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少女は運命に殺された  作者: Philia
Chapter1
27/60

Ep.24

「犯行が昨日なら、私たちは無理だよ~!」

「……そうね」


 そういうのはケイとヒビキだ。


「なんせ私たちは昨日はずっとレクリエーションルームで遊んでたからね!」

「それはそこの二人だけじゃなく私も見てる」


 そしてその言葉を裏付けるようにルゥも話す。

 昨日はルゥはノノミとマコトとともにずっとウミを探していたようだ。


「……あ、そういえば物置部屋の中もその時見たはずだ」


 そこでルゥは思い出す。昨日、レクリエーションルームに行った後に物置部屋の中を見たことを。


「でも、その時にウミさんの死体はありませんでしたよね?」

「ああ、そうだ」


 ノノミの言う通り、昨日探したときにはウミは見つかっていない。つまり、死体は物置部屋の後に現れたということだ。


「その時はたしか、ワタシとルゥさん、マコトさん、それとキヨちゃんもいたかな?」

「キヨさんは何しに物置部屋にきてたんですか?」


 キヨもいたという発言に、サクラが素早く問う。


「ええと、一昨日、ラジコンもコマも見つけられないサクラさんを見てると……ちょっと我慢できなくて、あの、一人で探そうとしたんです。そこにノノミちゃんたちも来て……」


 キヨが言うには、サクラのためにラジコンやコマをこっそり探しに行っていたようだ。


「……! 嬉しいことしてくれるじゃないですか~!」


 そのことばにサクラは嬉しい気持ちを隠せないでいた。

 キヨは顔を真赤にして照れていた。


「それでその後はそのままキヨちゃんと一緒に色んなところにいったかな」


 そうノノミが締めくくる。


「あれ、でもそうなるとここにいる全員にアリバイがある、ということですか?」

「……たしかにサクラちゃんの言うとおりだ。私とサクラちゃん、アズキちゃん、ユイちゃんは昨日ずっと図書館に居たはずだし……」


 ヒナタの言う通り、昨日はずっと図書館に居た。こうなってくると、全員にアリバイがあることとなり、誰にも犯行ができないのだ。


「だったらやっぱり……」


 ヒナタには、もう一つの見当がついていた。

 いや、ヒナタだけでなくルゥにも、その考えは浮かんでいた。


「黒いスライム……」


 それは、昨日の夜、ヒナタとサクラが外に出歩いた時に遭遇したスライムだ。

 時間帯としても、ウミを殺してそのまま外に逃げてきたところをヒナタたちに見つかったという線も十分にありえる。

 いや、ここまで出てきた状況から推測すれば、その線しか考えられなかった。


「黒いスライム……それって、確か昨日にヒナタやサクラがばったり遭遇したってやつだよね?」


 ユイの確認に、ヒナタは頷く。


「それなら確かにありえるね……というか、その線しかなくない?」

「でもでも待ってください、本当にスライムが犯人なのでしょうか?」


 しかし、それに待ったをかけるのはサクラだった。


「あのスライムって不定形であの感じは多分ネチョネチョしてますよね。そうなったら今回の死体の状況と合わないんですよ」


 サクラの言う死体の状況とは、例の全身が切り刻まれたかのようなウミの状態だ。


「それは……そうだけど……もしかしたら、内側にナイフとかが仕込んであった可能性だってあるよ! あのときは暗くてよく見えなかったし」


 ヒナタはそれに反論する。たしかに昨日の夜スライムを発見したが、そのときは焦っていた上に夜で視認性が悪かったため、スライムが何かを持っていても見落とす可能性が高いだろう。


「たしかにそうですね。じゃあ、スライムさんが犯人なんですかね?」


 サクラが確認するまでもなく、全員がそう思っていた。だが……


「あれ、投票ページに……」


 処刑者を決めるためには投票ページにて投票を行う必要がある。少女たちの名前の中から一人選び、投票する形式だ。

 しかし、そこにはいくら探してもスライムの名前はなかった。


『はぁ、なんだか冤罪をかけられていますね……』


 すると突然、裁判所内に声がひびく。

 それは間違えようもない、クモの声だった。


「冤罪って……どういうこと!?」


 ヒナタは叫ぶ。犯人がわかったところなのに、それが冤罪だと言われたのだ。


『冤罪は冤罪ですよ。あの※※※……だと伝わらないですね。あのスライムは犯人ではありません』

「そう言うってことは、証明できるってことだよね」


 ユイが言葉を重ねる。


『ええ、もちろん。折角ですから実演してもらいましょう。来なさい、※※※※※』


 理解不能な言葉の後、裁判所の中央の何も無い場所から染み出すように例のスライムが現れる。

 しかし、命令なのか大人しくなっている。


『まず一つに、このスライムは言語化するならば「運命」そのもの。実体もなければ干渉もできない。ただの幽霊です』

「幽霊……?」


 ここにいる全員にはあまりピンとこない。


『はぁ、じゃあ例えばここにナイフがあります』


 クモの言葉と同時に、空中にナイフが現れる。


『これをスライムに渡そうとしても……』


 ナイフがだんだんとスライムに近づいていく。そして、スライムとナイフが触れ合った……かに思えた。


「……!」


 そこにいる全員は驚愕する。

 そのスライムに触れたかと思ったそのナイフは、スライムをまるでそこに居ないかのように通り抜けていった。

 そこに、物理的な干渉はなにもなかった。

 そして、ナイフがスライムの真上で止まり……そのまま落下する。

 しかし、スライムに当たっても……いや、当たっていないのだ。

 そこには何もなかったかのようにナイフは落ちていき、地面に突き刺さる。


「なるほど、これは……」

『理解、してくれましたかね? ナイフも持てないこのスライムには、あんな切り傷を付けることは不可能なのですよ。戻りなさい』


 クモの一言により、スライムは地面に染み込むように消え去る。

 今思えばその光景は、地面をすり抜けていると言えるような気がした。


「なるほど、つまり……」


 犯人はこの少女の誰かだと、そのことが確定した瞬間でもあった。

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