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事故に遭いました~俺って全身不随?でも異世界では元気ハツラツ?  作者: サクラ近衛将監
第二章 再起と発展

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2-27 ケントの世界 その十五

 すると、またベイエル公爵が尋ねた。


「ふむ、では再度呪いをかけるのは無理か?」


 この問い対してフリーデル子爵が、(よど)みなく答える。


(くだん)の魔法師は、魔法師団でも最も優れた呪術師でしたから、同じような術者を探すのは無理かと。

 もう一人、南部地区にも平民ながら呪いの依頼を請け負う良き腕を持つ者が居たのですが、これも亡くなって久しく、代わりの者は国外にでも探してみないと無理かと。」


 渋い顔をしながら、公爵がさらに問う。


「では毒の方はどうなのだ?」


 子爵が、この質問に対してはある意味で牽制(けんせい)の発言をしてきた。


「カッスラー伯爵に言えば、再度の入手は可能でしょうが、ある意味で目立ちますぞ。

 そもそも毒とは、人殺しに使う物であって、それも解毒のできない毒と知られているものを複数回購入するなれば、何か国内で異変が起きた際に、入手先を手繰(たぐ)られますとカッスラー伯爵が真っ先に疑われることになりかねません。

 出来れば安全のために、同じ毒の使用は控えていた方が宜しいかと存じます。」


 その後、伯爵と子爵の間で、いくばくかのやり取りを行ったものの、特段の良き善後策も浮かばずに、フリーデル子爵が辞去して引き上げようと腰を上げた時点で、公爵邸に密偵のつなぎから知らせが入ったのである。

 急を要する報せがあったのは、エッケルハルト伯爵邸に潜り込ませていた密偵からの報告であり、エッケルハルト伯爵が王宮から帰宅した際に、仮面をつけた謎の人物を伯爵邸に連れて来て、宿泊の用意をさせているとの連絡であった。


 ベイエル公爵とフリーデル子爵は顔を見合わせた。

 公爵が厳しい顔をしながら、ボツリと言う。


「件の人物が宰相の屋敷に居るのなら、この際だから、後腐れの無いように消してしまうか?」


 ベイエル公爵がそういうと、フリーデル子爵も(うなずき)きながら言った。


「左様でございますね。

 伯爵邸に泊まっている者が誰であれ、第一王子派に(くみ)する者であることは間違いないでしょうから、この際、危険分子の芽は()み取っておくが後々のためにも宜しきかと存じます。」


「したが、刺客はどうする?

 この夜更けに手配は難しかろう。

 まして伯爵邸の内部が分からねば、刺客とて仕事は難しかろう。」


 公爵がそのように疑問を投げかけると、子爵が言う。


「おそらくは、宰相の屋敷に潜り込ませたる者が、対象となる謎の人物の居場所や警備の様子を承知しておりましょうし、狙う相手が単なる聖職者であれば、潜り込ませたる密偵でも十分に始末出来るものと存じます。

 明日になって、第一王子を助けた功労で国王陛下に当該聖職者が御目通りを許されるような事態になれば、それ以後簡単には手が出せなくなるやもしれません。

 第一王子の今後の処置についてはさておき、取り敢えずはその今回の回復への関与が疑わしき人物の命を奪うことが肝要かと。

 つなぎの者に伯爵邸で当該仮面の者を殺害せよとの指令を届けさせます。」


 フリーデル伯爵の言に頷きながらベイエル公爵が続けた。


「ふむ、そなたが言うように、()るならば、早いほど良いだろうな。

 ではそのように頼む。

 儂は、明日の午前中にも第一王子の元に出向き、形ばかりの回復のお祝いを申し上げねばならぬな。

 (まこと)憂鬱(ゆううつ)な事よ。」


 それを機にフリーデル子爵は、ベイエル公爵の邸を辞去した。


 ◇◇◇◇

 

 どうやらこれで刺客を依頼した大元の裏が取れたようだね。

 ただ、この監視カメラと盗聴装置のデータをどうするかなんだが、・・・。


 こいつを動かぬ証拠として提示するには、この世界では結構障害がありそうな気がするね。

 健司の世界でもそうだったけれど、静止画面や動画の編集が高性能のPCやアプリの出現で割合簡単にできてしまうことから、往々にして偽造されたり、無断使用をされてしまうことが社会問題になっていたことも有るからね。


 この画像や音声が、僕の独自の魔法だと言っても、おそらく公爵連中が懸命に否定する中で、第三者にどこまで信用してもらえるかだよな。

 また、公爵一派が追い詰められた際にどう動くかなんだが、場合によっては国を割る話(内戦)になるかもしれないな。


 うーん、だから正直なところでは、政治権力の争いには余り関わりたくは無かったんだが、まぁ、ここまで来て第一王子を見捨てるのもねぇ。

 今でも積極的に関わるのは何となく気が進まないのは変わらないのだけれど、仕方がないから俺のできる範囲で関わることにして、俺の動きはある程度は成り行きに任せるしかないかもね。


 あ、そう言えば、もう一つ、健司の世界の品物を頼んでおけばよかったかな?

 モバイルタイプのプロジェクターがあれば、俺の持つタブレット若しくはメモリーから映像と音声を取り出して他の人に見せることができるよね。


 但し、電源が問題なのか・・・。

 ポータブルとは言っても電源無しでは動かないよな。


 まぁ、大容量のポータブル型バッテリーが市販されているようだから、あれが有れば簡単に電気は取れるかな?

