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事故に遭いました~俺って全身不随?でも異世界では元気ハツラツ?  作者: サクラ近衛将監
第二章 再起と発展

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2-29 ケントの世界 その十七

 俺がトゥールベルヌの街に着いたのは、夜明けには程遠い三時半ごろではないかと思う。

 その前の宿場町には居ないことを確認してこの街に来たわけだが、果たして予想通り、姫さんたち一行がこの町一番の宿に入っていたよ。


 周囲の気配察知で、姫さんの寝所を探って、転移で秘密裏に移動、姫さんの部屋に結界を張ってから姫さんを起こした。

 まぁ、暗い中で起こされたもんだから、それこそ跳ね起きて、寝台の上で懐剣を握り締めているよ。


 隣の部屋には不寝番の騎士が居るはずだが、当然、何も察知していないのだから出て来るはずもない。

 暗い中では、きっと俺を見分けられないのだろうね。


「誰じゃ!

 こんな夜更けに狼藉(ろうぜき)か?」


 姫さんがそう叫ぶ。

 余り怖がらせてもいけないから、止む無く、小さな灯りをともして、俺と姫さんの間に浮かばせる。


 俺の場合は、夜目が効くから灯りは要らないんだが、姫さんの場合はそうも行かず、これで俺の姿が見えるようになったはずだ。


「お休み中、驚かせて誠に申し訳ございません。

 カルヴィアの街でお会いしたケントにございます。

 王女殿下に急ぎお伝えすべきことが有りましたので、王都から参りました。」


 流石に俺の顔は覚えてくれていたようで、ほっとした表情を浮かべて、姫さんは懐剣を鞘に納めてくれたよ。

 それを確認した上で、俺は話し始めた。


「取り敢えず、第一王子の病については、私の治癒魔法で危篤状態から持ち直してございます。」


 姫さんは、ほっとした表情を見せていたな。

 余程心配していたんだろう。


 俺はさらに続ける。 


「但し、体力が著しく落ちていますので、もう三日ほど安静にしなければ、完治とは言えないと存じます。

 そうして第一王子の病の原因の一つは、とある国から秘密裏に入手された毒薬にございました。

 どのようにして第一王子の口に入れたのかは定かではありませんが、微量でもいずれ間違いなく死に至る猛毒であって、そもそもは蛇の毒のようでございます。

 そうして、今一つの原因は、第一王子にかけられた呪詛にございました。

 これも私が解呪しましたので、今現在は、第一王子に呪いはかけられておりません。

 但し、私の解呪の魔法の反動により、呪詛をかけた術師が死亡しました。

 術者は、王宮魔法師団の一員でございました。」


 これには姫さんがすぐに反応した。


「王宮の魔法師団?

 なれば、フリーデル子爵が関与を?」


 俺は、黙って頷きながらも言った。


「これら二つの暗殺手段を用意したのは、ベイエル公爵一派と概ね判明しておりますが、いずれも状況証拠だけで明確な物的証拠の入手は難しいでしょう。

 その代わりとなるもので、どれほど相手を追い詰められるかはわかりませんが、王女殿下が王都に戻られてから、宰相とご一緒に相談いたしたいと存じます。

 私は、現在、宰相閣下のお屋敷に逗留(とうりゅう)しており、一日に一度、第一王子の健康状態を診るために、王宮へ参内しておりますが、その際には宰相に同行させていただいています。

 因みに、王女殿下の急な旅立ちの目的を察して、公爵一派の手配により、この先の宿場町で王女殿下が連れて来る者を亡き者にすべく、かなりの手勢が待ち受けておりましたが、それも先ほど私が始末してまいりました。

 但し、第二軍を準備しているかもしれませぬ故、この先の道中にても油断を召されぬようお願い申し上げます。

 生憎と、私は宰相邸にいる身でございますので、昼間の外出は制約を受けております。

 従って、私は、以後宰相邸で王女殿下のご連絡をお待ちしております。

 王女殿下のご依頼は、一応、済んだものと思っておりますので、宜しければ、第一王子の本復を待って、私はカルヴィアに戻りたいと存じております。

 あっと、・・・。

 因みに、私は、宰相以外に王都では名を名乗っておりませんし、白装束に仮面をつけて王宮に入りしておりますので、出所と名前が不詳の白装束の聖職者として王宮では知られておりますので、念のためお知らせしておきます。」


「妾は、そなたに返しきれないほどの恩を受けてしまったのぉ。

 何か望むものはあるかえ?

 私ができることであれば、何でもするぞ。」


「もったいなきお言葉、治癒師は人を助けてこそ、その存在価値がございます。

 その言葉だけでも十分なのでございますが、私の診療所での診察代は、おひとり大銀貨一枚が相場でございますので、その額と、王都まで往診した費用として、通常の旅でかかる交通費と宿泊費の往復分を頂ければ幸いかと存じます。」


「何とも欲の無いことを・・・。

 報酬については、国王陛下とも相談して決めることにいたそう。

 して、これからどういたすのじゃ?

