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少女は運命に殺された  作者: Philia
Chapter1
31/60

Ep.28

『ふむ、まぁ少しは答えてやってもいいでしょう』


 クモは一呼吸おいて話し始める。


『まず、なぜこんなことをさせるのかについてですが……そもそもあなたたちが原因では? 殺人事件なんて起こさなければこんなことしなくてすむんですよ』


 そしてまた一呼吸おく。ずずずと、何かを飲んでいる音も聞こえてきた。


『ぷはぁ、次に、なぜあなた達なのかと。言ったでしょう? あなた達は運命に選ばれたと。それだけですよ』


 そしてまた一呼吸がおかれた、まるでもったいぶっているかのような態度である。


『最後に、あのスライムはなんなのかと、この裁判中に言ったはずですよ、「運命」だと。強いて言うなら、あなたたちも結局ああなるんです。まぁ、幽霊みたいなものなので、気にしないでくださいね』


 そういってすぐに返答はなくなる。まるで追求を避けるかのようだった。


「ちょっと! 説明が少なすぎますよ!」


 サクラの文句も、もうクモには届いていなかった。

 結局、よくわからない、ということだけがわかった。


「……とりあえず、牢屋に戻りましょうか!」


 サクラの声で皆が動く。

 ウミを失い、皆どこか元気がなくなっている。

 それはそうだろう。

 ウミは皆の心の支えであり、頼れる存在であったから……



 †



「……」


 裁判所を出たヒナタは、一人で医務室へ向かう。

 そこには、もう誰も居ない。

 あの強烈な腐敗臭も、裁判所から出たときには消え去った。

 キヨも、もう居なくなってしまった。


「う、うぅ……」


 ヒナタは泣いた。

 この屋敷に閉じ込められて、初めて泣いた。

 別に今までが何も感じなかったわけではない。

 ただ、ここまでまじまじと喪失を見せられては、その涙が止まることはなかった。


「なんで、こうなっちゃったかなぁ……」


 思い出すのは、ここに来る前の光景。

 学校に通い、ご飯を食べ、友達と遊ぶ、そんな光景。

 しかし、それはもう遠い現実となってしまった。

 ここから逃げることができないのは、ケイが何度も証明していた。

 すでにケイも諦めている。


「ん? こんなところで何してるの?」


 ヒナタに声を掛ける者が居た。

 ユイだ。


「ユイちゃん……」

「ちょっと、涙でくしゃくしゃじゃん。泣いちゃった?」


 ユイの言葉に静かに頷く。


「あれ、ヒナタさんにユイさんじゃないですか!」


 そこに、サクラとアズキも合流する。


「あの、どこか具合が……?」

「大丈夫だよ、アズキちゃん。大丈夫」


 アズキに大丈夫と伝える。自身にも、大丈夫と言い聞かせる。


「それでこれからどうします? もう三時のおやつの時間終わっていますが」


 サクラの言う通り、医務室の時計を見れば、その時間が三時を過ぎていることがわかる。


「わたしはちょっと外出たいかな……」


 その言葉にヒナタは答える。

 今のヒナタは、とにかく自分自身が落ち着ける場所を探しているのだ。


「なら行きましょう!」

「ええ~」


 ユイが不服そうな顔をするが、そんなことはお構い無しとサクラがユイを含め外に連れ出す。


「一緒に行けば楽しいですよ!」


 そんな事を言いながら、四人は外へ出る。

 まだ元気に輝いている太陽は、皆を暖かく出迎えた。

 そんな太陽に照らされた平原は、いつもより輝いて見える。


「おお~、案外きれいじゃん……って、ぎゃぁぁぁぁ!」


 ユイが外の景色に見とれたのもつかの間、いつの間にかすぐそこに居た例の黒いスライムに悲鳴を上げる。


「あはは、ユイさん、この子は無害なんですよ!」


 そういってサクラはスライムのことをツンツンする。しかし、その手はスライムを幽霊のようにすり抜け、何も感じていなさそうであった。


「そうだけど、そうだけどさぁ~」


 それでもユイは涙目だ。


「あ、いっちゃった」


 そして少し目を話した隙に、そのスライムは地面へ染み込むように消えていく。


「はあぁぁ、助かった……」


 それでようやくユイは胸を撫で下ろす。


「うーん、クモさんが言うには私たちもいつかアレになるらしいですが、どういうことなんでしょうね? まぁ、今はそんなこと関係ないですが!」


 そういうと、サクラは木の方向を指差す。

 サクラの行動に、ヒナタとアズキはおおよその予測がついていた。なぜならその木は何度も見たことがある、例の大きな木だからだ。


「さぁ、競争ですよ! 準備はいいですか!?」

「え、えぇ?」


 準備運動を始めたヒナタとアズキに戸惑うユイ。

 その理由は、直後に思い知ることとなる。


「よーい、スタート!」


 一斉に駆け出す三人。おいていかれるユイ。


「え、えぇ! ちょっとまって!」


 急いでユイも駆け出すが、一歩出遅れる形になってしまった。


「はぁ、はぁ……三人とも、速すぎ……」


 ユイが木についた頃、すでに三人は思い思いの姿勢で休憩していた。


「まさかアズキちゃんに負けるとはな~」


 サクラが一着であり、二着はアズキ、三着がヒナタであった。

 二着となったアズキ自身も、この結果にびっくりしている。


「これって、はぁ、なんのために……」


 息を切らしながらも、ユイがサクラに問いかける。


「走るのが好きだからです!」


 そんなユイにサクラは堂々と答える。その姿は見ているだけで元気が貰えそうだ。


「ふふ、あはは」


 気づけば、ヒナタも笑っていた。

 先程まではあんなに落ち込んでいたが、サクラと一緒にいるとどこか気持ちが軽くなる。


「次は森にでも行きましょう!」

「……しょうがないなぁ」


 ユイもすでにサクラの雰囲気に慣れたようだ。

 四人は今度は森へと駆ける。

 時が止まったかのように変わらない風景。走るほどに通り過ぎていく気持ちの良い風は、少女たちの傷ついた心を少しずつ癒やしていくのだった。

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