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事故に遭いました~俺って全身不随?でも異世界では元気ハツラツ?  作者: サクラ近衛将監
第二章 再起と発展

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2-31 ケントの世界 その十九

 俺が、入手した関連情報を映像で開示した後で、今後の方針を尋ねたのだが、姫さんと宰相が互いに顔を見やって頷(うなづ)いた。

 そうして、姫さんが言った。


「あなたが言った、真偽(しんぎ)判定に使えるような魔法について、一般には余り知られていないのですが、王家には真贋(しんがん)審理官という特殊な能力を有する魔法師がいます。

 その方は、ある意味で神から選ばれてその能力を与えられた聖職者ではあるのですけれど、常時、王宮内の教会に在って王宮からは出ることのない人物です。

 悪事や謀略を企む者にとっては、真贋審理官は天敵ともなりうる存在ですので、在野に置いておくと命を狙われかねません。

 そのために、王家が保護している状況にあります。

 重要な事案の裁判等で活躍される場合も有りますが、その場合でも王宮から出ることはありません。

 裁判官や商人被疑者などが王宮に用意されている審問室で真偽の判断を受けることになります。

 但し、真贋審理官の証言は非公開になっており、真贋審理官が裁判に関与したという記録は一切残りませんし、そのような場合には、顔もベールで隠されていますね。

 但し、何にでも真贋審理官を引っ張り出すとなれば、仕事量が大変なことになりますので、単なる疑い程度では、真贋審理官を出馬させません。

 ある程度の確証が有る場合にのみ、そうして死刑が伴うような重大な犯罪である場合に限り、真贋審理官が出馬されます。

 状況的には、以前から公爵一派の仕業であろうと推測はついていても、そのことだけで真贋審理官に出馬を願うことはできなかったのです。

 でも今見た映像が、ただの幻術で無く、実際の映像の記録であるとしたなら、真贋審理官に出馬をお願いする十分な状況証拠になり得ます。

 ただ、確認のためにお聞きしますが、今見たものは実際にあった事柄なのですよね。」


「はい、間違いなく実際にあった風景そのままです。」


「ただ、その風景が何度か切り替わっていましたけれど、ケントがその風景に幻術で変更を加えたということはありませんか?」


「変更は加えておりませんが、必要な風景を時間的に切り取るような編集をしております。

 そのために時系列で言えば、この像は、全部で三つの映像です。

 その時間経過が分かるものが、映像の右下にある文字の変化です。」


 俺は、再度映像をスクリーンに映し出した。


「文字の一番右端が、短い間隔で変化するのが分かると思いますが、あれは時間の経過なのです。

 概ね、王女殿下の心の臓(しんのぞう)の鼓動よりも少し遅いぐらいの周期で変化します。

 右から二番目の文字も、一番右端の文字が十回変化すると同じく一つ変化するようになっています。

 この数値は魔法でも操作ができません。

 この映像に付属しているものですから、どうしても変えようとするならば、像を切りはぎするだけのことになるでしょう。

 従って、映像の連続性がこの文字をみていることにより客観的にわかる筈でございます。」


「ふむ、・・・。

 では、今見せた映像の最初のもの、二番目のもの、そうして最後の軍勢の様子はこの文字の変化を調べると、何時起きたことなのかがわかるということか?」


「はい、その通りにございます。

 私が王都に着いてからですと既に五日目になりますが、最初のベイエル公爵とフリーデルす子爵の会話の場面は、四日前の夜の場面ですね。

 そうして、二度目の公爵と子爵の場面は三日前の夜のことになります。

 更に公爵領に居る軍勢の場面は、本日の午後になります。」


 宰相がぽつりと言った・


「いったいどんなことをすれば、今のような場面が再現できるのやら・・・。

 まるで芝居を見ているようじゃ。」


「生憎とこれは私の秘術のようなもの、宰相に請われてもその秘密をお教えはできません。」


「あいわかった。

 明日は、国王陛下に図って、主だった貴族を王宮に集める御布令(いふれ)を出そう。

 火急の事ゆえ、王都に居る者だけで良かろう。

 その場で、公爵一派の悪事を暴き出す。

 そうして、その場に真贋審理官の出席をお願いする。

 但し、午前中に召集の御布令を出しても、会議の開催は夕刻近くとなるが、ケント殿はそれでも構わぬか?」


「はい、では、明日の朝に、第一王子殿下の容態を確認し、そのまま王宮に残ります。

 参集の御布令が出れば、公爵一派が怪しみ、場合によっては、私を狙うこともあり得ます。

 宰相邸に私が居て、周囲の方々に難儀が降りかかるよりは、王宮の方がご迷惑をかけずに済みます。

 彼らも王宮の中では流石に動きにくいと存じます。」


 その後、若干の手順等の細部を詰めて。秘密の打ち合わせは終了した、

 姫さんは、王宮へと戻って行った。


 ◇◇◇◇


 翌日、俺のいつもの日課が始まった。

 うまく行けば、或いは今日で全てが終わって、俺は王都を離れ、カルヴィアへ戻ることができるかもしれないな。


 俺には王都暮らしは似合わない。

 カルヴィアでのんびり暮らす方が性に合っていると思うぜ。


 午後10時頃に王宮へ参内するのもいつもと変わらない。

 宰相は、第一王子の部屋までついてくるが、俺が中に入ると俺とは別行動で、慌ただしく動き始めた様だ。


