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事故に遭いました~俺って全身不随?でも異世界では元気ハツラツ?  作者: サクラ近衛将監
第二章 再起と発展

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2ー26 ケントの世界 その十四

 さてさて、ベイエル公爵、バウマン侯爵、カッスラー伯爵、フリーデル子爵の四ケ所の屋敷に盗聴器と監視カメラを設置したんだが、その所為かがわかるのは明日以降の話だな。

 取り敢えずの仕込みは終わったので、俺はエッケルハルト伯爵邸に戻って寝たよ。


 因みに寝る時もマスク代わりの目出し帽を被って素顔がバレないようにしているよ。

 一応、部屋の中には勝手に入らないようにと部屋付きのメイドには釘を刺しているけれど、伯爵邸の中にだってスパイは居るかも知れないからね。


 うん、その予感は当たっていた。

 草木も眠る丑三つ時なのかな?


 深夜になってこっそりと部屋に忍び込んできた奴がいたよ。

 部屋付きのメイドじゃなくて、男性従者だね。


 実は人の動きや物の移動を感知して警報が鳴る最新のセキュリティ装置を、健司がインベントリに入れてくれているんだ。

 普段は、診療所で使っているんだけれど、予備も持ち歩いている。


 それが早速役に立ち、俺の耳に()めているイヤホンに警報を鳴らしてくれたというわけだ。

 そんなわけで、俺はその侵入に気づいていたけれど、そのまま寝たふりをしていた。


 部屋の明かりはついていないが、例のスタンピードの際に、必要に迫られて暗視のできる能力を身につけていたから、星明りしかない暗闇の中でも男の動きをしっかりと把握できていたんだ。


 男は、手に小さなナイフを持っているようだ。

 果物ナイフよりももっと小さい刃渡りのようだが、仮に殺すつもりでいるなら毒でも()っているのだろうな。


 逆に、殺し以外で深夜にそんな刃物を持ち歩く理由がわからないよな。

 もちろん、刃渡りが小さい武器でも頸動脈あたりを切ることができれば、暗殺は十分可能だとは思うが・・・。


 男が俺の寝ているベッドに近づいて来て、ナイフを振り上げて殺意が膨らんだ瞬間に、俺は一気に跳ね起きてあっという間に男を制圧したよ。

 男は多少の武術を習っていたようではあるが、飽くまで素人の域を出ていない。


 多分、目的の屋敷等に潜入してそこから情報を持ち帰るのが得意な奴なんだろう。

 しかしながら、大元の依頼主は、第一王子が回復したことを二つの手段で知った筈だ。


 一つは王宮の中でのスパイによる情報、もう一つは第一王子に呪いをかけた呪術師が、反呪により死ぬか若しくは重症に陥ったはずであり、そのことで王宮で解呪がなされたことを知ったはずなんだ。

 であれば、当該解呪に宰相が関わっている筈であり、第一王子の寝室で見かけられた不審な仮面の男が何らかの処置をしたものと推測したのであろう。


 となれば、邪魔者は当該仮面の男?

 今後とも第一王子側若しくは宰相側に付いて、彼らの目論見に邪魔になる存在と見て消しにかかったのだろうな。


 一方で、このハンスは、宰相が自分の邸に仮面をつけた男を連れて来た時点で、外の者と何某かの連絡を取り、恐らくは暗殺の指令を受けらのだろうと思うが、この男は少なくともこうした荒事に慣れている人間では無いのだろう。

 膂力(りょりょく)も無いので、ナイフを握っている利き腕を捕まえて、床に投げつけると簡単に制圧できたな。


 無論、刃物で自害などされては背後関係が聞き出せなくなるから、その前にナイフを奪い取ったけれどね。

 当然のことながら男を床に投げつけた際に大きな物音がしたんだろうね。


 間もなく扉の外が騒がしくなった。

 ドアをノックする者が居たので、俺が返事をして中に入るよう言った。


 恐らくは伯爵邸の従者であろう男が二人、それと俺の部屋付きメイドが一人ドアから入って来た。

 俺が男を取り押えているのを見て目を丸くして驚いている。


「ハンス、お前が何故ここにいる?」


 従者の一人は、そう言った。

 ふむ、この忍び込んで襲撃してきた男はどうやらハンスと言うらしいが、密偵でこの屋敷に入り込んでいるならば、ハンスと言う名も偽名の可能性が高いだろうな。


 普通、貴族が人を雇い入れる際には、一応の身元調査をしている筈なんだが、どこかに漏れがあったのかな?

 まぁ、そんなことよりも事後の話をしておかねばならんだろう。


「夜半ではあるけれど、可能であれば伯爵様を呼んではいただけないでしょうかな?

 この男が、こんな時間にこの部屋に無断で侵入し、少なくとも僕を害する意思を持ってそこにある刃物を振りかざしていました。

 多分、その刃先には毒でも塗っている筈ですから、くれぐれも触れないようにして下さいね。

 恐らくこの男は、どこかの回し者だった可能性が非常に高いと思われます。」


 それから屋敷中が大騒ぎになった。

 少なくとも伯爵が連れて来た賓客(ひんきゃく)が家人に襲撃されたのである。


 騒ぎにならないわけがない。

 ハンスと言う男は、すぐに伯爵邸の騎士に囚われて尋問を受けることになったようだ。


 まぁ、拷問を受けても吐かないだろうな。

 誰にでも大事に思っている家族や仲間は居るものだ。


 仮に背後関係を吐けば、きっと自分の大事に思っている人達が害されることを十分に知っている。

 従って、真実を言うぐらいならきっと死を選ぶだろう。


 この男に、背後にいるであろう主に対する忠義は余り感じないけれど、芯の強さを感じるから、大事な人が居ない場合には(しゃべ)るかもしれないが、そもそもこの男を伯爵邸に潜り込ませた者がそうした危険性を無視するとは思えないんだ。

