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少女は運命に殺された  作者: Philia
Chapter1
29/60

Ep.26

 犯人と指名されたキヨ。もちろん、黙って受け入れるわけがない。


「サクラちゃん……君の推理にはいくつも問題点があります」


 キヨは普段の弱々しい態度とは裏腹に、強気な態度で反論する。


「まず、確かに私は三日前のアリバイは弱いです。ですが根本的な問題がありますよね? 私が例えば三日前にウミさんを殺したとして、物置部屋は昨日も一昨日も人が居ました。それはどう説明しますか?」


 キヨの反論も確かであった。

 結局、キヨが犯人だった場合での根本的な問題は何も解決していないのだ。


「ふむ、たしかにそうですね」

「もしかして、能力、なんじゃないかな」


 ヒナタは思わず声を漏らす。


「……詳しく、聞かせてくれるか」

「あ、えーっと、前に本で読んだんだけど、それにはいろんな能力が書いてあって、『悪魔』のページは確か……誘惑と拘束、だったかな」


 ヒナタはサクラから送られたメモのメールを確認しつつ、キヨに対し説明をする。


「例えば誘惑の能力でずっと視線をウミちゃんの方向から別の方向へ誘惑し続けていたら……なんてことがあり得るよね」

「ヒナタちゃんのその推論は確かに整合性が取れている……けど、私が能力を使った証拠なんてどこにもない。元から死体はなかった、そう考えるほうが自然じゃないか?」


 ヒナタの推理にキヨが反論する。実際、どうにかこうにか隠したとして、そんなことをするよりも最初からなかったと考えるほうが自然だ。


「いや、死体は最初からそこにあったよ。なぜなら、死体は明らかに腐っていた。最初はショックすぎて気づかなかったけど、冷静に考えてみれば一日やそこらであそこまで腐敗はしないでしょ?」

「……それこそ、能力の出番ではないか? たとえばヒビキの『節制』。これは見たことあるが、物と物と混ぜ合わせる。つまりは、死体と空気中の微生物や細菌をまぜ、腐敗を進めた、という可能性もある」

「……私にはアリバイがあるけどね」


 キヨに反論されつつも、ヒナタは自身の推理を進める。


「でもヒビキちゃんにはアリバイがある。それに、キヨちゃんが能力を使った証拠だって残ってるんだよ?」

「……何がだ?」


 ヒナタは、とある状況で撮った写真を見せつける。


「これ、わかるかな?」

「……ベイゴマ?」


 そこで出された写真は物置部屋を調査した時に発見した、ベイゴマだった。


「そう。調査を始めた時に、すぐに目に入ったよ。一昨日、あんなに探したのに見つからなかったのが不思議なくらい、すぐにね。ああ、そういえば一昨日キヨちゃんも一緒に居たよね」


 一昨日、ヒナタたちはラジコンを求めて物置部屋を探していた。その際に見つけたベイスタジアムに釣られて、そのままベイゴマ本体を探していた。

 しかしその日に、ベイゴマを見つけることはできなかった。


「ああ、なるほど。たしかベイゴマは死体付近を調査し始めてすぐに見つけましたね! たしかに『誘惑』で死体の方から目を逸らすかのように誘導されてしまえば、ベイゴマを見つけることは不可能だったでしょう!」


 サクラが結論を言う。その結論は、キヨを黙らせるのに十分な整合性があった。


「……ならば、匂いはどうする。あの強烈な匂い。今日突然あんな強くなったわけでもないはずだ」


 するとキヨは、話題を変えるかのように匂いへと問題を変えた。


「ああ、それについて一ついいですか?」


 それについて手を上げたのはヒナタではなくサクラだった。


「私、わけあって死体が放置された現場に居たことがあるんですよね! その時に感じたことは、二日目時点ならばまだ誤魔化しが効きますが、三日目からは無理、ってことですね!」

「……どう誤魔化したと?」


 サクラの発言に、キヨが問う。


「例えば、芳香剤や匂い消し系のもの。あそこは物置部屋でおもちゃ以外にもカーテンの替えとかがあったのでそれらもある可能性が高いですよね。それにあの場にはキヨさんによる誘導がかかっていました。隠すことも十分可能なのでは?」


 そこでヒナタは思い出す。はじめて物置部屋に入った時、正直かなりきつい匂いがしたことを。


「……でも結局、それらは明確な証拠にはならない」

「そうですかね? ずっと聞かないでおいたんですけど、袖、まくってもらえますか? 何もなければ次は足になりますが」


 そこでついにキヨの顔が明らかに青ざめていく。

 いま、キヨは青と黒の暖かそうな長袖を着ていた。


「ずっと思ってたんですよね。ウミさんの死体に残されていた、爪の血。あれはウミさんが最期に遺したダイイングメッセージなんじゃないかって。ただ普通に聞くとただの変態じゃないですか?」


 だからこそ、ここまで状況証拠が揃ってから明確な証拠を出した。全てはサクラの筋書きどおりだったのだ。


「いやー、ここまで誘導できたのもヒナタさんのナイス推理があったからですけどね。さぁ、早くしてください」


 キヨが恐る恐る、顔をどんどん青くしていきながら、震えた手で袖をまくる。

 そのてが肘に差し掛かった頃、全貌が見えた。


「あ……」


 そのこえは誰が発したのだろうか。

 キヨの腕には、立派な爪痕が残されていた。

 だれかに引っかかれたかのような、明らかに人の手によるもの。


「チェックメイトですよ。キヨさん」


 サクラの声は、すでにキヨの耳に届いていなかった。

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