を見たかのような様子でルゥは呟く。


「そう……」


 ヒナタも、ルゥにつられて遠くを見る。


「では、私たちも裁判所に行きましょう。正直、これ以上ここにとどまって有用な証拠が出てくる気がしません」


 サクラが話す。

 今回の事件は、謎が深い割に残る証拠が少なすぎると。


「……わかった」


 そうして、全員が裁判所へ向かう。少し遅れて、ノノミも裁判所へやってきた。

 相変わらず、中央は開けている。

 中央を囲むように置かれる椅子と机の数は、七台となっていた。

 ノノミが到着するとすぐに、中央から全画面テレビが現れる。

 相変わらず、クモのイラストが張り出されていた。

 そして、裁判所に声が響く。


『時間がかなり早いですが、揃ったようなので始めましょう。ルールは皆さんおわかりですよね? それでは、飛鳥井ケイ、桑原ヒビキ殺人事件裁判……開廷です』


 かなり端折った文言とともに、裁判が始まった。


「さて、それでは状況の整理から始めましょうか!」


 サクラが、声を上げて指揮を執る。


「まず、第一発見者は、私とヒナタさん、アズキさん、そしてユイさんです! 庭の絶景を観光中に発見しました!」

「間違いない」


 サクラの言葉に、ユイが賛成する。


「死体はヒビキさんが血を流し倒れ、ケイさんが剣を突き立てられたまま死んでいました。つまりは、犯人はまずヒビキさんを刺し、その後にケイさんを刺した、ということですね! それと謎のハート型の血ですが、これについてはよくわかりませんでした!」


 サクラの状況整理は的確なもので、誰も文句を言うことはなかった。


「たしか、昨日の夜までは絶対にケイちゃん達は生きてた……よね?」


 ヒナタが皆に問う。


「そうだね。昨日の夜はボクがいちばん最後に牢屋に戻ったけど、少なくともその時にはまだ二人は牢屋で生きてたよ」


 それは、ユイの証言によって正しいと証明される。


「あと、今日の朝も生きていた」


 そこに言葉を重ねるのはルゥだ。


「私は早くに起きてノノミとマコトを待ってたんだけど、その時に食堂に向かう二人を見てる」


 朝にはまだ二人は生きていて、食堂に向かう姿がルゥに見られていた。

 この時点で、犯行は朝に行われたという線が濃厚となった。


「うーん……それじゃあ、朝の皆の行動を報告しようか」


 ヒナタが皆に提案する。



「はい! 私はヒナタさん、アズキさん、ユイさんを起こして朝食、そのまま庭に出かけました!」

「たしか朝食の時、マコトさんと話したはずです……」


 サクラの説明に、アズキが補足する。そしてその二人の説明にヒナタとユイ、マコトは、特に否定しなかった。


「私はルゥ達と一緒だったけど、朝ごはんが欲しくなっちゃって……」


 話を聞くと、体調が悪かったため少なめの朝食にしたが、あとですぐにお腹が空き、朝食を追加で食べていたところをヒナタ達と出会ったというわけだ。


「私はノノミと一緒に休憩室でお茶を飲んでいた」

「はい、同じです」


 そして、ルゥとノノミは休憩室でお茶を飲んでいた。


「あれ、これって……」


 そう、犯行が行われたと思われる時間帯に、全員がアリバイを持っていることとなった。


「うーん、となると、やはり自殺の可能性も現実味を帯びてきましたね!」


 サクラの発言に一同が驚く。

 ユイ自身も、まさかとは思っていたが、ここまで完璧なアリバイがあればあり得る可能性は高いだろう。


「クモさん、質問いいですか? これでもしも自殺という結論に至ったらどうしますか?」

『……自殺ぅ? まぁ、そうですね。…………新しく犯人は居ない、という選択肢を作りました。それに全員がひとり残らず投票してもらえれば、処刑はしないということにしましょう』


 サクラの質問に、すぐさまクモが答える。そして新たに犯人は居ないという選択肢が生まれた。

 ただし、七人の内六人が犯人は居ないという選択肢に投票したとしても、残り一人が少女の誰かに投票すれば、その少女が処刑される。ということだった。


「なるほど、ありがとうございます!」


 サクラはクモにお礼を言う。クモは無反応を貫きながら、静かに消えていった。


「それでは、議論を再開しましょうか!」

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