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少女は運命に殺された  作者: Philia
Chapter1
36/60

Ep.33

「きもちい~!」


 いま、ヒナタはユイと共に庭にやってきた。サクラとアズキは図書館にまだ入り浸るらしい。

 そして、いま彼女たちは平原のど真ん中で大の字に寝転がっていた。

 草原に吹く気持ちのいい風が、彼女らを包む。


「きもちいいね~!」


 こうして寝ているだけでも、まるで心が洗われていくかのようだ。


「……あのね、今だから言うけど、結構ボク、不安症な一面があるんだ」


 突然の告白に、ヒナタは驚き固まる。


「……え?」

「いやいや、もうだいぶ良くなってるから大丈夫だよ? ただ、よく考えたらボク達ってここに来る前のこと何も知らないなってね」


 ユイの言う通りだった。ヒナタ自身も、サクラやアズキ達の過去を知らない。


「……たしかにそうだね」

「ま、でもそれは聞きに行くことの程でもないけどね~。そういうことはボクみたいに自分から話したほうがいいよね」


 ただそれは、わざわざ聞きに行くことではない。もしもその過去に忘れたいような辛い過去があれば、それを思い出させることになってしまう。


「……私は、どうだろう。話すことがないや。家族と過ごして、友達がいて、学校生活を過ごして……」


 思い出されるのはここに来る前の普段の日々。

 家族でテーマパークに行ったり、友達とカラオケに行ったりといった、何の変哲もない日々。


「……いい人たちに恵まれたんだね」

「うん、ありがたいよ」


 ヒナタは、改めて家族に感謝を伝える。もしも帰ることができたなら、ユイ達皆を紹介しようと考えていた。


「あー、ヒナタにユイじゃん!」


 二人がそうして気持ちよく過ごしていると、真上に赤いかっこいい髪が見える。ケイのものだ。

 そばにはヒビキも居た。


「……何してるの?」

「いやー、ここで風に当たりながら寝そべるの気持ちいいんだよね~!」


 ヒビキの問いに、ユイが答える。


「確かに、ここ風通しも良さそうだし。おじゃましまーす」

「……」


 ケイも一緒になって横になる。

 ヒビキも無言で寝そべった。


「うは~! やっぱりこういうゆっくりした時間がいいんだね! 夜も外に出れたらなぁ~」


 夜に牢屋で寝ずに居るとお叱りのメールが届くことはケイも経験していた。


「たしかに、夜空とかすごいきれいに見えそうだよね」


 ヒナタが答える。

 現在は太陽のせいで星は何一つ見えない。だが、この街灯も何もない場所ならば、きっと素晴らしい夜空が見えるだろう。


「クモも、少しぐらいはわがまま通してくれてもいいのに」


 ケイが横で不満を漏らしている。


「クモ、嫌い」


 ヒビキも、クモに対してはあまりよく思っていないようだ。


「そもそもさー、これだけの人数を誘拐? かは知らないけど連れ去っておいたら普通警察が動くよね? なのになーんにも来ない」


 言われてみれば、ケイの言う通りだった。

 一斉に少女が疾走したとなれば、司法が黙っていない。

 しかしこれだけの時間がありながら何も反応がないとすると……


「ここがそんなにも人の寄らない僻地なのか、はたまた司法との癒着……」


 ヒビキが結論を出す。実際、その二択しか思い浮かばなかった。


「ま、監禁されてる側の私たちが何言っても変わらないんだけどね」


 そう言ってケイはワハハと笑う。すでに彼女の中では吹っ切れていた。この場所からは何度も脱出しようとしたが、なぜかできない。故に、ここで一生を終える覚悟をしたのだ。


「そうなんだ……」


 ヒナタは、その少し悲しげな雰囲気のケイに。かける言葉が見つからなかった。


「そんな悲しまないでよ。私も別にここが嫌ってわけじゃないからさ。ご飯はあるし遊ぶ場所もある。気の合うヤツもできた。そんなに悪いところじゃないよ」


 ケイの言葉にヒビキがピクリと反応する。

 おそらくは喜んでいる。気の合うヤツとはヒビキのことだからだろう。


「私も……結構楽しい」


 ヒビキもケイと出会えて良かったという。この二人はずっと一緒だが、なんやかんや仲良くしているようだ。


「ボクも、最初は一人でもいいかなとか思ってたけどヒナタ達と出会えて良かったよ。じゃないとこんなきれいな景色も見れなかっただろうしね」


 ユイも、ヒナタに感謝を述べる。当のヒナタは少し恥ずかしそうな様子だった。


「私も、サクラちゃんに話しかけてもらえなかったら誰とも話せなかったし……」


 ヒナタ自身も、初めて話した相手はサクラだ。その時の光景が頭に浮かぶ。まだここに来たばかりで混乱していた時、ある意味道を示してくれたのはサクラだった。


「サクラちゃんいい子だよね~! ボクもサクラのことすごいと思ってるよ。コミュ力あって頭よくて……けっこうグイグイ来るときもあるけど、それもサクラの個性だよね」


 ユイはサクラのことをかなり高く評価している。いやユイだけでなく、ここにいる全員がサクラのことを高く評価していた。


「噂をすればなんとやら! ありがとうございます!」

「びゃー!! び、びっくりした……」


 そんな彼女たちの近くには、いつの間にかサクラの姿があった。

 いや、サクラだけでなくアズキやルゥ、ノノミ、マコトの姿もある。

 全員がその平原に集合していた。


「ふふふー、私のことを褒めるなら、私の前で褒めてくれていいんですよ!」

「き、聞こえてたのか……」

「はい! 全部!」


 ユイが恥ずかしそうに顔を赤くする。


「ですが、グイグイ来るとは失礼な! 私は思ったことを正直に答えているだけですよ!」

「それなんだよなぁ」


 そんなユイの愚痴をきて、皆で笑う。


「そういえばルゥさん、皆に渡したいものがあるとか?」


 サクラは思い出したかのようにルゥに話しかける。


「うん、これを……」


 ルゥが手を差し出す。

 ルゥの手に乗せられていたのは、小さなキーホルダーだった。


「これは……?」

「『創造』の練習してた時に作った。皆に配る」


 どうやら、ルゥの能力『創造』で作られたものらしい。よく見れば、細部まで装飾が施され、少しずつ違っている形は、それぞれの個性をイメージしたものらしかった。


「わぁ、ありがとう!」


 ヒナタは思わず笑顔になる。いや、ヒナタだけではない。ここにいる全員が、顔をほころばせ笑顔になっていた。


「喜んでくれたなら良かった」


 ルゥも喜んでもらえて嬉しそうだ。


「大事にするね!」


 そうして、今日のところは解散した。各々がキーホルダーを握りしめている。

 その光景は、とても平和なものであった。

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