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少女は運命に殺された  作者: Philia
Chapter1

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Ep.29

「……んあ?」


 次の日、ヒナタは牢屋で目を覚ます。

 時計を見れば、すでに朝の九時になっていた。


(サクラちゃん……?)


 どうやらいつもなら毎朝起こしに来るサクラが、今日は来なかったらしい。


「あれ、ヒナタも今起きたんだ。めずらしいね」


 外を見れば、桜色の髪の少女がいた……というわけではなく、今起きてきたのであろうユイと目があった。


「あれ、ユイちゃん。サクラちゃんとアズキちゃんは?」

「さあ?」


 どうやらサクラとアズキはすでに起きて、別の場所に行ったらしい。


「ねね、せっかくだしさ、ちょっと一緒に来ない?」


 ユイがヒナタを誘う。


「全然いいけどどこに行く?」

「ふっふっふ、じゃあ一緒に行こう!」


 ヒナタの言葉をはぐらかし、そのままユイはサクラを連れて行く。

 朝飯を食べ終わり、ついた場所は庭の森の中であった。


「ユイちゃん、ここは……?」

「ふふふー、昨日森を走り回った時に見つけたんだよ!」


 そこは、おそらく庭の森の端の方である。

 小さな川から、水がチョロチョロと流れ出し、小さな湖のようなものができていた。

 湖の上から光が差し込み、幻想的な光景が広がっている。


「綺麗……」


 思わずヒナタは声を漏らす。


「いやー、たまには外を出歩くのもいいよねって感じた!」


 ユイも、その景色に見惚れている。こんな閉鎖的な環境でも、隠れた幻想的で美しい景色が隠れていたのだ。


「……ここ以外にも、こういう場所があるのかな」

「あるかもね。ここの庭めっちゃ大きいし」


 ヒナタの言葉に、ユイは賛同する。


「そうだ、こういうところいっぱい探して、後でサクラちゃんたちをガイドするってのはどう?」

「いいね! 面白そう! そうと決まれば早速行こう!」


 ヒナタとユイは、すぐに森を抜け、今度は湖の方向へ進む。


「おお~」


 太陽の光が、湖に反射してキラキラと輝いている。


「初めて見たけど……結構大きいんだね。あの遠くの塀まで続いてる」


 ユイは初めて見るらしい。

 湖の大きさは、スマホの地図を参考にするとおおよそ庭の四分の一を占めていた。


「うーん、見晴らしが良さそうなのは……あ、あそことかどう?」


 ヒナタが見つけたのは、明らかにここから見る景色は素晴らしいですよという看板が立ててありそうな丘だった。

 二人はそこへ移動する。


「おお……」


 その景色に、二人は絶句する。

 湖と平原、そして視界の端に映る森と輝く太陽が、見事に調和していた。それぞれが目立たないということはなく、かといって目立ちすぎて言えるわけでもない、まさしく自然が生み出した圧巻の景色だった。

 一つ文句を言うならば、湖のそばで例のスライムが映り込んでいることだろうか。


「あのスライム? 幽霊? なにしてるんだろうね?」

「うーん、謎」


 二人にも、スライムの考えていることはわからない。


「でも私たち、最後はアレになるってクモが言ってたけど。まさか処刑の時のアレが全員に起こるのかな……」

「ボクはあまりなりたくないなぁ……」


 処刑の時の光景、片時も忘れたことはない。※※※やキヨが処刑された後に現れた黒いスライム。

 あれが全員に起こる可能性があるのだ。


「ボクはせめて普通に死んだほうがマシかなぁ。条件とかがわかったら回避してクモのことを驚かせたいな」

「うーん、条件か……」


 ※※※とキヨの共通点といえば、人を殺していることだ。だがそれだけならば、こんな回りくどいことせずに殺し合いのデスゲームをさせたほうがいい。

 つまりは別の理由があるのだ。


「それにおかしいのはクモもだよ。あいつ、ボクが誰にも見られていないことを確認してこっそり牢屋以外の場所で夜ふかししてたのにメールで注意してきたんだよね。監視カメラもないはずなのに」


 ユイは愚痴る。そして、同じようなことをヒナタも経験していた。


「ああ、それユイちゃんもなんだ。私も牢屋以外で寝ちゃった時に注意のメールが届いたんだよね」


 あの時以来、寝る時は必ず牢屋に戻っているが、少なくともそうしていれば注意されることはない。

 というか元々どういうルールによってこの屋敷が成り立っているか、少女たちは殆ど知らない。

 せいぜい七時に牢屋の鍵が空き、十一時に閉まるということ程度だ。


「うーん、ボク達が知らない方法で監視されてるのかな~。どういう方法なんだろう……」


 ユイは自分たちが監視されてると思い、体を震わせる。


「さすがに二十四時間監視なんてありえないでしょ……ありえないよね?」


 ヒナタも怖くなり周りを見渡す。カメラやドローンなどは飛んでいない。


「まぁまぁ、心配しすぎてもしょうがないでしょ!」


 すでにユイは切り替えている。実際、運命のタロットという特殊な能力があるせいで、もはやユイの中では何でもありかな、という感覚になっていた。


「たしかにね」


 ユイのことばでヒナタも気にしないことにした。

 せっかく目の前に素晴らしい景色があるのだ。野暮なことは考えなくても良い。


「あ、写真とっておこっと」


 ヒナタはスマホを取り出し、写真にこの景色を収める。さすがの機能少なすぎのスマホでもカメラ位はある。

 そして、黒いスライムが映り込んでいる以外は完璧な写真が完成した。いや、もはや黒いスライムがあることにより新たな調和が生まれている。


「おお、きれいな写真! ヒナタ写真家になれるよ!」


 ユイもそのきれいな写真を見る。その美しさに、しばらく見惚れていた。


「ふふ、後でメールで送っておくね!」


 写真を褒められて、ヒナタもその頬をほころばせた。


「あれ、ヒナタさんにユイさんじゃないですか! こんなところでどうしたんですか!?」


 そして、そんな二人に遠くから声を掛ける者が居た。サクラだ。そばには、アズキも控えている。


「もう、ヒナタさんたちどこに行ってたんですか」

「それはこっちのセリフだよ!」


 サクラの一言に、ヒナタが言い返す。


「私たちですか? 私たちはずっと屋敷でゲームしてましたよ!」

「サクラさんに一回も勝てなかった……」


 アズキはしょんぼりした様子だ。


「で、ヒナタさん達は何をしていたんですか?」

「私たち? 私たちは……」


 そこで、今まであった出来事を話す。


「へ~、きれいな景色ですか! それは楽しみです!」


 いつの間にか太陽はかなり沈んでいる。今の時間帯だと、森の中の小さな湖は光がうまく入ってこないでので太陽が上にある時よりかはあまり良く見えないだろう。


「ふふ、楽しみにしておいてね!」


 そうして、四人揃って屋敷へ帰る。

 屋敷の温かい光が四人を迎え入れるのだった。

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