 まさか、この夜半に王都に戻るのかぇ?」


「はい、そのまさかにございます。

 私が王都を離れていることは、誰も存じません。

 明け方までに宰相邸に戻らぬと、宰相邸で騒ぎが起こります故、私はこれからすぐに戻りたいと存じます。」


「何とも驚いた人じゃ。

 あい分かった。

 王都で、宰相邸で、会おうぞ。」


 それを機に、俺は結界を解いて、姫さんの前から瞬時に消えた。

 転移先は、王都の宰相邸、俺に割り当てられた寝室である。


 取り敢えずの今晩の仕事は終わったな。

 後は、公爵一派の悪事をどう暴くかだが・・・・。


 まぁ、余程の事が無い限り、姫さんが王都に来るまでは待つことにしよう。

 ここのところ、夜間の俺の活動が非常に多いなぁ。


 鍛えた体はもっているが、余り続くと障害も起きるよな。

 そう思いながら、俺は、束の間の眠りについた


 ◇◇◇◇


 翌日、当然に寝ているところを俺付きのメイドであるカタリーナさんに叩き起こされてしまったよ。

 彼女の名前は昨日の午後まで実は知らなかったんだが、ひょんなことで彼女の同僚が彼女の名前を呼んだのでカタリーナであると知ったのだ。


 まぁ、俺の場合、メイドさんに話しかける用事も無いんだよね。

 会話も仮面をつけている以上、俺の方が避けているし、ほとんどの場合「ありがとう」の一言で済んでいるんだ。


 そもそも彼女の前で素顔を晒(さら)したことが無いし、彼女は俺の名を知らないんだ。

 だから彼女が俺を呼ぶときは、「聖職者様」だよ。


 今朝は、彼女が何度か声をかけたらしいのだが俺が起きないので、止む無く身体を揺り動かしたらしい。

 それだけ俺が寝不足で疲れていたのかもな。


 若いけれど、あまり無理をしちゃいけないということだろうな。

 もしも、彼女が、俺を狙ったハンスのように大公一派の手先だったら、今朝は簡単に俺を殺すことができただろうね。


 今日も食事をして、ずっと部屋に閉じこもっているのもネクラと見られるかもしれないので、庭先に出て、ちょっと柔軟体操をやってみた。

 若いからね、身体が柔軟性に富んでいるので健司が知っている柔軟体操を苦も無く出来てしまう。


 健司が交通事故に遭うまでは、結構体が硬くて柔軟体操では苦労をしていた記憶があるよ。

 今は、どちらかと言うと、体の造りもかなりスポーツマンに近くなっているみたいだ。


 彼自身が、退院してからスポーツで身体造りをしていたし、俺の能力をそのまま向こうでも使えるから、相応に強い筈だ。

 それに、魔法を使えば、相手が誰であっても、絶対に負けないだろうね。


 その点は俺が保証するよ。

 俺も身体能力だけで、この世界の猛者を倒す自信があるから、結構な強者だとは思っている。


 ただ、過信は身を亡ぼす原因になるから、自分なりに注意はするよ。

 昼食を食べて、一服の時間を取ってから、宰相と一緒に王宮へ向かう。


 王宮への公式参内も二回目となると、関門でのチェックも甘くなるようだな。

 顔を隠した不審者なんだから、宰相に間違いなく同じ人物かどうか尋ねるぐらいのことをしても良いと思うんだが・・・。


 それだけ宰相が引き連れているなら大丈夫と信用されてるのかな?

 まぁ、こちらは無駄な時間を取られないから良いけどね。


 すんなりと第一王子の寝室に辿り着いたよ。

 第一王子の健康状態は、百点満点中の80点程度かな。


 体力がまだ回復していない。

 内臓機能はかなり回復していて、ほぼ正常な状態の9割がたまで復活していると思う。


 心拍も気持ち強くなったし、肺で取り入れている酸素も十分に体内に行き渡っているようだ。

 こんな時に健司の世界にある体温計や血中酸素濃度計が有ると、わざわざ俺が魔法で確認しなくても側付きのメイドさんや侍従達で確認できるのにね。


 今度、そういった医療補助の機器を健司に手に入れて貰うとしよう。

 必要に応じて、こちらで俺が造る魔導具に活用したいんだ。


 今日の往診は無事に終了、『遅くても明後日ぐらいには、ほぼ本復されるだろう。』とお傍の人達に告げた。

 今日は宰相と年寄りの侍従が連れだって、国王陛下にご報告に行ったね。


 俺はまたも第一王子の寝室で待機だな。

 四半時ほどしてから宰相が戻って来たので、僕たちは連れ立って王宮を去る。


 但し、宰相は俺を邸まで送り届けてから、また王宮へ戻るようだ。

 どうやら宰相としての本来の仕事が溜まっているらしい。


 従って、帰宅は遅くなるそうだ。

 まぁ俺は、宰相邸に居るしかない。


 姫さんは、おそらく明日の夕刻には王都へ到着できるんじゃないかな?

 昨日の段階では公爵一派に不穏な動きは無かった。


 夕食前に一眠りする風情で、俺は隠形で公爵一派の邸へ出向き、監視システムからデータを取り出したよ。

 宰相邸に戻り、当該データの確認な。


 今のところ、公爵が夜中に一人毒づいている以外におかしな動きはないようだ。

 従って、今夜の御忍びでのお出かけはしないでおこう。


 その代わりに、健司が入れておいてくれた、最新のレーザープロジェクターを試してみたよ。

 電池内蔵のポータブルのもあったらしいが、画像が良いのは電源が必要なタイプらしい。


 で、2キロワットのポータブル電源も試して、画像を確認してみる。

 お試し用の風景画像のデータUSBメモリーに入っていたので、早速壁に映してみる。


 そのまま、壁に映してみたが、壁の凹凸で細部が良く見えない部分もあり、添付されていたスクリーンを使ったら、とても綺麗な画像が映ったよ。

 なんでも4K画像なんだって。


 但し、監視システムの画像は、精々1K画像なんで、ここまでの綺麗な画像は望むべくもない。

 俺が公爵一派を監視していると知れたら困るから、今はデータ内の画像を映したりはしない。


 姫さんが来たなら、人払いをして、宰相と姫さんに見せるつもりだよ。

 その前に見せる画像をタブレットで抽出する作業が有るけどね。


 今晩の宿題だ。

 今夜は早く寝れるだろうなぁ・・・。


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