Ep.21
「とりあえず、朝ごはんでも食べましょう!」
ヒナタとサクラ、ルゥの三人はそのまま食堂へと向かう。
全体的に元気はないが、昨日の恐ろしい想像に至ってしまった三人にとっては仕方がないことであった。
「……なんか、いつもより不味い……気がする」
「……昨日のことがあったんだもん。仕方がないよ……」
ルゥの言う通り、いつもの最高の料理よりも、少し味が悪い気がした。
「……いや、気の所為ではないかもしれません」
いつもより少ない量を取り、さっさと食べ終わっていたサクラが呟く。
「どういうこと?」
「……なんか変な匂いが……する気がします」
サクラはクンクンと匂いを嗅ぐ。
それにつられて、ヒナタとルゥも匂いを嗅ぐことに集中してみる。
「……わからないなぁ」
「……わかる気がする」
ヒナタはわからなかったが、ルゥが賛同する。
「そうと決まれば、匂いのもとへと向かいましょう!」
サクラがそういう。ヒナタとルゥも、急いで食べ切る。
「んー、この感じ、二階が発生源のようですね!」
サクラを先頭に、二階へと進む。二階に行くに連れ、その匂いが強烈になってく。
「くさい……」
その匂いはもはや腐敗臭であった。強烈で、生ゴミを何日も放置した後、ミキサーに掛けてあたり一面に撒き散らしたかのような匂いである。
「どうやら、ここのようですね」
鼻をつまみながらサクラが言う。サクラの足は、物置部屋の前で止まっていた。
「それじゃあ、開けますね」
そしてサクラが扉を開ける。
中に充満していた腐敗臭が一気に解放される。
その匂いにたじろぎながら、三人はそのまま奥へと進む。
そこには、衝撃的な光景が広がっていた。
「う、おぉえぇ……」
ルゥは思わず吐き気を催す。
しかし、それを誰が責める事ができるだろうか。
ヒナタもサクラも、その光景におもわず口を抑えていた。
そこには、ウミの死体があった。強烈な腐敗臭を醸し出し、全身を切り刻まれている。
黄金色の美しい髪はくすみ、生前の輝きを失っている。
その瞳は焦点があっておらず、まるでここではないどこか遠い場所を見ているようである。
その状態は、三人が見ることすらも億劫にさせるようであった。
「この匂いどうしたの!?」
物置部屋の外で、ノノミの声が響く。おそらくはこの強烈な腐敗臭につられてきたのだろう。
ノノミだけではない。アズキやユイ、キヨ、マコト、ケイ、ヒビキと、全員がこの物置部屋に集合していた。
全員、そのあまりの腐敗臭と強烈な光景に口を抑えていた。
そして、そんな少女たちのスマホにメールが届く。
『さて、皆さん揃いましたね。悲しいことに、また一人死んでしまいました。悲しいですね、恨めしいですね。ですので、犯人を処刑する裁判を開きます。今が八時なので、十二時にしましょうか。ちょうどいい時間ですしね。時間になれば、皆さん二階から裁判所へと向かってください。その間に犯人を特定する証拠でも見つけておいてください。もしも来なければ……まぁ無理矢理にでもつれてきちゃいますけどね』
クモからのものだ。
「だれが……こんな……」
ノノミが崩れ落ちる。
ノノミだけではない。そこに居た全員が、今までずっと頼ってきた、自分たちを引っ張ってきてくれたリーダーのような存在の死を受け入れられずに居た。
「あああああぁぁぁぁぁぁ!」
マコトが発狂して部屋から飛び出していく。
ここに来たばかりの頃、寂しがりのマコトは話しかけてきてくれたウミに、彼女は深く感謝していた。
そしてマコトに続き、ノノミやルゥ、ユイやキヨも部屋の外へ出ていく。
部屋に残ったのは、ヒナタとサクラ、そしてアズキであった。
アズキは今にも吐いてしまいそうなほど顔が青ざめている。
「……とりあえず、私たちも行きましょう!」
「嘘だ……」
サクラの言葉にヒナタは反応する。
「嘘だ嘘だ……そうだ、そうだよ! きっとあいつが、あのスライムがやったんだよ!」
「ヒナタさん……?」
ヒナタは、とある結論に達していた。
「サクラちゃんも見たでしょ? あのスライムだよ! あのスライムがウミちゃんをやったんだ! そうだ、間違いない!」
「たしかに……そうかもしれませんね」
サクラも、昨日の夜に一緒に見ていた。黒いスライムが屋敷周辺にいた事を。
「……だったら尚更、そのスライムが犯人だという証拠を集めましょう。処刑するためには証拠が必要です」
サクラはあくまで冷静に分析する。
「そう……だね。大声だしちゃってごめんね」
ヒナタも少しは落ち着いた。
先程の大声で怒鳴ってしまったことに対して謝る。
「いえいえ、アレを見たら誰だってそうなりますよ!」
サクラは気にしていないようであった。
「それじゃ、調査を始めましょう!」
そのサクラの一言で、ヒナタも動き出すのだった。




