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少女は運命に殺された  作者: Philia
Chapter1
22/60

Ep.20

「サクラちゃん、私たちも一緒に探しに行く、ってのはどうかな?」


 ウミの失踪がしらされて、ヒナタは居ても立っても居られない状態となっていた。


「私はいいですよ! アズキちゃんとユイちゃんはどうですか?」

「ボクはパスー! 外怖いし」

「私も、申し訳ないですけど……」


 二人はあまり行く気はないようだった。


「それじゃあ私たち二人でいきましょうか!」


 サクラとともに、ヒナタは屋敷の外へ出る。遠くに、今にも沈んでしまいそうな夕焼けが浮かんでいた。


「うーん、まずはどこに行く?」

「そうですね、やはり今遠くまでで歩くのは危険です。森の中や水の近くは特に危険です! だから平原を中心に行きましょう! とりあえず、あの木までいきますよ!」


 サクラは、いつもの大きな木を指差す。

 そしてサクラの言う通り、すでに日は沈みかけ、足元もあまり良く見えない。いま森や水野近くに行くのは危険だろう。

 その言葉に賛成したヒナタは、ジョギング程度の速さで木までたどり着く。最初に比べれば随分体力もついたようだ。


「ウミさーーーん! 居たら居ると! 居ないなら居ないと返事してくださーーーい!」

「サクラちゃん、居なかったら返事は帰ってこないよ……」


 木のある場所はある程度見晴らしがいい。声もよく通るだろう。

 サクラは、息を大きく吸い込み叫ぶ。しかし、その声に対する返答はなかった。


「うーん、ウミさんどこに行ったのでしょうか?」


 サクラは首を傾げる。しかし、タイムリミットが来ていた。すでにほとんど日は沈み、平原とはいえ地面がほとんど見えなくなっていた。


「うわ、このスマホ、ライトの機能すらついてませんよ」


 サクラの言う通り、ここでスマホの低機能が仇となった。しかし、屋敷まではそう遠くない。屋敷の窓からこぼれる光を頼りに進めば安全に屋敷に戻ることができるだろう。


「サクラちゃん、もう戻るよ」

「はーい!」


 ヒナタの呼びかけに、サクラが答える。

 そこから十分もしないうちに、屋敷のすぐそこまで来ていた。

 あとは屋敷に戻るだけ。それだけだったのに。


「……!」


 目の前に、スライムのようなものが現れた。

 黒く光沢があり、屋敷からの光を反射させている。

 それは、ヒナタには見覚えがあった。

 いや、ヒナタだけではない。ここに居る少女全員に見覚えがあるはずだ。


「裁判所の……」


 そう、それは裁判所で見た、あの黒いものに酷似していた。いや、もはや同じと言っても過言ではないだろう


「ヒナタさん、突っ切りますよ!」


 サクラが声を上げる。今ここで引き返せば、この暗闇の中で屋敷に戻れるか怪しい。だからこそ、屋敷まで全速力で走ることを選択した。

 幸い、屋敷からの光が届いており、地面の様子は見やすくなっていた。


「ほら、剣も握って!」


 すっかり忘れていたが、ヒナタは腰に剣を刺していた。一生使うことはないと思っていたその羽根のように軽い剣に祈るように手を添える。

 そして、そのままスライムの横を通り過ぎる。しかし、スライムは特に何かをしてくると行ったことはなく、そのままヒナタたちを見送った。


「はぁ……はぁ……」


 そのままなんとか逃げ切り、屋敷の玄関の扉を閉める。

 心臓の鼓動がとまらない。その心臓はどくどくと、かつてないほどに悲鳴を上げている。


「……何があったの!?」


 その様子が目に入ったルゥが駆け寄ってくる。


「いやー、スライム? みたいなのに出会っちゃいまして。一生懸命逃げてきたところです!」


 息が切れて返事ができないヒナタの代わりにサクラが答える。


「スライム……って、まさか!」


 ルゥは想像を膨らませた。スライムというのは、ここに来て間もない頃に出会ったアレで間違いないだろう。

 ルゥの想像はそこでは終わらなかった。

 もしかして、と、そう思い至ってしまっては、その記憶を消すことはできない。


「もしかして、ウミちゃんは……」


 ヒナタもその結論にたどり着く。

 サクラも、同じ結論を考えていた。


「ありえますね! 少なくとも可能性だけは否定できないです!」


 三人とも、嫌な想像をしてしまった。

 もしも、ウミが外に居たなら……

 もしも、ウミがスライムと出会っていたら……

 もしも、スライムがウミを……


「……とりあえず、今日はもう夜遅いですし寝ましょう!」


 サクラの一言で我に返る。


「……そう、だね」


 ルゥとヒナタもサクラの言う通り部屋に戻った。

 しばらくは、布団の中でゆっくりしていたかった。



 †



「もう朝か……」


 扉の錠がガチャリと開く。昨日は全然眠れなかった。


「ヒナタさん! おはようございます! 珍しく早起きですね!」


 すぐにサクラもとんでくる。


「眠れなかっただけだよ……アズキちゃんたちは?」

「流石にまだ寝てます!」


 アズキだけでなく、ほとんどの少女たちが寝ていた。

 ただ一人だけ、起きている少女が居た。


「眠れなかった……」


 ルゥだ。おそらくルゥも眠れていなかったのか、目の下に薄くくまができている。


「まぁまぁ、元気だしてください!」


 サクラはいつもの明るさで元気づけようとする。


「そんなできるわけないじゃん! ウミは私たちのリーダーで、ずっと頼りに……ごめんなさい」

「……いえ、こちらも配慮が足りませんでした。ごめんなさい」


 しかし、サクラの発言は、ルゥには無責任な発言と捉えられてしまった。珍しくルゥが声を荒げそうになるが、すんでのところで立ち止まる。

 そしてお互いに謝った。


(本当に、ウミちゃんはどこに行ったんだろう……)


 ヒナタのなかの不安の種が、一秒ごとに大きくなっていった。

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