 仮に、この男が吐いたにしても、途中に別な者を()ませておけばトカゲのしっぽ切りで、大元までは辿り着かないことになる。


 まぁ、その辺の動きも盗聴装置と監視カメラで何かわかるんじゃないかと期待しているんだけどね。

 従者に起こされて出て来た伯爵にも襲撃のあらましを説明し、ハンスと言う男の事後処理を頼んだよ。


 さて、折角の睡眠時間を取られてしまったけれど、もう一度ひと眠りしようかね。

 この部屋付きのメイドには、朝食時には起こしてくれと頼んでおいたから、朝食時になればきっと起こしてくれるだろう。


 第一王子の再診は、午後に行くつもりでいる。

 万が一にでも、容態の変化が有れば、きっと宰相のところへも報せが来るだろう。


 その前に、可能であれば、ベイエル公爵達に怪しい動きが無いかどうかを確認し、できればもう一組の監視装置を第一王子の寝室にも設置しておきたいと思っている。

 俺がこう考えていることを知っている健司が、きっと向こうの世界で新たな機材を入手してくれるはずだ。


 ◇◇◇◇


 ひと眠りして、部屋付きのメイドに起こされたが、用心のために目出し帽を被っていたよ。

 この様子は昨日の騒ぎの際に見ているから、彼女にも違和感はなかったみたいだね。



 朝食を食べて、食器を片付けて貰ってからが、俺の一仕事の始まりだ。


 隠形になって、ベイエル公爵、バウマン侯爵、カッスラー伯爵、フリーデル子爵の屋敷に忍び込み、天井裏のタブレットのメモリーを予備と切り替え、データの入ったメモリーだけを抜いておく。

 バッテリーの方は、もう24時間ほどは持ちそうだが、いずれ充電用のモバイルバッテリーが必要になるので、インベントリにあった物を接続しておいた。


 これで丸々二日ほどは大丈夫だろう。

 監視カメラと盗聴マイクの方はトリセツによれば、四日から五日程度は持つはずだ。


 ふむ、カメラと盗聴マイクも充電式だから、今後の為にもモバイルバッテリーがもっと必要になるかもね。

 ついでにソーラーパネルも用意してもらうかな。


 診療所の屋根にでも取り付けてコードを大型バッテリーまで延ばせば、診療所で充電が可能になるよね。

 それとも同じような魔導具を造れることができれば、健司の世界に頼らなくても良いか。


 うん、カルヴィアに戻って暇が有ればじっくりと検討してみよう。

 さて、タブレットから取り出したメモリーのデータは、俺のスマホで確認できるんだ。


 この世界ではスマホなんぞは役には立たんのだが、健司がわざわざ俺のために手に入れてくれた代物だよ。

 寝ている間にインベントリに入れておくと、フルまで充電しておいてくれるからすごく便利だぜ。


 いずれにせよ、盗撮と盗聴のメモリーを早回しで確認してみた。

 結果は、ベイエル公爵とフリーデル子爵は完全に黒だな。


 バウマン侯爵、カッスラー伯爵は、今回は補佐的な役割だったようだから、黒に近いグレイだな。

、昨夜の二人の会見で、ベイエル公爵とフリーデル子爵が人払いをして話をしていたのだった。


 ベイエル公爵は、

『第一王子が持ち直したようだが、毒と呪いは一体どうなっておるのだ?

 あの毒は確か解毒剤が無いと言っていたはずだな?

 それに呪いの方も、この国には解呪できる者は居ないと言っておったではないか。』

と言い。


 フリーデル子爵が、

『いえ、毒の入手については、カッスラー伯爵が国外から入手した秘薬と聞いております、

 その毒の効能については、飽くまで入手先の商人の受け売りかと。

 ただ、実際にスラムの者で試してみて、カッスラー伯爵の領地にある教会でも指折りの治癒師に治癒を試みて貰ったのですが、当該治癒師ではどうにもならなかったそうです。

 また、カッスラー伯爵の領地の周辺では名の知れた薬師に解毒薬を造らせようとしましたが、これもできないということを確認しております。

 何でも、毒を体内に取り込んだ時点で、毒とは判別できないものに変化してしまうようで、毒を打ち消すための指標が見つからないのだとか・・・。

 従って解毒薬はできないものと判断しておりました。

 第一王子が持ち直したのは、エッケルハルト伯爵が第一王子を見舞いに行った直後と聞いております。

 但し、一体何が起きたのかは誰も確認しておりません。

 その場に居合わせたエッケルハルト伯爵が言うには、神の思し召しで第一王子に奇跡が起きたのだとか・・・。

 但し、その場に仮面をつけた不審者がいたそうで、エッケルハルト伯爵の説明では、第一王子のために遠方から来られた聖職者とのことでした。

 この人物がどのようにして第一王子の部屋に出現したかは不明ですが、あるいはこの聖職者が第一王子の治癒と解呪に関わった可能性がございます。

 更に申し上げれば、そのエッケルハルト伯爵が参内していた正にその時間帯に、例の呪術師が急死した旨の連絡を受けております。

 呪術に詳しい魔法師によれば、呪術を解呪された反動で術者に呪いが還ることが有るそうです。

 或いは、エッケルハルト伯爵若しくはその手の者が、解呪を行ったために術師が死んだ可能性もございます。」

と答えた。


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