 但し、そんなにたくさんの電気製品はつなげないはずだけれどね。


 エアコンを魔導具で造った際には、電気の代わりに魔導具で冷やしているからね。

 エアコンにこちらで造った電源なんかをつないでいるわけじゃないんだ。


 ふむ、いずれにしろ、2キロワット以上の大容量ポータブル電源と充電のためのソーラーパネル若しくは風力発電装置か水力発電装置が要るよな。

 無論一人で設置できるような小型で高出力のものが良い。


 ソーラーパネルなら診療所の屋根にでも設置しておけば、そこからケーブルを室内に取り込み、自室で充電ができることにもなる。

 風力発電の方も、診療所の二階ベランダあたりに設置できるような小型でなくちゃな。


 洋上風力発電のようなでかい奴は目立ちすぎて駄目だし、水力発電も近くに適当な渓流が無いからなぁ。

 どうしても水力発電を行うとすれば、近く(200mぐらい離れている)を流れている川のかなり上流からパイプを利用して水路を造らねば無理だろうな。


 健司さ~ん、余裕が有ったらでいいから、急がないので、何とかよろしく手配を頼むよね。

 あ、騒音を発生する原動機付き発電機は、こっちでは当然駄目だよ。


 こっちの世界は、騒音がほとんどないから、とっても静かなんで、仮に原動機付き発電機を設置してその騒音ががなり立てたら、周囲にいる人がみんな怒鳴り込んで来そうだよ。

 いずれにせよ発電機等については、健司の方の動き次第だな。


 それとは別に、タブレットの映像をプロジェクターのように魔法で壁等に映し出せないかどうか試行錯誤してみたが、結構難しいんだよな。

 光魔法ではあるんだけれど、静止画ならともかく動画を映し出そうとすると、どうしても動きが滑らかにならずにぎくしゃくするんだよね。


 なんだか、ノイズだらけの壊れたビデオでも見ている感じなんだよな。

 プロジェクターの代わりにならないかと思って魔法を試しては見たんだが、もしかすると俺の能力を超えてるみたい?


 或いは相応の訓練をすれば、うまくできるようになるかもしれないけどね。

 まぁ、今日のところは諦めておこう。


 仮に、データの映像を他の人に見せるとしたら、取り敢えず、静止画像だけなら問題はないようだ。

 音声は、そのままタブレットから流し、場合によっては魔法で音声を大きくすることもできるはずだ。


 あぁ、そういう意味では健司の世界のポータブル・スピーカーがあれば、良いプレゼンができるかもね。

 少なくとも証拠の意味合いで大きいのは、公爵と子爵が第一王子の暗殺を刺客に頼んだことをほぼ自白していることだ。


 こいつが証拠として認められるなら、彼ら関係者は牢獄に収監され、死罪になるだろう。

 この世界で盗聴が不正かどうか?


 うーん、そいつはわからないな。

 それでも盗聴やカメラの魔導具があって、そいつを容疑者の家に仕掛けましたってのは関係者には言えないよね。


 過去に起こった事を魔法で見せていると言えば、それらしく誤魔化せるかな?

 但し、じゃぁ実証しろと言われて、向こうの都合で任意の課題を出されたりすると対応が難しそうだから、余り迂闊(うかつ)なことは言えないな。


 この動画と音声については、もしもの時の最後の手段としてとっておき、使う際には宰相あたりとよく相談してからにしよう。

 少なくとも調査のために相応の時間がかかることにしておけば、面倒ごとから避けられるかもしれない。


 取り敢えず、この件については、現時点では宰相に情報を与えることも保留しておこう。

 宰相が先走って言葉にすると、後に引けなくなりそうだからね。


 今のところベイエル公爵派の疑いは、灰色(グレイ)のままにしておこう。

 いずれ正義の裁きを下す時が来ると思う。


 しかし、魔法がこれだけ発達しているのに、嘘発見器の魔法や魔導具は無いものかねぇ?

 健司の世界のラノベでは、地球からみた異世界には「真実の審問官」とかいう公務員が居たような気がするけれど、そんな都合の良いスキルは無いのかな?


 俺も一応鑑定能力を持っているんだけど、こいつで調べれば当該人物が嘘をついているとかが分かるとかできないいもんかねぇ。

 或いは、そういうのが分かるのは、鑑定能力よりも上位のスキルなのかな?


 その日の昼食をまた一人で食べてから、今回は姿を見せながら宰相と一緒に馬車に乗り込んで王宮へ向かったよ。

 主として第一王子のその後の健康状態を確認するためなんだが、昨日の今日で、まさか第一王子が別の勢力から命を狙われたなんてことは無いよな。


 容態が悪化するようなら宰相のところへ連絡するように言ってあるが、今のところはそんな状況は無いと思いたい。


 ◇◇◇◇


 王宮ではかなりの数のチェックポイントを通過して行くんだが、王宮からの帰りの際と違って、かなり執拗(しつよう)に質問攻めに()ったな。

 そのたびに宰相が巧みな話術で、俺を第一王子の恩人と祭り上げ、衛兵ごときに(あなど)られないようにしている。


 ある意味で第一王子の御為(おんため)と言う言葉は免罪符なのかもしれない。

 但し、俺が第一王子の呪いと中毒を(いや)す前の段階では、俺がそうした能力を持っているかどうかすらわからないわけなので、衛兵も簡単には通してくれなかったろうな。


 そのために、平民を王宮に引き連れる場合には、事前の申し込み手続きと厳格な審査があるようなんだ。

 その過程で公爵派の連中に邪魔をされると、間に合うものも間に合わなくなっていただろうな。



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