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事故に遭いました~俺って全身不随?でも異世界では元気ハツラツ?  作者: サクラ近衛将監
第二章 再起と発展

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2-28 ケントの世界 その十六

 王宮内のチェックポイントの関門をいくつも無事に通り抜け、宰相と俺は第一王子の寝室に辿り着いた。

 すぐにも第一王子の健康状態をチェックするが、毒の影響は未だ残っている。


 毒そのものは消えているんだが、溶血性の蛇毒(へびどく)は体内の内臓にダメージを与えているんだ。

 その癒しも当然に行ってはいるんだが、一旦落ちた内蔵機能がすぐに回復するわけでは無く、幾分タイムラグがあるようだ。


 完治までにはもう二日ほどかかるかもしれないな。

 但し、俺が最初に見た時は重篤(じゅうとく)で、意識の無かった第一王子本人は、今日の段階では意識が戻っていたし、未だ身体がだるいものの、ゆっくりとした身動きはできるようにはなっている。


 意識が戻った第一王子には、本来であれば俺の名を告げねばならないのだろうが、敢えて名を秘匿し、遠来の聖職者たることだけを申し上げた。

 未だ血のめぐりが良くないのか、第一王子も特にその不敬を指摘することなく目を瞑った。


 これまでほぼ食事を摂(と)っていなかったことから、エネルギー切れの影響も多分にあるだろう。

 少なくとも今朝は、介護を受けながらも朝食を食べることができたみたいだ。


 俺の魔法では、流石に体力を一発で回復できるまでには至らない。

 どちらかと言うと俺の医療に関する魔法は、指定した細胞の活性化を促して再生を補助するものであって、外からエネルギーを分け与えるものじゃないんだ。


 普通の治癒師に比べて、俺の治癒魔法の出来が良いのは、病気や怪我の原因を探って、その原因を取り除き、必要な細胞だけに活性化の魔法をかけることなんだ。

 これまでの教会専属の治癒師(僧侶)は、やみくもにヒールをかけるから、怪我には結構効くんだが、病気の場合、例えばがん細胞までも一様に活性化するんで、病気は治らないことになる。


 盲腸炎の場合は、虫垂そのものが化膿して、放置すれば破裂して、出血と内臓そのものが汚染されることにより死に至るんだが、外科手術のような患部の除去ができないと完治はできない。

 だから盲腸炎の場合、この世界では治癒師では癒すことのできない死病と言うことになっている。


 余計な話はさておいて、死の一歩手前の状態だった第一王子の体力の回復は、本人の自然治癒能力にある程度任せるしかない。

 側付きの侍従や女官に第一王子の現状を説明し、歩けるようになるまではもう一日ほど、完治するにはさらに二、三日を要することになるだろうということを告げておいた。


 それを聞いた侍従がその場を離れ、すぐにもその旨が国王のところへと伝達されるようだ。

 国王との面談があるかもって?


 冗談じゃねぇよ。

 こちとら覆面姿の怪しい人物なんだぜ。


 国王と会って、その仮面を外せとか命令されたら俺は逃げるしか無いんだぞ。

 そんなことになる前に王宮からは早く出たいもんだな。


 一応の健康診断も終わり、また明日来ることにして今日は辞去しましょうと宰相に言ったんだが、宰相は国王陛下にも御目通りして来ると言って、勝手に行っちゃったよ。

 俺はどうすんの?