 在都の貴族を招集するための御布令を出すために、官吏を叱咤(しった)して急がせているんだ。

 ために、俺の傍には、身分保証の為か警護の為か、老魔法師のローワン殿がついている。


 これは昨日の打ち合わせで決まっていたことだ。

 ローワンについても、サンドラ嬢と同様に、姫さんが信用しているらしいから、そのことは尊重してやらねばならん。


 但し、サンドラ嬢は同席していたから俺達の密会の内容は把握しているわけだが、ローワンには、このまま知らせないでおくらしい。

 別に、彼を信用していないというわけでは無く、詳細を知っている関係者を極力増やさないための配慮である。


 第一王子の身体については、ほぼ百%健康体に戻ったと言えるだろう。

 毒物の影響も、呪術の影響も消えている。


 ご本人曰く、すこぶる快調だそうだ。

 従って、第一王子とお傍付の者達に、本復(ほんぷく)した旨を告げて、俺は第一王子の寝室を退去したよ。


 俺が待機する部屋までは、ローワン魔術師が案内してくれて、そのまま俺とともに待機する予定になっている。

 俺の方は、王宮の女官等の手を煩わせないために、手弁当も用意して来ているんだ。


 ワーレン魔法師が傍についていると煩わしいのだが、彼もその辺は弁えていたのか、同じ部屋の中ではあるが、入り口に近い別室の小部屋に籠っている。

 弁当を食べ終わった頃、姫さんが王族の弟妹を引き連れて俺のところへやって来たよ。


 当然のことながら、第一王子の本復は姫さんのところへも知らされていたのだった。

 そのために第一王子の恩人である俺にお礼を言いに来たわけである。


 無論、俺と姫さんは初めて遭うという想定の下の芝居だよ。

 得体のしれない謎の聖職者のところに長時間留まるわけもなく、すぐに姫さんたちは退出して行った。


 次に会うのは、会議場になるだろうな。

 午後一時半過ぎ頃に、俺はトイレに行く振りをして、念のため公爵邸の様子を確認しに行ったよ。


 新たな映像記録を確認すると、王宮からの通知が公爵の手元にも届いたようだな。

 書斎でそれを手にして暫く考え込んでいた公爵は、何やら手紙を書いていたようだ。


 生憎と監視カメラの映像ではその内容まではわからない。

 だが、机の上の呼び鈴を鳴らすと従者がやって来た。


 そうして公爵がその従者に注げたのである


「この手紙を、お抱え騎士であるバウムに渡し、ベルグラドルへ急ぎ参り、騎士団長のハレスへこの密書を手渡すように言え。

 これは急ぎの重要な仕事じゃ。」


 うん、王宮への招集通知が来て、何事かを察知したのかな?

 ベルグラドルは、公爵領の領都である。


 騎士団長のハレスとやらは俺も知らないし、領都に在る騎士団の駐屯地には監視カメラも置いていないが、峡谷に居る二千名の寄せ集め軍団については確認できる。

 王都からベルグラドルまでは、早馬なら一時間半ほどで到達できるだろう。


 王宮から公爵が御布令で召集の通知を受けたのが午前11時頃、公爵が密書を書いて指示を終えたのが正午ごろとすれば、午後1時半か2時頃にはベルグラドルの領軍駐屯基地に密書が届くだろうな。

 戦闘準備ができているかどうかはわからないが、領軍が出撃できるのは早くて3時か3時半頃になるだろうな。


 人気のない峡谷に潜んでいた混成軍団が出撃するとなれば、さらに遅くなって遅ければ四時頃の出撃か?

 今日の王宮での貴族を集めての会議は、午後4時半頃の予定である。


 この会議、国王陛下も出席するので、本当に異例の会議らしいぜ。

 仮に、急いて軍勢が駆けつけても、王都郊外に到着するのは早くて午後5時、遅ければ6時以降になるだろうな。


 一方で、少数の部隊がもっと早くに到着する可能性もゼロじゃない。

 そんなことで、俺は王都への進軍コースと思われる二つの道に、監視カメラを据え付けたよ。


 こいつは持続時間は精々半日と短いけれど、中継装置を介すれば、俺のいる王宮までライブ映像を送ってくれる優れものだよ。

 健司が先を見通して念のためにインベントリに入れておいてくれたものだ。


 峡谷の混成軍団を確認した後で、特別製の監視カメラを仕掛けて30分弱で王宮のトイレに戻ると、ドアをこんこんと叩いている奴がいる。

 ドアの外からローワン魔法師が声をかけて来た。


「大丈夫ですかな?

 トイレに籠られてから四半時ほどにもなりますが・・・。」


 そう呼びかけられて返事をする。


「あ、はい、大丈夫です。

 王都の水が合わなかったのかもしれませぬが、多少おなかの調子が悪いのです。

 もう間もなく出ますのでお気遣いなさらぬようお願いいたします。」


 うん、幸運に恵まれたかな?

 もう少し遅くなっていれば、不在がバレて騒ぎになっていたかもしれない。


 今は、午後二時前だ。

 会議までは二時間半ほどあるな。


 それまでの時間に何も準備をしていなかった軍勢が到着できるとは思えないし、会議中に王都に攻め込むとは考えられないな。

 恐らくは、四人の身柄を確保するまでは大丈夫じゃないかな。


 或いは、身柄を拘束するために近衛騎士が動いた際に、何らかの魔法で信号等を上げるつもりかもしれないな。

 俺がその場にいるはずなので会議場に真贋審理官が居るのを確認してから結界を張ろう。


 そうすれば部屋からは誰も逃げ出せないし、魔法も封じ込められるはずだ。

 今のところ王都の近郊に仕掛けたライブカメラに公爵騎士団の動きはない。



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