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少女は運命に殺された  作者: Philia
Chapter1
30/60

Ep.27

「アレは、本当に許せなかっただけ……なの……」



 †




 キヨは、恨みをつのらせていた。

 自身の恩人が殺された。

 それはとても凄惨な光景だった。

 犯人を殺したいとすら思った。


 しかし、裁判が始まって、あっという間に全てが終わった。

 ウミ。そして、サクラ。

 ウミだ。

 ウミが私の敵を殺した。

 敵の敵は……敵だ。


 キヨの内側には、どす黒い感情が駆け巡っていた。

 そこから、どうやってウミを殺そうか悩んだ。

 たとえ背後から襲っても、キヨの力では反撃されるのが目に見えている。

 だからこそ、能力をつかった。

 拘束と誘惑……の、『拘束』である。


 大富豪大会の後、キヨは体調を崩し寝込んでいた。そして時間が立ち、そこにはウミとヒナタだけが残っていた。

 ヒナタは寝て、ウミは一人となり部屋を出る。

 それをこっそりついていく。

 そうしたら偶然たまたま、ウミが物置部屋で一人になっていた。


(いましか……ない)


 キヨは好機だと思い、拘束し、そのまま部屋の奥へと歩かせた。

 そのまま誰にも見つからずに……いや、人は居た。いたが、『誘惑』の力を使い、自身に注意が向かないよう、透明人間のようになっていた。

 そしてレクリエーションルームから剣を引っ張り出し、そのままウミを斬り殺した。

 できるだけ長く苦しむように、小さな傷を大量につけた。

 力が弱くあまり大きく振りかぶれないという事もあったが。

 それで終わればよかったのだ。しかし、そこで誤算が生じた。


(痛ッ!)


 ウミがなぜか『拘束』を解き、掴みかかってきた。腰に剣を持っているというのにわざわざ掴みかかるということは、ウミは殺す気はなかったのかもしれない。

 とにもかくにも、そんなウミを無理に引き剥がしたせいで、自身の腕に傷がついてしまった。

 すでにウミは事切れていたので、どうにかしなければと焦った。

 死体は自身の『誘惑』を使って隠すということはすでに考えていた。

 いそいで剣をきれいに拭き、元の位置へしまう。

 傷はすぐには治らないので、自身の長袖の衣服で隠した。


 そしてすべてを終えた後、医務室へ戻った。

 そこには、自身のベッドですやすやと眠るヒナタの姿があった。

 それを利用し、自身のアリバイ作りに勤しんだ。


 その後は簡単だ。

 物置部屋に入る人と一緒に入り、『誘惑』による誘導で死体の方へと注意を向けさせない。

 匂いは、物置部屋にあった芳香剤をたくさん焚き、誤魔化した。

 そして三日後、ついに死体は発見されたのだ……



 †



「それで……ウミちゃんを……」


 ヒナタは静かに恐怖する。もしもヒカリの事件の時、裁判所の主導権を握っていたのが自分だったら、自分でなくとも、今回のようにサクラだったら、犠牲者はおそらく自分やサクラだっただろう。


「私は、悪いことを悪いことと自覚してやったんだ……何も言えないさ」


 キヨの普段の弱々しい姿勢は、もはや影も形もなかった。おそらくは弱い自分はウミを殺す時にサヨナラしたのだろう。


『たった今、投票が終わりました。投票結果を公開しますね


 ・清水キヨ 10票


 というわけで、今回処刑されていただくのは、清水キヨさんです』


 誰も、何も喋らなかった。

 キヨも、静かに中央へと進む。

 中央には、前回も見た四つのカードの束がある。

 それを誰かに言われる前に、キヨは全てを引き切る。


『中央の……なんて言わなくても良さそうですね。仕事が楽です』


 そして、再び現れる一つの束。

 キヨは、一番上の一枚を引く。


『結果は……ほう、ソードの10。いい運命ですね』


 クモの声が響いた直後、机もカードも消える。

 そして、強大な光に皆が視力を奪われる。

 視力が戻り、皆が目を開くと、そこには大きな石の椅子が一つ置かれていた。

 左上と右上にスポットライトがあり、椅子を照らしている。


「座れ、ってこと?」


 キヨはその椅子に座る。


『話が早くて助かります。それでは処刑……執行です』


 直後、キヨの腹から一本の剣が生えてきた。


「……え?」


 だれかの困惑するかのような声が響く。


 つづいて、二本、三本と、その剣の数が増えていく。


「……! 痛い! 痛い!」


 その痛みに気づいたのか、キヨが思わずと言った声を漏らす。

 しかし、いくらキヨが叫んでも、その無慈悲な剣は本数を増やし続ける。


「…………ッ! 痛い痛い……痛い……」


 五本を肥えたあたりから、キヨの悲鳴は小さくなっていく。

 そんな様子でもお構い無しと、その剣はどんどんと増えてゆく。


「あああぁ……やめてください……私が、悪かった……から……」


 キヨの声がどんどんか細いものになってゆく。

 その生命が尽きようとしていることは、誰の目にも明白だった。

 しかし、誰も動かない。動けなかった。


「あ……」


 九本目が喉から生える。

 キヨは喉を潰され、叫ぶことすらも許されなくなった。

 キヨの目には涙が浮かぶ。それは後悔なのか、はたまた別の感情か。


「……ッ!」


 そして十本目が心臓から生える。

 キヨの目からは、どんどんと輝きが消えていった。

 そこでキヨは事切れていた。

 目を閉じ、腕は力なくたれている。

 スポットライトに当たった影が、まるで椅子に座るキヨを見上げているかのようであった。


「これは……」


 そして、それだけでは終わらなかった。

 リリィの時と同じように、その心臓から黒いものがキヨの体からまるで溢れるように飛び出す。


「ひっ」

『止まりなさい、※※※※※』


 それはヒナタの直前まで進む。しかし、クモ声が響くと、ピタリとその動きを止めた。


『今回は豊作ですね……おっと、失礼。無事、罪人の処理が完了しましたね。それでは、山田ウミ殺人事件裁判……閉廷です』


 クモの声と同時に、裁判が終わる。

 いつのまにか、キヨの体も跡形もなくなくなっていた。


「ちょっとまった!」


 しかし、それに待ったをかけるものが居た。

 サクラだ。


『……なんでしょう?』

「そろそろ話してもらうよ。なんでこんなことをさせるのか、なんで私たちなのか、そしてあのスライムは何なのかを」



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