 おそらく、俺単独であの関門を通ろうとしたら絶対に捕まるぞ。

 いざとなれば、隠形になって衛兵の間を潜り抜けるか、隔壁や城壁を飛び越えるけどな。


 仕方がないので、宰相が戻ってくるまでの間に、再度健司が準備しておいてくれた監視カメラと盗聴装置を隠形化して壁や天井裏などに設置しておいたよ。

 これで事後にはなるんだが異常が有れば何が起きたかはすぐにわかる。


 タイムラグの内容にせめて音声だけでも通信装置で流せないかを考えはしたんだが、通信装置がハンディトーキーみたいに結構大きいんだよね。

 どこかかに隠すことは可能だが、元々マイクの傍で話すようんい出来ているから少し離れると音声が小さくなるという欠点がある。


 おまけにおれがカルヴィアでギルマスに渡しているから、万が一にでも通信機が発見されると出所が分かる恐れがあるんだ。

 今のところは普及しているわけじゃないから、かなり確率は低いけれどね。


 腕の良い錬金術師が、内部の魔法陣等を比較すれば一発でわかることになる。

 そうそう、通信と言えば、姫さんのところに行って、連絡をしとかなければな。


 今晩にでも行ってみるかと考えているよ。

 凡そ1時間程も待たされて、ようやく宰相が戻って来たよ。


 但し、複数の騎士を同行していたな。

 何だ?


 もしかして俺って捕まるのか?

 一瞬身構えてそんな心配をしている俺をよそに、宰相が言った。


「陛下の思し召しで、第一王子の命を救った其方に近衛騎士の警護をつけることになった。

 滞在先はこれまで通り我が邸とするが、そなたの滞在中にはこの近衛騎士たちが付くことと相成った。

 こちらは小隊長の、ベルケン殿。

 以下、ハンス殿、ヒッカム殿、カズバル殿、それにアレクシス殿じゃ。」


 オーイ、宰相さ~ん、簡単に言ってくれるねぇ。

 俺のプライバシーはどうなんの?


 あ、この世界ではそもそもプライバシーなんて概念も無いし、人に関する情報を極力秘匿するという発想が余り無いんだよね。

 ギルドなんかは別なんだけれど・・・。


 まぁ、重要人物になればなるほど、当が人物の秘密を守るための従者がつくことになるんだが、俺って平民だからね。

 宰相が言ったように、王都滞在中は警護がついても、王都を離れたらその者達は元の部隊に戻るわけだ。


 原隊復帰した場合に、王族でもない警護対象の秘密を話さないという縛りは無いんじゃないのかな。

 むしろ、王宮の近衛騎士なればこそ、王族あたりから問われたならなんでも喋るに違いない。


 自分の身なら、自分で守れるから警護なんて必要ないんだが・・・。

 そうかといって、国王陛下の思し召しを無碍(むげ)に拒否するわけにも行かんよなぁ。


 とにもかくにも王宮を離れることになったんだが、帰路のチェックポイント付近で、ベイエル公爵と出会っちまった。

 ベイエル公爵も宰相も何事も無かったように簡単に会釈してすれ違うのだが、公爵は仮面姿の俺を束の間凝視してたな。


 但し、近衛騎士五名が俺の周囲にいるのを見て、その場で何事かを為そうとはしなかったな。

 ある意味で近衛騎士がいてよかったのかもしれない。


 さもなくば、宰相の連れている人物は誰かと問うたに違いない。

 然しながら近衛騎士がついている人物であれば、既に王宮が認めている人物と言うことになる。


 ここで騒ぎ立てても公爵の利益にはつながらないことから、公爵は動かなかったんだろう。

 その代わりに睨みつけるぐらいのことはして来るんだよな。


 昨夜の公爵と子爵の話では、俺は彼らの敵に認定されているからな。

 まぁ、ベイエル公爵が俺を睨むぐらいは仕方がないか。、


 取り敢えず、屋敷について一服して(俺はタバコを吸わないし、こちらの世界ではたばこに類するものが無いようだ。)から昼食なんだが、例の通り俺は人払いをして食うことになる。

 警護の騎士は、それを聞いて面食らっていたようだが、故有って、仮面の下の地顔を誰にも見せないためと宰相から説明を受けて、余り納得はしていないようだが引き下がっていたな。


 昼食が終わると、宰相と今後の相談なんだが、一応、姫さん達の帰路に王都から二つ目の宿場町で襲撃の可能性があることを匂わせておいたよ。

 第一王子の命は救ったんだから、姫さんがどんな人物を連れてこようと用無しではあるんだが、公爵派の考え方からすると、敵対しそうな人物は早めに芽を摘んでおくという方針だから、今宰相邸に居る不審人物とは別に、襲撃計画がそのまま残っている可能性はあるんだ。


 その辺は、昨日の公爵と子爵の話では出て来なかったし他の伯爵連中にでも特段の動きはない。

 その辺も探るひつようがあるし、公爵派の刺客連中の確認もしておくつもりだよ。


 俺は、日中にすることも無いので、自分に割り当てられた部屋で二時間ほど転寝(うたたね)をしていたよ。

 目覚めて確認すると、俺のインベントリに監視カメラと盗聴装置それに二つのタブレットが届いていたな。


 ついでにボータブル電源と関連の付属品、それにレーザープロジェクタがインベントリに届けられていたぜ。

 健司ありがとな。


 これでいざと言う時は、壁に動画映像を投射できることになる。

 またまた、夕食は一人で食べて、夜10時頃には睡眠だ。


 とは言いながらダミーの人形を寝台に入れて俺は内緒のお出かけだよ。


 公爵派の四貴族の邸へ忍び入って、監視記録データを取り出しておく。

 その際にベイエル伯爵とフリーデル子爵の監視装置2セットを交換しておいたよ。


 途中でバッテリー切れになっても困る。

 持ち帰った奴は、充電器で満タンにして他の二人の貴族のものと交換の予定だ。


 内部のデータについては、後刻、伯爵邸に戻ってから確認な。

 それよりも先に、姫さんを狙う刺客連中の確認と姫さんへの連絡が先だ。


 王都から二番目の宿場町であるグルーデンスに刺客連中がいた。

 何でわかるかって?


 そりゃぁ、この夜更けにわざわざ人気のない城壁に登って南の方を監視している奴がいれば、怪しいよな。

 そいつが城壁を降りてアジトに行くのをチェックしただけだよ。


 アジトは、どうやら公爵派の連中の持ち家らしく、普段は人が住んでいないようだな。

 余り手入れはされておらず、床には結構な埃が溜まっているんだが、自分たちが使う場所だけは申し訳程度に掃除している状況から、明らかに一時的なアジトにしているだけなんだろう。


 刺客は総勢で12人がいるらしい。

 見張り交代時の話を聞く限り、依頼主からの中止の指令は届いていない様子だ。


 さて、どうするかだよな。

 こいつらは、どうも闇ギルドの者らしい。


 放置しておくと姫さんたちが襲撃されるかもしれんのだが、俺がその場にいるとは限らんのだ。

 色々考えたが、結局こいつらを動けないようにすることを決めた。


 何をするかって?

 毒物を用いるんだ。


 所謂、身体に麻痺が来る毒物で、ついでに下剤も追加しておく。

 麻痺は使用量に間違いが無ければ三日三晩続き、下痢もついでに起きるという寸法だ。


 麻痺が来てからトイレに行けるかどうかは知らんし、殺すつもりは無いんだが、万が一こいつらの命が消えたならそれはご愁傷さまと言うことで・・・。

 食事に混ぜる?


 いやいや、そんな悠長なことはしておられんから、こ奴らの胃袋に直接毒物と下剤を放り込んでやったから、効き始めるのに30分もかからんだろうと思う。

 今日はケントのカルヴィア出発から六日目なので、姫さん一行は、遅くとも概ね経路の三分の二辺りまで来ているだろう。


 姫さんたちが急いで来ているならば、恐らくはここまであと一日か二日。

 三日有れば当然にこの街は通り過ぎて、王都に着いている筈だ。


 俺の投薬の成果を見守って約30分。

 薬が効き始めたのを確認して俺は南下したよ。


 俺の見込みでは、姫さん達はトゥーベルクの宿場町か、その前後の宿場町に居るはずだ。



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